230 修学旅行3日目です 10
ここは、広葉樹林が広がる山の中腹です。
男子 「ツチノコ? マジか」
女子 「ツチノコだって」
女子 「すごいね」
ツチノコは、全長80cm、全身に茶色と黒のきれいな模様があります。
胴体が幅広く、ずんぐりしたヘビのような生き物です。
私たちは横に広がって、ツチノコを観察します。
男子 「すげえ、本物かよ」
女子 「これがツチノコ・・・」
日本では昭和の時代に、UFO、幽霊、未確認生物などのオカルトブームがありました。
ツチノコもその時に話題になったそうです。
志村 「本物のツチノコですか?」
アンナ「はい、ですがこのツチノコ、実は魔物です」
志村 「魔物?」
アンナ「はい」
志村 「日本でも目撃例があるそうですが、同じ生き物ですか?」
アンナ「わかりません。日本での目撃例は、うその証言だったり、
見間違えの可能性があります。
しかし、地球と異世界の時空が稀に繋がることがあり、
その時、この魔物が日本に転移した可能性も考えられます」
志村 「なるほど」
女子 「ツチノコは魔物だったのね」
男子 「日本にも本物のツチノコがいるかもな」
アンナ「B組も別個体のツチノコを発見したようです。
いま千里眼で確認しました」
志村 「そうですか。今頃B組も大騒ぎになっていますね」
アンナ「はい」
わたしはツチノコに近づき、結界で拘束します。
アンナ「フリーズ」
アンナ「皆さん、近くで見てください」
ローラ「ずんぐりしていて、かわいいわね」
わたしは、アイテムボックスから小さなガラスの小瓶を取り出します。
アンナ「今から毒を採取します」
志村 「毒?」
アンナ「この毒は人が死に至るものではなく、神経を麻痺させるものです。
外科治療に使います」
志村 「麻酔ですか?」
アンナ「そうです」
ツチノコ毒の採取は、冒険者ギルドの依頼です。
わたしは持っていたカメラを結界で固定します。
そしてツチノコの牙に小瓶を押し当て、毒を採取しました。
アンナ「離れてください。拘束を解除します」
皆さん、後ろに下がります。
アンナ「解除」
ツチノコは頭を持ち上げて、Sの字になりました。
女子 「怒ってる」
アンナ「大丈夫です」
ピョーン・・・
男子 「あ、ジャンプした」
ツチノコは3mくらいのジャンプを繰り返して逃げて行きました。
アンナ「ツチノコは魔物です。跳躍能力に優れています」
アンナ「それでは、MTVに戻りましょう」
*
私たちはMTVに戻ってきました。全員揃っています。
アンナ「MTVに乗ってください」
わたしは陽子さんに連絡をします。
アンナ「A組は見学が終わりました。B組はどうですか?」
陽子 「こちらも見学終了です」
全員搭乗したのでタラップを収納します。
アンナ「次の場所に移動します」
MTVはゆっくりと上昇します。B組のMTVも上昇してきました。
アンナ「転移」
* * *
ここは南の島、私たちは海岸の上空に転移しました。
空は快晴、青い空と青い海が目の前に広がっています。
ローラ「きれいなところね」
女子 「うわー、きれい」
わたしは上空を一回だけ旋回飛行して、MTVの高度を下げました。
海岸には小さな湖があります。
女子 「海が近いのに、湖?」
MTVは湖に着水して、水中に潜航しました。
女子 「うわー、なにこれ?」
男子 「すげえ」
志村 「クラゲですか?」
アンナ「はい、そうです」
体長15〜20cm、ベージュ色のクラゲが無数に漂っています。
男子 「CGみたいだな」
女子 「私、待ち受けにしよう」
女子 「私も」
志村 「幻想的ですね」
アンナ「ここは湖底が海と繋がっています。しかし隙間が狭く、
クラゲの外敵が入って来れません。
この湖はクラゲの楽園です」
ローラ「かわいいクラゲね」
女子 「タコみたい。かわいい」
地球に生息しているタコクラゲに似ています。触手が短く、ディフォルメしたタコみたいです。
さっきからスリングの中でマオがモゾモゾしています。クラゲが気になるようです。
わたしは、マオをスリングから出して降ろしました。
早速クラゲを追いかけています。
女子 「マオちゃん、かわいい」
女子 「めっちゃかわいい」
マオは女子に人気がありますね。
女子 「ねえアンナさん、写真撮って」
アンナ「はい」
女子 「私も」
わたしは、数人ずつ写真を撮りました。
カシャ。
水族館みたいですが、よく撮れています。
写真を撮ったあと、私たちはしばらくクラゲを眺めていました。
女子 「なんか癒されるね」
女子 「うん」
志村 「時間が経つのを忘れますね」
アンナ「そろそろ移動しますが、よろしいですか?」
志村 「名残惜しいですが、仕方がないですね」
わたしは陽子さんに連絡をします。
アンナ「陽子さん、次の場所に移動します」
陽子 「はい」
わたしはMTVを浮上させます。そして離水、そのまま上昇しました。
ローラ「マオちゃん、いらっしゃい」
マオ 「ミャー」
ローラはマオをシートの上に乗せました。マオは前足を揃えてお座りしています。
わたしは、カメラを結界で固定して景色を撮影しています。
アンナ「これから向かう場所は、修学旅行最後の観光スポットです」
女子 「次で最後かあ」
女子 「どこに行くのかな」
MTVは更に上昇します。
男子 「うわー、すげえ高い」
男子 「なんか暗くなってきた」
女子 「上見て」
女子 「星? 夜になったの?」
アンナ「いいえ」
アンナ「ここは、宇宙です」