228 修学旅行3日目です 8
ここは、密林に囲まれた湖の岸辺です。
スピノサウルスとティラノサウルスが戦っています。縄張り争いかもしれません。
いま互いに睨み合っています。
ティラ「グルル・・・」
スピノ「ガァー・・・」
実況 「スピノが一歩下がった。
ティラノは・・・一歩下がった?」
実況 「ティラノが離れていきます」
実況 「振り返りました」
解説 「命拾いしたな・・・お前がな・・・
そう言っているようですね」
実況 「ティラノは密林に向かっています」
実況 「ドロー。決着つかず、引き分けです。
ティラノサウルス、密林に姿を消しました。
そしてスピノサウルスも水中に姿を消しました」
実況 「引き分けに終わりましたが、
戦いを振り返ってみてどうですか?」
解説 「決着はつきませんでしたが、迫力ありましたね。
力押しだけでなく、頭脳戦もよかったです」
実況 「はい。王者決定とはいきませんでしたが、名勝負でした。
ご覧の皆さんも、いい思い出になった思います」
実況 「本日の恐竜対決は終了です。
それでは皆さん、また来週」
男子 「来週もあるのかよ」
女子 「 ww バカ ww 」
ローラ「面白かったわ」
実況と解説が面白すぎです。
女子 「すごかったね」
女子 「うん、よかった」
男子 「すげえ動画が撮れた」
男子 「俺も。これ人に見せたら実写だって信じるかな」
男子 「信じないかもな」
当然わたしも動画を撮影しました。
恐竜はどちらも大きな怪我はしていません。よかったです。
志村 「大迫力のすごい戦いでした。
生徒たちのいい思い出になりますね」
アンナ「はい」
アンナ「それでは次の場所に移動します」
わたしはMTVを上昇させました。
アンナ「転移」
* * *
私たちは草原の上空に転移しました。
MTVの中は恐竜対決の件でざわざわしています。
アンナ「下をご覧ください」
女子 「また恐竜?」
わたしはMTVの高度を下げました。
アンナ「ティラノサウルスです」
男子 「さっきのティラノサウルスと違う」
男子 「羽毛がある」
志村 「どういうことですか?」
アンナ「なぜ羽毛があるのか、わかりません。生息環境なのか、
突然変異なのか、魔素の影響なのか。原因は不明です。
異世界には羽毛有りと羽毛無し、二種類のティラノサウルスがいます」
ティラノサウルスは全長11m、全身がこげ茶色の羽毛で覆われています。
志村 「地球に生息していたのは、どちらですか?」
アンナ「今のところ、わたしにもわかりません」
志村 「そうですか」
アンナ「地球で新たに発見される化石次第だと思います」
男子 「すげえな」
男子 「羽毛があるって、なんか変じゃね」
男子 「うん、ダサい」
男子 「そうか、これはこれでありだろ」
女子 「私は嫌いじゃない」
女子 「もふもふ恐竜」
賛否両論ですね。
いま羽毛ティラノサウルスは草原の中を歩いています。
女子 「なんか大きな鳥みたいだね」
女子 「着ぐるみっぽい」
女子 「 ww たしかに」
女子 「かわいいかも」
湖が見えてきました。前回の恐竜ツアーで来たところです。
ローラ「きれいな湖ね」
水辺にいた動物は恐竜の気配に気付き逃げていきます。
しかし鳥の群れが残っています。
ティラノサウルスは捕食するため、鳥に向かいますが逃げられました。
女子 「残念」
女子 「鳥は簡単に捕まらないよね」
ティラ「グルル・・・」
ティラノサウルスは湖を見つめています。
目線の先にある離れた対岸には、別の恐竜がいます。
アンナ「湖の対岸に恐竜がいます。そちらに向かいます」
MTVは、その恐竜に向かって湖の上空を飛行します。
岸辺に近づきました。
アンナ「あそこに恐竜がいますが、皆さんわかりますか?」
男子 「どこ?」
女子 「どこにいるの?」
男子 「わかった、あれか」
女子 「私にも見える」
男子 「ニュータイプかよ。俺には見えねえぞ」
わたしはその恐竜に接近しました。
生徒 「わかった」
ほとんどの生徒がわかったようです。
アンナ「この恐竜は、ヨシダサウルスと言います」
男子 「よしだ?」
アンナ「はい、ツアー客の吉田さんが発見した新種の恐竜です」
男子 「だからヨシダサウルス・・・」
ヨシダサウルスは全長15m、頭の高さは6mです。
全身が緑と茶色の斑模様で、迷彩服のようです。
鼻の上に大きな角があり、上あごから二本の牙が突き出しています。
そして後頭部から尻尾の先までギザギザの突起があります。
二足歩行の恐竜ですが、発達した前肢は腕のようです。
ローラ「かっこいいわ」
男子 「すげえ」
男子 「なんだよこれ、怪獣かよ」
女子 「すごいね」
女子 「イケメンすぎる」
志村 「地球にも生息していた恐竜ですか?」
アンナ「わかりません。地球に生息していた可能性はありますが、
化石は発見されていないと思います。
異世界独自の恐竜かもしれません」
志村 「そうですか。それにしてもすごい恐竜ですね」
男子 「異世界の恐竜、ヤバすぎだろ」
男子 「地球でも化石発見されるといいな」
男子 「こんなヤバいやつ、地球にいない気がする」
男子 「そうかもな」
MTVには光学迷彩をかけてありますが、こちらを見ています。位置がわかるのでしょうか。
ヨシダ「グォー・・・・・・」
男子 「すげえ迫力」
男子 「貫禄あるな」
男子 「恐竜対決したら、王者確定だろ」
男子 「ああ、間違いない」
アンナ「そろそろ飛行島に戻ります」
男子 「あと1分だけ」
アンナ「わかりました」
あと1分間観察して戻ることにしました。
*
アンナ「それでは戻ります」
わたしはMTVを上昇させました。
女子 「バイバーイ」
アンナ「転移」
私たちは飛行島に戻ります。