227 修学旅行3日目です 7
ここは、密林の中にある大きな湖の上空です。
MTVには光学迷彩をかけたままです。
私たちは沼でダチョウ恐竜オルニトミムスを見学したあと、ここに転移してきました。
澄んだ湖面には大きな恐竜がいます。
わたしは水面近くまで高度を下げました。
女子 「なにあれ?」
アンナ「スピノサウルス、史上最大級の肉食恐竜です」
男子 「でけえ」
スピノサウルスは全長15m、全身がこげ茶色です。湖面から茶褐色の帆を出して泳いでいます。
男子 「すげえ」
男子 「かっこいい」
上から観察したあと、今度は水中からも観察をします。
わたしはMTVをゆっくりと着水させました。そして水面近くを潜航します。
水は濁りがなく澄んでいます。観察に支障はありません。
男子 「おおお・・・」
男子 「大迫力」
志村 「すごいとしか言いようがない」
女子 「ワニみたい」
女子 「尻尾が大きいね」
スピノサウルスの前に魚が泳いでいます。大きさは1m近くあります。
恐竜は魚の後ろから近づき、魚が泳ぐ向きを変えた瞬間・・・
ガブッ。
恐竜は水面から頭を出して・・・
ガブッ、ガブッ、パクッ。
魚を頭から丸呑みにしました。
男子 「おおお・・・」
男子 「すげえ」
恐竜は再び泳ぎ出します。
少しずつ湖底が浅くなってきました。岸辺に近づいています。上陸するかもしれません。
わたしはMTVを浮上、離水させました。そして陸地の方へ移動します。
ザザー・・・
男子 「怪獣が東京湾に上陸しました」
確かにそんな感じです。
男子 「おおお・・・」
恐竜は陸地を四足歩行しています。
アンナ「皆さん、歩き方に注目してください。
ワニやトカゲとは違いがあります」
男子 「言われてみれば・・・」
アンナ「通常、爬虫類は脚が横に張り出しているので、
歩き方はガニ股になります」
アンナ「しかし恐竜は脚が地面に対して垂直なので、
歩き方は哺乳類に近いです」
男子 「本当だ」
志村 「何か違和感がありましたが、歩行の違いですか。
なるほど」
スピノサウルスが立ち止まりました。
あっ、密林の中に大きな反応があります。この反応は・・・
もうすぐ見えてきます。
密林から恐竜が出て来ました。
アンナ「ティラノサウルスです」
ティラ「グォー・・・」
スピノ「ガァー・・・」
ローラ「面白いことになってきたわ」
スピノサウルスとティラノサウルスの鉢合わせ、都合が良過ぎます。縄張り争いでしょうか。
ローラが何かしたのかもしれませんが、詮索はやめておきましょう。
男子 「マジか、すげえ」
男子 「まさか、バトル?」
男子 「やばいよ、やばいよ」
ティラノサウルスは全長が13m、羽毛はなく全身がうす茶色です。以前に見た個体ではありません。
スピノサウルスに近づいてきます。
男子 「おっと、ティラノサウルスの登場だー。
これはバトルか、バトルになるのか。
両者睨み合っている」
一人の男子が実況を始めました。
ティラ「グォー・・・」
スピノ「ガァー・・・」
実況 「おっと、スピノサウルスが後ろ足で立ち上がった。
自分の大きさをアピール、威嚇しているぞ」
男子 「おおお・・・」
実況 「ティラノが襲いかかった。
スピノサウルス対ティラノサウルス、バトル開始。
異世界恐竜最強対決、勝者が恐竜王者に決定だー」
実況 「互いに激しい噛み付き攻撃を展開している。
この両者の戦いをどう見ますか?」
解説 「ティラノサウルスは思った以上に俊敏ですね。
一方スピノサウルスは体格が大きく、前足を使って
戦うことができます。いい勝負になると思いますよ」
別の男子が解説を始めました。
実況 「互いにまだ決定打がありません」
ティラ「グォー・・・」
スピノ「ガァー・・・」
実況 「両者睨み合っています」
女子 「どうなっちゃうの?」
実況 「これからどのような戦いが展開するのか、
神のみぞ知ると言ったところでしょうか」
神様は、ここにいますけど。
実況 「ティラノがさっきとは違う動きをしています。
なにかをするつもりでしょうか」
実況 「ティラノが回り込んだ」
解説 「いい攻撃です。スピノは小回りがきかないので
ティラノは横から攻めるつもりです」
バシッ。
実況 「スピノの尻尾攻撃がティラノの足にクリーンヒット」
男子 「おおお・・・」
解説 「すきがあると思わせて誘い込み、カウンター攻撃、
スピノ考えていますね」
実況 「ティラノは攻撃を受けてよろけましたが、
踏みとどまりました」
ティラ「グォー・・・」
解説 「ティラノ怒っていますよ」
実況 「ティラノサウルスが襲いかかる。
激しい噛み付き攻撃」
解説 「しかしスピノは攻撃を躱しています」
実況 「スピノが少しずつ後ろに下がっている。
ティラノが圧しているぞ」
女子 「ああ・・・ああ・・・」
解説 「ちょっと待ってください。
スピノは圧されているのではなく、
水辺に誘い込むつもりかもしれませんよ」
実況 「スピノは後退しているが、これは作戦なのか。
スピノどうなる」
実況 「ティラノの動きが止まった。
しかしスピノは後退を続けている」
解説 「ティラノが気付いたようですね。
このまま進むのは危険だと」
ティラ「グルル・・・」
スピノ「ガァー・・・」
実況 「双方動きが止まった」
実況 「間合いを取り、互いに睨み合っています」