203 修学旅行初日です 11
ここはサンローラの街です。
私たちA組は市場に着きました。
アンナ「ここが中央広場の市場です。ここでは食料品や日用品などを
売っています。品揃えは日本と少し違っています。
買い物をしても構いませんが、生鮮品を日本に持ち帰ることは
出来ません。ご注意ください」
私たちは市場を見て回ります。
朝市ほどは混雑していないので、ひとクラス全員ですが行動に支障はありません。
この時期は、まだ夏野菜が売っていますが、秋野菜も出回り始めています。
カボチャ、里芋、トウガン、キノコなど。
果物は、ブドウ、梨、ザクロ、イチジクなどが売られています。
女子 「これ、何なの?」
日本では、あまり見かけない野菜です。
鑑定結果は、ほおずきです。糖度は13度あります。
アンナ「食用ほおずきです。日本でも、少ないですが流通していますよ」
女子 「そうなの? 知らなかった」
アンナ「皆さん、食べたいですか?」
女子 「食べたい」
男子 「俺も」
わたしはアイテムボックスからバスケットを取り出して、ほおずきを買いました。
アンナ「皆さん、食べてください」
外皮を破ると実が現れます。黄色いプチトマトみたいです。
ぱくっ。
女子 「あまーい」
女子 「美味しいね」
女子 「うん」
わたしも食べます。
味は南国の果物に似ています。甘くて美味しいです。
*
隣の店でも、珍しい果物が売っています。
男子 「なにこれ?」
わたしも見るのは初めてです。
鑑定結果は、リンゴです。糖度は14度あります。
形はリンゴですが、皮の色がオレンジ色なので大きな柿みたいです。
アンナ「異世界独自のリンゴです。食べてみましょう」
わたしはリンゴを10個買って、おカネを支払いました。
6個は収納して、4個のリンゴは皮と芯を転移魔法で除去して8等分しました。
果肉もオレンジ色なので、本当に柿みたいです。
アンナ「皆さん、食べてください」
ぱくっ。
女子 「うん。美味しい」
男子 「見た目が柿みたいだけど、リンゴの味」
わたしも食べました。
甘味と酸味のバランスが取れた、やや果肉が柔らかいリンゴです。
味はジョナゴールドに近いです。美味しいです。
*
市場の見学が終わり、私たちは歩いて冒険者ギルドに向かいます。
冒険者ギルドに到着すると、武器を携帯した冒険者が出入りしています。
男子が目をキラキラさせています。
わたしはギルドカードを首から下げました。
人数が多いので、まずは半数がギルドホールに入ります。
アンナ「すみません。見学させてください」
職員 「どうぞ」
私たちは許可をもらって見学します。
アンナ「ここは冒険者ギルドです。日本で言えば人材派遣会社または
職業安定所みたいなところです」
わたしは依頼掲示板を案内します。
アンナ「これが掲示板です。冒険者はこれを見て自分に合った依頼を
選びます。そしてこれを見ると街の状況がよくわかります」
掲示板を見て多いのが、大工などの職人、宿や食堂などの求人募集です。
アンナ「最近この街は人が増えているので、どこも人手不足です」
男子 「魔物討伐が多いと思ってた」
アンナ「それは、アニメやラノベの話です。これが異世界の現実です」
男子 「そうなんだ」
アンナ「この世界の冒険者は、魔法が使える人が少ないです。
そのため魔物討伐は命がけです」
アンナ「わたしは異世界ツアーガイド以外に冒険者活動もしています。
この街や周辺の村に出没する魔物や動物は、わたしが討伐したり
別の場所に魔法で転移させて追い払っています」
男子 「そんなこともやってるのか」
アンナ「はい」
わたしは冒険者ギルドについて追加の説明をしました。
そして生徒を入れ替えて、残り半数の生徒にも同様の説明をしました。
*
私たちはホールを出て、ギルドの裏側にきました。
アンナ「ここも冒険者ギルドです。ここでは冒険者が持ち込む大きな物品
の買取や素材の販売をしています。
そのため、馬車や荷車の荷捌場も兼ねています」
アンナ「また、ここからは見えませんが、動物の解体所や倉庫もあります」
男子 「なるほど」
*
私たちは冒険者ギルドの見学を終えました。
次は商業ギルドに向かいます。
私たちは商業ギルドに到着しましたが、以前と少し様子が違います。
ギルドの待合所が増築されて広くなり、行列が短くなりました。
商人たちは、番号札を受け取り、順番を待つ間に他の商人と情報交換をしたり、商談をすることが可能になりました。
この仕組みは待ち時間を有効に活用できるので、商人たちに好評のようです。
わたしは商業ギルドの会員証を首から下げます。
そして半数の生徒と共に商業ギルドのホールに入りました。
アンナ「すみません。見学をさせてください」
職員 「はい、どうぞ」
女子 「人が多いね」
待合所にいる商人は私たちのことを気にしていますが、それでも商人同士の話し合いを優先させています。
女子 「あれ? あの人が持っているのって、そろばん?」
アンナ「はい、そうです。わたしが利用している宿の女の子に教えた
ところ、他でも普及してしましました」
アンナ「今ではギルドがそろばんの講習会を開いています。
商人の間では、そろばんの腕前がステータスに
なっているそうです」
女子 「そうなんだ」
わたしは生徒達に商業ギルドの説明をします。
アンナ「ここは商業ギルドです。主に卸業者が来るところです。
日本で言えば、卸売市場と商工会を合わせたようなところです。
商品の売り買い、情報収集、技術特許と料理レシピの登録販売、
融資などを行っています」
アンナ「この世界では、オンラインの送金は出来ません。
また、現金輸送はリスクが高いのでほとんど行いません。
そのため、特許使用やレシピ購入は登録されたギルドに出向く
必要があります」
女子 「大変そうね」
男子 「でも登録が多いギルドや街は、儲かるってことだよね」
アンナ「はい、そう言うことです」
女子 「なるほどね」
*
わたしは生徒たちを入れ替えて同様に説明しました。
ギルドの業務を説明したあと、私たちはホールから出ました。
アンナ「次は商品の取引現場を見ていただきます」
私たちは商業ギルドの裏側に向かいました。




