197 修学旅行初日です 5
ここは飛行島のファームです。
私たちは、熱帯ファームにいます。
バナナの収穫を見学したあと、別の場所に転移してきました。
アンナ「皆さんは、あれをご存知ですか?」
女子 「あれってカカオ?」
アンナ「はい。そうです」
わたしは30cmくらいの熟した実を二つ、木から採りました。
アイテムボックスから小さなテーブルを出してカカオをのせます。
二つのカカオは、魔法で皮をたてに切りました。
女子 「中って、こうなってるんだ」
女子 「初めて見た」
何人かの生徒はスマホで写真を撮っています。
わたしは結界でバケツを作りました。
アンナ「皆さん、スプーンですくって食べてください。
種はバケツに入れてください。」
ぱくっ。
女子 「あまーい」
女子 「美味しいね」
女子 「チョコとは全然味が違う」
カカオの果肉は、ライチに似た甘酸っぱい味がします。
アンナ「ちなみに今バケツに入れた種がチョコレートの原材料です。
カカオ豆と呼ばれていますが、豆科の植物ではありません」
志村 「いい体験ができた」
食べ終わったので、テーブルなどを収納しました。
*
そのあと、サトウキビや香辛料などを見学して、中央の集積所に戻ってきました。
アンナ「それでは、別のファームに移動します。
次は青い魔法陣に入ってください」
わたしは青い魔法陣に入りました。
*
転移先は亜寒帯ファームです。
生徒が次々と転移してきます。最後に志村先生が転移してきました。
全員揃っています。
女子 「涼しい」
アンナ「ここは亜寒帯ファームです。日本の北海道に気候が似ています。
ここでは、ジャガイモ、大豆、リンゴ、トウモロコシ、
乳製品などを作っています」
アンナ「まずは、皆さんに食べてほしい作物があるので、
その場所に転移します」
アンナ「転移」
*
転移しました。
アンナ「この作物が何か、わかりますよね」
男子 「トウモロコシ」
アンナ「はい。そうです。普通は茹でて食べると思いますが、
今回は生で食べていただきます」
女子 「トウモロコシって、生で食べられるの?」
アンナ「はい。美味しいですよ」
わたしは空き地にテーブルと大皿を一枚出しました。
アンナ「8本採ります。どなたか収穫を手伝ってください」
わたしは、鑑定魔法で食べごろのものを探し、収穫してもらいました。
8本のトウモロコシはテーブルの上に置き、転移魔法で皮とヒゲを除去して大皿にのせました。
そして魔法で、たてに4等分にします。
アンナ「食べてください」
生のトウモロコシを食べるのは、皆さん初めてだと思います。
女子 「あまーい」
男子 「なにこれ」
男子 「うまい」
女子 「果物みたい」
志村 「トウモロコシは生で食べると青臭いと思っていたけど、
これは美味しい」
アンナ「生で美味しく食べるには条件があります。まず糖度が高いこと。
次に完熟前であること。そして、もぎたてのものに限ります」
アンナ「食べ終わった芯は捨てずにアイテムボックスに入れてください。
あとで使い道があります」
*
そのあと私たちは、他の畑やリンゴ園、乳製品の加工を見学しました。
いま牛の放牧地にいます。
アンナ「あの牛はオーロックスと言います。地球では数百年前に絶滅した牛です。
ラスコー洞窟に描かれている牛と同じです」
男子 「そうなんだ」
志村 「絶滅した動物を見学するのは、地球では出来ない体験だ」
珍しい牛とわかり、皆さんは写真を撮っています。
わたしも写真を撮りました。
そのあと私たちは、放牧地を少し歩いて畜舎の近くに来ました。
そしてテーブルとイスをアイテムボックスから出します。
アンナ「休憩にしましょう」
生徒達はイスに座り、アイテムボックスから飲み物を出しました。
わたしは、スリングからマオを出して芝生に降ろしました。
マオは前足を突き出して、伸びをしています。
畜舎ではゴーレムが扉を開き、中から羊が出て来ました。
女子 「なにあれ、かわいい」
男子 「なんだあの羊」
女子 「小さいのもいる。かわいい」
生徒達はイスから立ち上がり、羊に近づきました。
女子 「もふもふしてる」
女子 「異世界の羊かわいいね」
アンナ「この羊は地球にもいます。スイスの固有種シュバルツナーゼと同じです」
男子 「地球にもいるんだ」
女子 「この羊、顔どうなってるの?」
アンナ「トウモロコシの芯をあげてください。食べますよ」
皆さん、トウモロコシの芯を出しました。
羊は、それを食べています。
男子 「そこが口か」
女子 「かわいい」
トウモロコシの芯はすぐになくなったので、わたしはアイテムボックスから牧草を出しました。
アンナ「この牧草をあげてください」
皆さん、牧草をあげたり、スマホで撮影をしています。
わたしもカメラで撮影します。
女子 「ずっと見てられる」
さすがにそう言うわけにはいきません。
しばらくすると・・・
ポロロ、ポロロ、ポロロ・・・
陽子さんからの電話です。
陽子 「B組は魔法射撃が終わりました」
アンナ「A組は羊のところにいます。A組が戻るまで休憩していてください」
陽子 「わかりました」
通話終了です。
アンナ「あと5分で飛行島に戻ります」
女子 「えー、あと5分か」
*
わたしはマオをスリングに入れて、たすき掛けにします。
5分が経過したので、私たちは中央の集積所に転移して、そこから白い魔法陣に入りました。
飛行島に戻ります。




