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192 王都 4(別視点)

* 別視点 ポール side *


 夕刻になった。


 私と妻のクレアは晩餐会の会場前にいる。

 子供は晩餐会に入れないので娘のリリーは屋敷に帰らせた。

 宮廷料理より、街の料理の方が美味しいと言ったら、納得して帰ってくれた。


 私と妻は職員の案内で席に着いた。私たちは職員からテーブルマナーの説明を受けた。

 宮廷料理のテーブルマナーは、基本的に手で食べる。スプーンを使うのはスープだけだ。

 今回はアンナスプーンが用意されているので、それを使ってもいいし、手で食べてもいいそうだ。

 そのため、フィンガーボウルとナプキンも用意されている。


     *


 まずは、銅製のカップにワインが注がれた。だが、まだ飲んではいけない。

 全員のカップにワインが注がれた。


職員「国王陛下、お(きさき)様、ご入場」


 私たち貴族は起立する。そして右手を胸に当て、(こうべ)を垂れる。


国王「座ってくれ」


 貴族が着席した。


国王「今宵の晩餐は、新しい直轄領サンローラを知ってもらうために(もよお)した。

   レシピはサンローラに登録してあり、特産品も使っている。斬新な料理ばかりだ。

   歓談しながら味わってほしい」


 陛下がワインカップを手にした。

 そして貴族もワインカップを手にする。


国王「サンローラとタマイサ王国の発展を願い、乾杯」

貴族「乾杯」


 ワインを飲む。高級なワインだ。うまい。

 乾杯のあとは、料理が運ばれてくる。


 最初の料理はピザだ。

 チーズは少量出回っているが、好んで食べる人は少ない。

 調理法が斬新、しかもうまい、そう驚いている貴族が多い。


     *


 次はミネストローネとパンが運ばれてきた。

 野菜のスープは珍しくないが、ブイヨンを使ったコクのあるスープだ。パスタも入っている。

 パスタは、今までにない新しい食材だ。スープなのに食べ(ごた)えがある。

 パンはバゲット、ソバ粉のパン、ライ麦を使ったパンの三種類。保存性を考慮した固いパンではない。

 スープにつけなくても食べられる美味しいパンだ。 


     *


 次はオムレツ。中に刻んだ野菜とベーコンが入っていて、デミグラスソースがかかっている。

 高級食材の卵、手の込んだ美味しいソース、貴族達が驚いている。


     *


 次はコトレッタ。牛肉に衣をつけて、揚げ焼きにしたものだ。

 食べやすいように切ってあり、トマトソースがかかっている。衣はサックリ、肉は柔らかい。


     *


 次はパスタ、ジェノベーゼ。香草でソースを作りパスタに(から)めて食べる。

 パスタは様々な調理法があり、乾燥させれば保存ができる。今後、注目の食材になるだろう。


     *


 次はスコッチエッグ。輪切りにしてある。二品目の卵料理だ。

 卵を包んでいる挽肉はくず肉とも呼ばれ、貴族が食べることはない。

 しかし斬新で、うまい料理だ。挽肉に対する認識が変わることだろう。


     *


 次はカレーライス。鼻をくすぐる香辛料の香りが食欲をそそられる。

 今回初めて米を見た貴族が多いだろう。

 カレーはパンと一緒に食べても美味しいが、米との相性がとても良い。

 今後、米を使った料理は注目されるに違いない。


     *


 次はデザートのアイスクリーム。器の盛られて、焼き菓子が添えられている。

 王都にもアイスキャンディーがある。しかし牛乳を使った冷たい菓子はない。

 多くの貴族が驚いている。私も街で最初に食べたときは衝撃だった。


     *


 最後に出て来たのは、カフェオレとチョコレート。

 通常、料理の最後に出す飲み物は紅茶である。王都ではコーヒーがまだ普及していない。

 チョコレートは幻の菓子と呼ばれている。王都では入手困難である。

 カフェオレとチョコレート、どちらも初めて口にする貴族が多いはずだ。


     *


 今回の料理は、今までにない革新的なものばかりだ。

 貴族はもちろん、陛下とお妃様も満足した表情をしておられた。


     *


職員「「国王陛下、お妃様、ご退場」


 私たち貴族は起立、右手を胸に当て、(こうべ)を垂れる。


 こうして晩餐会は終了した。



*    *    *    *    *



* 別視点 マギー side *


 私は王都に到着したその日に国王様に拝謁した。

 そろばんなどの説明が終わり、肩の荷が下りてほっとした。


 私には翌日からは別の仕事がある。それは、そろばんの指導を数日間行うこと。

 午前中は王城、午後はギルドでそろばんの使い方を指導する。

 私は、あらかじめ説明書を用意しておいた。

 足し算引き算はすぐに理解してもらえたが、大変だったのはかけ算と割り算。

 これは九九(くく)を理解していないと出来ない。

 やはり九九の早見表を用意しておいてよかった。

 教えるのは数日あれば充分。あとは練習あるのみ。

 そろばんを習得すれば、計算業務が大幅に改善するので、皆さんのやる気がすごい。


     *


 私の仕事は、そろばんの指導以外にもう一つある。それは王城で作る料理の味見と助言。

 午前中に王城でそろばんを教えたあと、厨房で料理の助言をする。

 私は調理をせず、味見をするだけ。完成した料理が次々運ばれてくる。

 少量ずつだけど品数が多いのでお腹いっぱいになる。

 しかもデザートの味見もしなければならない。太りそうで怖い。

 でも美味しい。どれも街で食べる料理と同じ味。さすが、王城の料理人ね。


     *


 晩餐会の翌日、朝食のときにお代官様から二つのことを告げられた。

 一つは街の名前がサンローラになったこと。素敵な名前ね。

 もう一つは、お代官様が叙爵して子爵になったこと。

 男爵を飛び越えて、子爵に任命されることは滅多にないらしい。

 おめでとうございます。

 しかし、叙爵の功績はすべてアンナさんによるものだとおっしゃっていた。

 お代官様は嬉しいと言うより、戸惑っている感じでした。


     *


 そして翌日、私たちはサンローラの街に帰ることになりました。

 数日でしたが、王都での生活はとても有意義でした。

 

 私たちは馬車に乗りました。


ポール「サンローラに向けて、出立」




 私たちは馬車でサンローラの街に帰ります。

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