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190 王都 2(別視点)

* 別視点 マギー side *


 いま私は、王城内の広間にいます。

 国王様が献上品をご覧になっています。


国王 「これがそろばん・・・ビル」

宰相 「はい」


 パン、パン。


 宰相様が手を2回鳴らしました。

 すると、数人の職員が入ってきて机とイスを設置します。そして机の上にはペンとインクが置かれました。

 それが終わると一人を残して職員は退室しました。


宰相 「マギー、座ってくれ」

マギー「はい」


 私はイスに座ります。


宰相 「彼は城の会計主任だ。そろばんの検分をする」

マギー「わかりました」


主任 「まずはこの問題からです。上から下までの数を全て足して、

    答えを書いてください」

マギー「はい」


 四人が周囲で見ています。ちょっと緊張します。


 私は、そろばんで計算を始めました。

 2ケタの数を10個足すだけです。すぐに終わります。

 私は計算を終えて答えを書きました。


宰相 「主任、どうだ?」


 会計主任はメモと私の答えを見比べています。


主任 「正解です。しかも計算速度が早いです」

宰相 「次は、もう少し難しい計算を」

主任 「はい」


 次の計算問題は4ケタの数を10個足すものです。

 私は計算を終えて答えを書きました。


主任 「計算が早いです。答えも合っています」

国王 「ビルは計算が得意だが、あの早さで計算出来るか?」

宰相 「いいえ出来ません。驚異的な早さです」

国王 「やはりそうか」


宰相 「次はもっと難しい計算を」

主任 「はい」


 渡された用紙には、6ケタの数が10個あり、足し算と引き算が混じった問題です。

 私はすぐに計算が終わり答えを書きました。


主任 「答えは合っています。計算は驚異的な早さです」


国王 「ポール、お前も計算は得意だが、どうだ?」

ポール「これを見たあとでは、計算が得意とは言えなくなりました」

国王 「ハッハッハ・・・やはりそうか」


宰相 「次は掛け算と割り算をやってくれ」

主任 「はい」


 渡された問題用紙は、掛け算5問と割り算5問です。

 私は計算を始めました。

 そして10問の計算が終わりました。


主任 「全問正解です」

宰相 「今の問題、主任が計算したら、どれくらいの時間がかかるか?」

主任 「1時間はかかると思います」

国王 「今のは、5分もかかっていないぞ」

主任 「はい。そろばんの発明、彼女の計算能力、これは賞賛に値します」

国王 「そうか、よくわかった・・・ビル、会計局にそろばんを導入してくれ」

宰相 「承知しました」


宰相 「マギー、明日から数日間、会計局でそろばんを教えてほしい。

    頼めるか? もちろんカネは支払う」

マギー「はい。午前中でよければ大丈夫です」

宰相 「そうしてくれ」

マギー「かしこまりました」


国王 「ポール、話がある」

ポール「はい」

宰相 「マギー、ご苦労。明日からよろしく頼む」

マギー「はい」


 私以外の人は退室しました。

 私も職員案内で外に出て、馬車で公爵邸に帰ります。ちょっと疲れました。



*    *    *



* 別視点 ポール side *


 いま私は、陛下、宰相と一緒に国王の執務室にいる。


国王 「ワシは報告書に目を通す。ビル、話してやれ」

宰相 「はい」


宰相 「まずは、街の名前が正式に決まりました。サンローラです。

    すでに各貴族には通達済みです」

ポール「はい、わかりました」


宰相 「それから、ポール殿の叙爵(じょしゃく)が決まりました。子爵です」

ポール「子爵ですか・・・叙爵の理由は?」

宰相 「献上品の数々、街の発展、スラムの解消、開拓村、砂糖、キララ、その他諸々です」

ポール「しかし、それらはアンナの功績だと思いますが」

宰相 「それでも、代官の功績になります。

    それに、代官を貴族にすることによって他の貴族を牽制する意味もあります」

ポール「はい」

宰相 「それと、廃爵になった貴族の親戚筋が何か仕掛けてくるかもしれません」

ポール「わかりました。ありがたく叙爵をお受けいたします」

宰相 「叙爵の儀は、3日後に()り行う予定です。

    そのあとサンローラ特産品の披露、そして晩餐会を行います。

    この件も各貴族に通達済みです」

ポール「わかりました」

国王 「そう言うことだ。過分だと思うのであれば、

    これから爵位に見合う働きをすればよい」

ポール「はい」


国王 「報告書は、いま読ませてもらった。

    ワウラのやつは、ワシに何も報告してこなかった。

    それとも、何も把握していなかったのか。

    どちらにしても、ワウラ領が王家の直轄領になったのは重畳(ちょうじょう)だ。

    ポール子爵、サンローラ領はお前に任せる」

ポール「はい。承知しました・・・ただ、領を運営する上で、文官が足りません。

    何人か連れて行きたいのですが?」

国王 「好きなだけ連れて行け。人選は任せる」

ポール「ありがとうございます」


国王 「ところで、アンナにはまだ会えそうにないか?」

ポール「はい。目処(めど)が立っておりません」

国王 「(あせ)ることはない。気長(きなが)に機会を待て」

ポール「かしこまりました」

国王 「くれぐれも不敬にならぬよう、気を付けてくれ。

    神罰で国が滅びるのは避けたい」

ポール「心得ております」


     *


 陛下との会談は終了した。


 私は屋敷に向かう馬車の中で考えていた。

 本来、爵位を授かるのはアンナであるべきだ。私ではない。心苦しい。

 しかし、アンナはカネに執着しない人物だ。爵位にも興味はあるまい。

 考えても仕方がないな。

 一度アンナに会って話がしてみたいものだ。


 今日は王都に到着して早々陛下に呼び出され、少し疲れた。




 叙爵の儀は3日後、それまではのんびりしよう。

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