187 下見です 7
ここは、ヨーロッパアルプスに似た山脈の上空です。
加藤 「きれい」
志村 「雄大な景色ですね」
二人は山の撮影をしています。
もうすぐ夕方です。あまり時間がありません。
アンナ「日が暮れるので、急ぎます」
* * *
そのあと私たちは、塩湖、滝、湖などを手短かに見学しました。
いま夕陽の中をレッドドラゴンと一緒に飛行しています。
アンナ「飛行島に戻ります・・・転移」
* * *
かすかに見える夕陽の中に飛行島のシルエットが浮かんでいます。
わたしはコテージの前にMTVを着地させました。
アンナ「お疲れ様でした」
私たちはMTVを降りてコテージに入りました。
わたしは二人をダイニングに案内します。
アンナ「座って待っていてください。夕食にします」
志村 「はい」
加藤 「お腹すきました」
わたしはダイニングの端にペットサークルを出しました。
アンナ「陽子さん、マオを入れてください」
陽子 「はい」
ペットサークルに入ったマオは伸びをしました。かわいいです。
わたしはキャットフードとお水を用意しました。
マオはすぐに食べ始めました。
今度は私たちの夕食を用意します。
わたしは二人がいるテーブルに料理を出します。
夕食はドイツ料理です。
シュバイネブラーテン、ツヴィーベルズッペ、カルトッフェルザラート、ミッシュブロート、クワルクトルテです。
テーブルの中央に、ヴルスト(ソーセージ)、シンケン(ハム)、チーズの盛り合わせを置きました。
ヴルストとシンケンは、ニックさんが作ったものです。
シュバイネブラーテン
ドイツのローストポークです。
まず鍋にコンソメと香味野菜を入れて豚ロースを煮込みます。
煮汁が減ってきたら鍋ごとオーブンに入れてやきます。
肉に火が通ったら、鍋に残った肉汁とスープでソースを作り、切った肉にかけます。
付け合わせはザワークラウトです。
ツヴィーベルズッペ
ドイツのオニオンスープです。
刻んだ玉ネギを飴色になるまで炒めて、ブイヨンを加えます。調味料と香辛料で味を整えたら完成です。
カルトッフェルザラート
ドイツのポテトサラダです。
ポテトサラダはドイツが発祥だそうです。今回はマヨネーズを使わないレシピです。
まずブイヨンとマスタード、お酢などを加えてコンソメを作ります。
次に茹でたジャガイモの皮をむき、適当な大きさに切ります。それを器に入れ、上からコンソメをかけます。
飴色玉ネギとカリカリベーコン、パセリを振りかけて完成です。
冷やしても美味しいですが、今回は暖かいものをいただきます。
ミッシュブロート
小麦粉とライ麦粉を半々で作るドイツのパンです。中はしっとりしていて、ほのかな酸味のあるパンです。
うすくスライスしました。ハムやチーズをのせて食べると美味しいです。
クワルクトルテ
ドイツのベイクドチーズケーキです。
クワルクとは、ヨーグルトのようなフレッシュチーズです。
今回はラズベリーソースをかけていただきます。
*
料理を並べたあと、二人は写真を撮っています。
今回は陽子さんも一緒に食事をします。
アンナ「飲み物は、お好きなものをアイテムボックスから出してください」
アンナ「いただきます」
三人 「いただきます」
ぱくぱく・・・
二人 「美味しい」
わたしは料理の説明をしました。二人は食べながら聞いています。
*
アンナ「異世界ツアーの下見はどうでしたか?」
加藤 「想像以上です。最初はテーマパークに行くものだと思っていました」
志村 「ぼくは、加藤先生が騙されていると思っていました」
加藤 「今日の出来事は、日本で・・・いえ、
地球では体験できないことばかりです」
志村 「そうですね。魔法、魔物、恐竜・・・」
加藤 「生徒たちにも体験させたいです」
志村 「加藤先生、校長は修学旅行を検討すると言っていましたが、
おそらく実施しないつもりです。
校長に、今回の下見を報告して異世界修学旅行を実現させましょう。
ぼくも一緒に説得します」
加藤 「あ、はい・・・志村先生は、校長の指示に従うはずでしたよね?」
志村 「気が変わりました。生徒たちにどうしても異世界を見せたいです。
いい思い出になるはずです。
それにウイルス感染する心配がありません」
加藤 「そうですね。志村先生、一緒に報告書を作りましょう」
志村 「はい」
*
食事が終了しました。
アンナ「ごちそうさまでした」
三人 「ごちそうさまでした」
わたしは魔法で食器を片付けました。
アンナ「それでは、お二人を日本に送ります」
私たちは、玄関で靴の履き替えてコテージの外に出ました。
加藤 「うわー、星がきれい」
志村 「月がふたつありますよ」
加藤 「すごいですね」
志村 「この夜空も生徒に見せたいです」
加藤 「そうですね」
アンナ「魔道具の返却をお願いします」
加藤 「はい」
志村 「はい」
わたしは二人から魔道具を受け取りました。
加藤 「今回は無料でいいんですか?」
アンナ「はい。下見なので無料で構いません」
志村 「なんだか申し訳ない」
アンナ「団体客誘致の先行投資です」
加藤 「今日は、とても楽しかったです。料理も美味しかった」
志村 「下見であることを忘れて、観光している気分でした」
加藤 「本当にそうですね」
志村 「修学旅行が実現できるように、がんばりましょう」
加藤 「はい」
アンナ「それでは、検疫を行います」
アンナ「クリーン・・・鑑定」
アンナ「ウイルスの感染はありません。
お二人とも健康状態に問題ありません」
加藤 「お世話になりました」
志村 「お世話になりました」
アンナ「ありがとうございました」
アンナ「お二人を日本に送ります」
わたしは転移先の新宿を千里眼で確認しました。
アンナ「送還」
わたしは、二人を日本に送還しました。
今夜も夜空がきれいです。
異世界修学旅行の下見は無事に終了しました。