171 街の案内です 1
ここはワウラの街です。
わたしとローラと陽子さんは、孤児院で手打ち野球をしたあと、歩いて次の場所に移動しています。
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わたしはダノン食堂に向かう途中で、人が集まっているお店を見つけました。
ちょっと寄って行きましょう。
お店の前に来ました。このお店は氷屋さんです。冷蔵箱に入れる氷を売っています。
氷は製氷機ではなく、氷魔法で作ります。
冷蔵箱を利用している人がトートバッグで氷を買いに来ます。
店頭では、ダークエルフの男女二人がアイスキャンディーを売っています。
鑑定したところ、果実を潰して凍らせたものです。砂糖や水は加えていません。
アイスキャンディーは1本、大銅貨3枚です。日本円で300円くらいです。手作りなので妥当な値段です。
ローラ「食べたいわ」
アンナ「わかりました」
わたしはローラにおカネを渡しました。
アンナ「好きなものを買ってください」
ローラ「ありがとう」
ローラはイチゴを買いました。陽子さんはオレンジです。わたしはメロンです。
この街で普及しているメロンは、皮と果肉が黄色です。
ローラ「美味しいわ」
陽子 「アイスキャンディー、美味しい、記録しました」
アンナ「美味しいです」
このお店で売っているアイスキャンディーは、果物が数種類とカフェオレです。
アイスクリームはありません。残念です。
わたしは店員に声をかけます。
アンナ「アイスクリームを作ってみませんか?」
ローラ「いいわね」
男店員「あいすくりーむ?」
わたしは、自分用に作った小さなアイスクリームをアイテムボックスから取り出し、二人に渡しました。
二人は受け取り、食べます。
ぱくっ。
男店員「こんなの初めてだ。器は焼き菓子か・・・面白い」
女店員「美味しい・・・これの作り方を教えてくれるの?」
アンナ「はい」
男店員「ライラ、教えてもらえ。店番は僕がやる」
ライラ「いいの兄さん」
男店員「店は任せろ。その代わり作り方をちゃんと覚えてくれよ」
ライラ「わかったわ」
アンナ「自己紹介がまだでしたね。わたしはアンナ、妹の陽子、友達のローラです」
ライラ「あなたが、うわさのアンナさん・・・」
どうなうわさでしょうか。
ライラ「私はライラ、いま接客しているのは兄のスミスです」
アンナ「早速ですが、キッチンか工房を案内してください」
ライラ「はい」
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私たちは工房に案内されました。思ったよりも広く、大きな作業台があります。
ライラさんには道具と食材を用意してもらいました。
わたしはコーン作りに必要な円錐の型を経木で二つ作りました。
一つはコーンを巻く型です。もう一つはコーンの置く場所に使います。
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アンナ「これがレシピです」
ライラ「これ、もらっていいの?」
アンナ「はい」
アンナ「最初はコーン作りからです」
ライラ「こーん?」
アンナ「アイスクリームを入れる器です」
コーンの作り方
小麦粉、砂糖、牛乳、バター、卵白をを混ぜて、フライパンで両面を焼きます。
焼きあがったら熱いうちに型に巻き付けます。このときコーンを先を折り曲げておくとアイスクリームが溶けても垂れてきません。
わたしはコーンを1枚焼きました。
アンナ「焼き上がったコーンは熱いうちに型に巻いて形を整えてください。
冷めるとパリパリになります」
ライラ「はい」
わたしは手早く形を整えて、用意したコーン置き場にのせました。
アンナ「次はライラさんが作ってください」
ライラ「はい」
ライラさんもコーンを一つ作りました。問題ありません。
習熟すれば、もっと手早く出来ると思います。
アンナ「陽子さん、残りの生地でコーンを焼いてください」
陽子 「はい」
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次はアイスクリームです。
アイスクリームの作り方
ボウルに卵黄と砂糖を入れて、よく混ぜます。そこに温めた牛乳少しずつを入れて、混ぜます。
そのあと、その材料を鍋に入れて混ぜながら加熱します。とろみがついたら火から下ろして、冷やします。
次に生クリームを泡立てて、先ほどの材料に加えます。
最後に、氷魔法で冷やしながらヘラで混ぜて、ある程度固まったら完成です。
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わたしは手順通りにアイスクリームを作ります。特に難しいことはありません。
材料に生クリームを入れたところまで作りました。
わたしは混ぜた材料を二つのボウルに分けます。
アンナ「ここからは魔法です。魔力を加減しながら氷魔法で材料を冷やします。
大切なのは、空気を入れるようにヘラでかき混ぜることです。
空気が入ると口溶けが滑らかなアイスクリームになります」
わたしは氷魔法を使ってボウルの中身を冷やし、アイスクリームを作りました。
魔法を使えば数分で完成します。
アンナ「これで完成です。ライラさんも作ってみてください」
ライラ「はい」
ライラさんが氷魔法を使って、アイスクリームを作ります。魔力の加減が上手です。
数分で完成しました。
アンナ「できましたね」
ライラ「ありがとうございます」
ローラ「食べましょう」
アンナ「はい」
これで今日のおやつは3回目ですね。
わたしはアイテムボックスから、アイスクリームをすくい取るディッシャーを取り出しました。
練金魔法で自作したものです。
アンナ「これはディッシャーと言って、アイスクリームをすくう道具です。
差し上げますので使ってください」
ライラ「ありがとうございます」
わたしはコーンにアイスクリームを盛り付けていきます。
アンナ「溶けないうちに食べてください」
ローラ「いただくわ」
ぺろっ。
ローラ「美味しい」
ライラ「美味しい。これ絶対に売れると思います」
アンナ「わたしもそう思います。材料次第で、味を替えることもできます。
また、チョコレートやナッツをトッピングしたり、色々と工夫してください」
ライラ「はい」
わたしは少なめに盛り付けました。
アンナ「美味しいです」
陽子 「アイスクリーム、美味しい、記録しました」
わたしはアイスクリームを食べながらライラさんと話をしました。
驚いたことにライラさんの年齢は45歳、スミスさんは51歳だそうです。
二人とも見た目は10代です。ダークエルフは人族よりも長寿で、年をとるのが遅いそうです。
うらやましいですね。
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スミス「できたのか? 僕も食べたい」
ライラ「お店は?」
スミス「全部売り切れたから、店じまいにしたよ」
ライラ「それはよかったわ」
ライラさんは、スミスさんの分を盛り付けました。
ライラ「兄さん、食べて」
スミス「うん」
ぱくっ。
スミス「美味しい・・・アイスキャンディーとは全くの別物だね。
これ絶対に売れるよ」
ライラ「私もそう思うわ」
この街で氷魔法が使える人は、この兄妹だけです。
ライバルがいないので売れるはずです。
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アンナ「そろそろ、お暇します」
ライラ「アンナさん、ありがとう」
スミス「ありがとう」
私たちは氷屋さんを出ました。
ダノン食堂に行く予定でしたが、寄り道に時間がかかってしまいました。
今から行けば、夕食の混雑時になりますね。迷惑がかかります。
ローラ「私は、帰るわ」
アンナ「わかりました」
わたしは、マオが入ったスリングを受け取りました。
ローラ「明日は、何をするの?」
アンナ「明日も、陽子さんに街を見せる予定です」
ローラ「私も一緒に行きたいわ」
アンナ「はい。明日も一緒に街を見て回りましょう」
ローラ「今日は楽しかったわ。またね」
ローラは天界に帰りました。
アンナ「私たちも帰りましょう」
陽子 「はい」
アンナ「転移」
私たちは飛行島のコテージに帰りました。