163 公園 (別視点)
* 別視点 大学生 side *
ここは恐竜ツアー集合場所の公園。
西川と吉田が送還された。
中村はブランコで、しょんぼりしている。
吉田 「会長。」
中村 「お前ら。」
中村 「あんなバカこと、言わなきゃよかった。」
吉田 「アンナさん・・・怒ってないです。」
中村 「・・・本当か?」
吉田 「はい。」
吉田 「これ、お土産です。」
中村 「俺に?」
吉田 「はい。私も貰いました。」
西川 「僕も。」
中村 「そうか・・・じゃあ、俺も貰うか。」
吉田 「はい。どうぞ。」
中村 「中身なんだ?」
吉田 「お菓子です。」
中村 「開けてみるか。」
中村 「恐竜のお菓子。」
ぱくっ。
中村 「うまい・・・恐竜か・・・異世界にまだ見てない恐竜いるかな?」
吉田 「いますよ・・・きっと。」
西川 「僕もそう思います。」
中村 「二泊三日、あっと言う間だった・・・楽しかったなあ。」
吉田 「はい・・・楽しかったです。」
西川 「めちゃめちゃ楽しかったです。」
中村 「また行きてえな。」
吉田 「また行きましょう・・・異世界ツアーに。」
西川 「そうですよ。恐竜を見に。」
中村 「そうだな・・・また行くか。」
吉田 「はい。」
西川 「はい。」
中村 「よし。俺はバイトしてカネを貯める。」
吉田 「はい。」
西川 「はい。」
三人は、翌日集合する約束をして、解散した。
* * *
夜が更けて、三人はそれぞれベッドに入り、異世界ツアーを思い返していた。
* 別視点 西川 side *
楽しかったなあ。まるで夢のようだった。夢じゃないよな。スマホ・・・
大丈夫だ。ちゃんと記録が残ってる。映画やCGじゃない、本物の生きた恐竜。すごいなあ。
近距離からも撮影した。皮膚の質感も良く撮れてる。恐竜の鳴き声を収録できた。すごいよ。
空中から撮影、やばいよ。足元が透明だから、最初はぞわぞわしたけど、楽しかった。
それから水中の撮影もよかった。水が透明だからきれいに撮れてる。
あの乗り物すごかったな。飛行機にもなるし、潜水艇にもなる。魔法で作って、魔法で動かす。
魔法すごいよ。いや、アンナさんがすごいんだ。
カンブリア紀の生き物もよかったなあ。オパビニアとアノマロカリス、色は違ってたけどCGと同じだった。
巨大アンモナイトもよかったなあ。直径2mは、でか過ぎだよ。
アンナさんが撮ってくれた記念写真、いいな。
本当は吉田さんと二人だけで撮りたかったな。これ会長のところだけ修正で消せるかな。
やっぱりやめておこう。ばれたら会長に怒られそうだ。
たくさんの恐竜を撮影できた。どれもいいけど、やっぱり一番はヨシダサウルスかな。
新種の恐竜を発見って、すごいよ。新種の化石を発見したんじゃない。生きた新種の恐竜を発見したんだ。
吉田さんのおかげだよ。あれ? でもあの恐竜、アンナさんが発見したんじゃないの?
まあいいか、もうヨシダサウルスって名前もつけちゃったし。
恐竜もよかったけど、景色もきれいでよかった。
飛行島もよかった。きれいな島だった。空に浮かぶ島、異世界らしいよ。
コテージもよかった。泊まった部屋、広かったなあ。僕、スイートルームに泊まったの初めてだ。
料理も美味しかったなあ。初めて食べる料理ばかりだった。何回もおかわりしたし。
アンナさんが作ったんだよな。あの料理。
アンナさん、かわいかったな。でもやっぱり吉田さんの方がかわいい。
吉田さん、今頃どうしてるかな。もう寝たかな。
吉田さん、変わったよ。会長が言ったように生き生きしてた。前よりたくさんしゃべるようになったし。
吉田さんとの距離、少しは縮まったかな。いやまだまだかな。
吉田さん、僕のこと、どう思っているのかな。
* * *
* 別視点 吉田 side *
ベッドに入ると現実に戻った気がする。いや、異世界も現実に存在したけど。
本当に私、異世界に行ったんだよね。スマホ見てみよう。
ちゃんと写真や映像が残ってる。やっぱり私は異世界ツアーに行った。夢や妄想じゃない。
最初はどうなるかと思ったよ。会長は詐欺のオッサンを捕まえるって言ってたし。
面倒なことになったって思ってた。でも本当に異世界に行けるかもって、ちょっとだけ思ってた。
おカネを用意して正解だったね。西川君もおカネを用意していたから、異世界のこと、信じていたのかもね。
会長は全然信じてなかったけど。笑
会長があんなに焦ったの初めて見た気がする。ちょっとかわいかった。
会長、預金がなかったら、どうするつもりだったのかな。でも会長が参加出来て本当によかった。
料理美味しかったなあ。朝昼晩、それとおやつ、知らない料理ばっかり。
それに、なに、あのコテージの大きさ。リビングも広かったけど、私の泊まった部屋、
あれのどこがシングルルームなの、びっくりだよ。キングサイズのベッドなんか初めて見た。
お風呂なんか完全にプールだし。笑
木造だったけど、外国のホテルってあんな感じなのかな。でも外国に飛行島はないよね。笑
それと。黒い子猫のマオちゃん、かわいかったな。ちっちゃくて、目がまんまるで。
陽子さんは、全然話してないけど、なんとなく私と似ている気がする。アンナさんの妹って言ってたけど、
本当かな。それとも何か訳ありかな。
それから、あの魔道具、すごいよね。クリーン魔法で服も体もきれいになるし、歯磨きもしなくていい。
それと、アイテムボックス。あれすごいよ。なんでも入るし、飲み物は冷たいまま、アイスもあるし、
お菓子も入ってた。熱々のホットドッグが入っていたから、寝る前に1個食べちゃった。
ダイエットしないとだめね。
3日間楽しかったな。ずっと会長と一緒だった。景色もきれいだったし、恐竜がすごかった。
そうそう恐竜。同好会に入った最初のころは、そんなに興味がなかった。
会長や西川君が楽しそうに話しているのを聞くだけで面白かった。
でも異世界ツアーの本物の恐竜を見たときは驚いたよ。大きい。ものすごく大きい。
会長や西川君が興奮するのがよくわかる。私も興奮した。そして恐竜が大好きになった。
そうだ。もっと恐竜のこと、会長に教えてもらおうかな。会長と話をするいいチャンスね。
異世界ツアーで会長とたくさんお話ができた。少しは私と会長の距離、縮まったよね。
でも、まだまだかな。もっとがんばらないと。
会長、私のこと、どう思っているのかな。まさか本当にアンナさんのことが好きってことないよね。
あのプロポーズは衝撃だった。頭の中が真っ白になった。あの言葉、耳から離れないよ。
「アンナ・・・俺と結婚してくれー!」
ああ、胸がキュンキュンする。
さっき公園で話をしたときは、暗いからよかったけど、明日会長に会ったら、顔をまともに見られないような気がする。
あ、そうだ。明日からまたマスク生活だった。ほっとしたような、がっかりしたような。
* * *
* 別視点 中村 side *
俺は、なんであんなバカのことを言ってしまったのか。
いや、ウジウジ考えるのはもうやめよう。過ぎてしまったことだ。考えても仕方がない。
スマホで撮影した恐竜でも見るか。頭を切り替えよう。
まずは初日に見たティラノから・・・
ああ、やっぱり最高だぜ、ティラノ。ちょっと撮影が下手くそだが、しょうがねえな。
なにしろ異世界に召喚されただけでも驚きなのに、目の前にいきなりティラノ、だからな。
撮影は良くやった方だ。俺にしては上出来だ。悪くない。
そのあとも色々見たな。イグアノ、トリケラ、カルタノ、ブラキ・・・
ブラキ、でけえなあ。本物だぜ。映画やCGじゃない本物。最高だ。
空中からの撮影も良かったな。プテラ。マジでかっこいいな。
水中撮影も良かった。エラスモ。でかいし、かっこいい。
このスマホで撮影した映像、他人に見せたら、実写だって信じるやついるか?
いねえよな。この俺でさえ、異世界ツアーに行くまで信じなかったくらいだ。
やっぱり恐竜は最高だ。いや恐竜だけじゃない。翼竜や首長竜、そして絶滅した古生物もだ。
ドードー、モア、オーロックス、ステラーカイギュウ・・・
まさかこいつらが見られるとは思わなかったぜ。人間に絶滅させられた動物だ。
だが異世界に生き残っていた。嬉しかった。ほっとした。
他にも人間のせいで絶滅した動物はたくさんいる。異世界に生き残っているといいな。
恐竜や古生物、いっぱい見たな。移動で時間がかかることもない。魔法、すげえな。
泊まった部屋もすごかったし、メシもうまかった。全部アンナのおかげだ。
アンナか・・・
吉田の話では怒ってないと言っていたが、けじめはつけないとだめだ。
俺は決めた。
今度異世界に行ってアンナに会ったときには、坊主頭で土下座をする。
そしてアンナに謝罪するためにも、俺はまた異世界ツアーに行く。
なんかいいバイトねえかな。
あ、そうだ。カネ。預金をおろしたからカネがない。
すぐにバイト探しだ。
俺はカネを貯めて、また異世界ツアーに行くぞ。