162 恐竜ツアー3日目です。11
ここは、飛行島のコテージです。
わたしはリビングにいます。マオと一緒です。
先ほど私たちは、新種恐竜を見た平原から帰ってきました。
三人がテラスに集合しました。
わたしはマオを床に置いて、テラスに向かいました。
そしてアイテムボックスからデザート以外の料理を出します。
*
夕食はトルコ料理です。
ピデ、イズミルキョフテ、チョバンサラタス、カザンディビです。
ピデ
イタリアのピザとほぼ同じ料理です。違いは、円形ではなく舟形や楕円形です。
具材がチーズやトマトソースに限定されないのが特徴です。
ピデの歴史は古く、ピザの原型という説があります。
今回は3種類のピデを焼きました。
調味料は塩、香辛料、オリーブ油などです。トマトソースは使いません。
サフランボル・ピデ(ほうれん草と挽肉)
ペイネルリ・ピデ(チーズと玉子)
パストゥマル・ピデ(パストゥマルとはパストラミのことですが、生ハムに近い加工肉です)
イズミル・キョフテ
イズミルは港町の名前です。
キョフテは、牛や羊の挽肉、刻んだ玉ネギとパセリ、香辛料などで作るハンバーグのような料理です。
中東、東欧、南アジアなどの広い地域で食べられています。
作り方は、まず捏ねたキョフテを器に並べます。
次に細切りのジャガイモ、玉ネギ、パプリカなどをキョフテの上にのせます。
最後にトマトペースト、塩、香辛料、オリーブ油等でソースを作り、キョフテにかけます。
それをオーブンで焼けば完成です。
チョバン・サラタス
羊飼いのサラダという意味です。
作り方は、トマト、キュウリ、パプリカ、玉ネギをさいの目に切ります。
それを塩、オリーブ油、レモン汁で和えます。最後に刻んだパセリをかければ完成です。
カザンディビ
作り方は、まずフライパンにバターを塗り、粉砂糖を振りかけておきます。
次に、フライパンとは別に深鍋を用意します。その中に牛乳、米粉、片栗粉、砂糖を入れて火にかけます。
ドロリとしてきたら、それをフライパンに移します。
フライパンを火に書けて、表面がモチモチになり、粉砂糖がカラメルになったら完成です。
東洋の米粉と西洋のバターカラメルが融合した、トルコらしいお菓子です。
*
アンナ「いただきます。」
三人 「いただきます。」
ぱくぱく・・・
吉田 「美味しい。」
西川 「美味しいね。」
中村 「うまい。」
わたしは料理の説明をしました。
*
吉田 「トルコ料理・・・」
西川 「ピザもハンバーグもうまい。」
中村 「そういえば、なんで異世界ツアーに異世界の料理を出さないんだ?」
アンナ「わたしの知る限り、異世界には美味しい料理がありません。
そのため食材は異世界のものを使い、調理は地球のレシピを参考にしています。
そして、日本人が知らない料理を出すことで、非日常感を演出しているわけです。」
西川 「異世界の料理がまずいのは、異世界小説のテンプレです。」
中村 「まあ俺としては、うまければ何でもいいぜ。」
西川 「僕もそう思います。」
吉田 「うん。私も。」
アンナ「ありがとうございます。」
*
料理が食べ終わったので、デザートを出しました。
アンナ「さあ、どうぞ。」
ぱくっ。
中村 「これ、うまいな。」
西川 「はい。食感は餅なのに、味は西洋風なんですよね。」
吉田 「うん。美味しい。」
アンナ「おかわりありますよ。」
中村 「おかわりくれ。」
西川 「僕も。」
吉田 「私も。」
アンナ「はい。」
デザートのカザンディビは好評です。
ただ、中村さんがいつもより静かな感じがします。
ツアー最後の料理なので思うところがあるのかもしれません。
*
夕食が終わりました。
アンナ「ごちそうさまでした。」
三人 「ごちそうさまでした。」
わたしは食器類を片付けました。
アンナ「忘れないうちにこれを渡しておきます。」
わたしは中村さんに、撮影データが入ったメモリーを渡しました。
アンナ「差し上げます。」
中村 「もらっていいのか?」
アンナ「はい。今は安く買えますから。」
中村 「サンキュー。」
アンナ「皆さん、アイテムボックスから私物を出して、魔道具を返却してください。」
三人はそれぞれバッグや靴などを出しました。わたしは魔道具を受け取ります。
アンナ「次に検疫を行います。」
わたしは、一人ずつクリーンと鑑定をしました。
アンナ「皆さん、問題ありません。検疫終了です。」
アンナ「それでは靴を履いて、帰国の準備をしてください。ここでお別れします。」
三人は靴を履き、帰国の準備が出来ました。
陽子さんがマオをだっこして、テラスに来ました。皆さんの見送りです。
アンナ「皆さんを日本に送還します。」
中村 「待ってくれ。」
ん?
中村 「アンナ・・・俺と結婚してくれー!」(大きな声)
吉田さんが固まっています。
アンナ「だめです。中村さんが好きなのはわたしではなく、恐竜ですよね。」
中村 「・・・・・・・・・・俺は日本に帰らないぞー!」(大きな声)
西川 「逃げた。」
中村さんが逃げましたが、ここは飛行島です。逃げるところはありません。
アンナ「送還」
吉田 「あれ? 会長は?」
アンナ「一足先に帰国しました。」
わたしは惑星の裏側に転移させたりしません。
西川 「なんか・・・すみません。」
吉田 「あの・・・会長・・・悪い人じゃありません・・・」
西川 「そうです。中村正義、名前のとおり正義感の強い人です。」
アンナ「はい。わかっています。きっと日本に帰りたくないほど、
ツアーが楽しかったということですよね。ありがたいことです。」
アンナ「あ、中村さんには渡しそびれましたが、これお土産です。
中村さんにも渡してください。中にお菓子が入っています。」
わたしは、持ち手がついた紙製の箱を3個、西川さんと吉田さんに渡しました。
中に入っているのは、恐竜型のアイシングビスケットです。
西川 「あの、異世界ツアー楽しかったです。こんなに楽しかったのは、
人生で初めてかもしれない・・・また申し込みします。」
アンナ「はい。」
吉田 「私も・・・楽しかった・・・こんなに・・・おしゃべりしたの・・・初めて・・・
また・・・異世界に・・・来たい・・・アンナさん・・・ありがとう。」
アンナ「はい。こちらこそ、ありがとうございました。」
アンナ「それでは、お二人を日本に送還します。よろしいですか?」
ふたりが頷きます。
アンナ「送還」
西川さんと吉田さんは帰国しました。
今夜も星がきれいです。
アンナ「陽子さん、中に入りましょう。」
陽子 「はい。」
異世界恐竜ツアーは、無事に終了しました。