160 恐竜ツアー3日目です。9
ここは、林と茂みが点在する草原です。
私たちは、スピノサウルスがいた密林から転移してきました。
草原では1頭の草食恐竜が草を食べています。
中村 「アンキロサウルスだ。」
吉田 「会長、かっこいいですね。」
中村 「ああ、吉田もそう思うか。」
西川 「僕も好きです。」
中村 「いいなアンキロ。ゲームに登場するモンスターみたいだ。」
西川 「僕もそう思います。」
私たちはMTVの中から撮影を開始しました。
アンキロサウルスは全長10m、全身が茶色です。頭部と背中にたくさんの突起があります。
体の側面には鋭い棘があります。尻尾の先がハンマーのようになっている草食恐竜です。
前回のツアーでも見ました。
ん?
ここから離れていますが、別の恐竜が1頭います。こちらに近づいています。
念のため、先に記念撮影をした方がよさそうですね。
アンナ「こちらに別の恐竜が1頭近づいています。先に記念撮影をしましょう。」
中村 「そうか・・・わかった。」
わたしはMTVを空中に固定して、外に出ます。アングルを確認して、恐竜付近に三人を・・・
アンナ「転移」
カシャ。
アンナ「転移」(MTVへ)
三人を恐竜の前に転移させて撮影したあと、すぐにMTVに戻しました。わたしも戻ります。
私たちはアンキロサウルスの撮影を続けました。
この恐竜は前回のツアーでも見ました。鉄壁の鎧を纏っているようです。肉食恐竜に襲われても簡単に負けることはないでしょう。
*
中村 「アンナ、近づいているのはどんな恐竜だ?」
アンナ「もうすぐ見えてきます。」
見えてきました。こちらに向かって走って来ます。
中村 「あれか。」
三人 「・・・・・・・・」
アンナ「ティラノサウルスです。」
中村 「なんだあれ? アンナ、どういうことだ? 羽毛があるぞ。」
アンナ「はい。なぜ羽毛があるのか、わかりません。生息環境なのか、
突然変異なのか、魔素の影響なのか。原因不明です。
異世界には羽毛有りと羽毛無し、二種類のティラノサウルスがいるようです。」
ティラノサウルスは全長11m、全身がこげ茶色の羽毛で覆われています。もふもふです。
私たちの目の前までやって来ました。
アンキロサウルスに向かってライオンのような唸り声を発しています。
私たちは撮影を続けます。
羽毛 「グルルル・・・・・・」
草食 「ウォッ、ウォッ・・・」
中村 「アンナ、手を出すな。これは善悪じゃない。弱肉強食だ。」
アンナ「はい。」
羽毛 「ウォー・・・」
ティラノサウルスが鋭い歯で襲いかかります。戦闘開始です。
アンキロサウルスは体の周囲にトゲがあり、防御力の高い恐竜です。
ティラノサウルスは何度も襲いかかりますが、アンキロサウルスには隙がありません。
逆にアンキロサウルスは鋭いトゲで体当たりをします。
ティラノサウルスは体当たりを避けて、攻撃のチャンスを窺います。
羽毛 「グルルル・・・・・・」
今度はティラノサウルスが足の爪で攻撃をします。
アンキロサウルスは体を捻り、ハンマーのような尻尾を左右に振り、応戦します。
ティラノサウルスは爪と歯の攻撃を交互に繰り返します。その時・・・
ゴツッ。
鈍い音がしました
アンキロサウルスの尻尾がティラノサウルスの足に当たった音です。
ティラノサウルスは一瞬よろけますが、踏み留まりました。怪我はしていないようです。
羽毛 「グルルル・・・・・・」
草食 「ウォッ。」
ティラノサウルスは後ずさりをして、立ち止まりました。
そしてアンキロサウルスからゆっくり離れていきます。戦意を喪失したようです。
逃走しました。
西川 「ふー、どうなることかと思いましたよ。」
中村 「あのティラノは頭はいいぜ。足を怪我したら一巻の終わりだ。
ちゃんとわかっている。だから無理をせず諦めたんだ。」
吉田 「私もそう思う。」
ティラノサウルスは遠ざかって行きます。
アンナ「どうしますか?」
中村 「ティラノを追え。」
アンナ「はい。」
わたしはアンキロサウルスを見ました。ドヤ顔をしているように見えました。
怪我はしていません。
わたしはMTVでティラノサウルスを追跡します。
ティラノサウルスは湖の方に向かっています。水辺の動物を捕食するのかもしれません。
追いつきました。私たちは、走る恐竜を横から見下ろしています。
西川 「こうして見ると、変な顔の、でかい鳥みたいですね。」
吉田 「くくくくくっ・・・・・・」(笑)
中村 「笑うなー。」
小さな前肢が羽毛に隠れているので、本当に大きな鳥みたいです。
鳥は恐竜から進化したというのも、納得が出来ます。
吉田 「あの恐竜、なんかかわいい。」
ティラノサウルスの羽毛が、もふもふの着ぐるみに見えてきました。
以前ネットで恐竜を検索したとき、羽毛の有無について賛否両論がありました。
その議論とは別に、羽毛恐竜は「ダサい」という意見が多くありました。
「ダサい」ではありません。「かわいい」です。
ティラノサウルスは速度を落とし、歩き始めました。この先の茂みと林を抜ければその先に湖があります。
ん?
大きな反応がありました。別の大きな生き物が湖に近づいています。
このままだと湖に着くまえに鉢合わせになる可能性があります。
別の生き物はかなり近づいて来ましたが、立ち止まったようです。
この距離なら千里眼を使わなくても見えそうです。
わたしはMTVの高度を上げました。
吉田 「あそこに恐竜。」
アンナ「別の恐竜がいます。」
中村 「どこだ? 吉田。」
吉田 「あれです。」
中村 「・・・・・・」
西川 「あれかー。わかった。」
中村 「わかんねえぞ。アンナ近づいてくれ。」
アンナ「はい。」
わたしはMTVで別の恐竜に近づきました。
中村 「わかった、こいつか・・・俺の知らねえ恐竜だ。
西川、知ってるか?」
西川 「僕も知りません。」
中村 「そうだ、鑑定・・・・・・」
中村 「どうなってる? アンナ、鑑定が出来ねえぞ。」
アンナ「名前がありません。新種の恐竜です。」