155 恐竜ツアー3日目です。4
ここは、平原の上空です。
私たちは魚竜がいた海から転移してきました。
平原を1体の大きな鳥が歩いています。わたしはMTVを近づけました。
吉田 「かわいい鳥。」
中村 「ガストルニスだ。」
西川 「シノニム(異名)は、ディアトリマです。」
中村 「日本では、そっちの名前が有名だな。」
西川 「はい。ゲームやアニメに登場する、人が乗る鳥のモデルになりました。」
私たちは撮影を開始しました。
ガストルニスは体高2mで、全身がうす茶色です。大きなくちばしが特徴で、飛べない鳥です。日本では恐鳥と呼ばれています。
大きな鳥ですが、吉田さんが言うようにかわいい鳥です。ゲームやアニメのモデルになるのも、わかる気がします。
西川 「この鳥、肉食か草食か、大論争になっていますよね。」
中村 「ああ、俺もそこが一番気になるぜ。
お前はどっちだと思う?」
西川 「わかりません。ですが凶暴そうには見えませんね。」
中村 「吉田はどう思う。」
吉田 「草食・・・かわいいから。」
中村 「女の勘は当たるからな。」
西村 「それにしても実物は、図鑑のイラストと雰囲気がかなり違いますね。」
中村 「ああ、巷では恐竜に替わって、生態系の頂点に君臨した恐鳥
と呼ばれているんだけどな。」
西川 「僕、ガストルニスが馬を咥えているイラストを見たことがあります。」
中村 「ガストルニスは2mだぞ。馬はさすがに盛り過ぎだろ。」
西川 「ですよね。」
ガストルニスが茂みに近づきました。そして赤い草の実を食べ始めました。
中村 「草食かよ。」
西川 「吉田さん、正解だったね。」
吉田 「うん。」
わたしも草食だと思っていました。
中村 「西川お前、大型で飛べない肉食の鳥って、知ってるか?」
西川 「大型で飛べない肉食の鳥・・・・・・ダチョウは草食だし・・・・・・
あれ? 聞いたことがないような・・・」
中村 「だろ。」
西川 「肉食の猛禽類は、飛べますからね。
なんでガストルニスが肉食ってことになったんですかね。」
中村 「さあな。ただ、恐竜が絶滅したあと、恐竜から進化した鳥が地上を支配したに違いない、
みたいなことを考えていいたのかもな。」
西川 「恐竜の血を受け継ぐ次世代の支配者・・・ですかね。」
中村 「実際には、草食だったけどな。」
吉田 「降りて近くで見たい。」
アンナ「わかりました。そうしましょう。」
私たちはMTVを降りて鳥に近づきました。鳥に気付かれないように光学迷彩をかけます。
西川 「赤い実を葉っぱごと食べてますね。」(小声)
中村 「完全に草食だな。」(小声)
吉田 「アンナさん、写真撮りたい。」(小声)
アンナ「わかりました。一瞬だけ迷彩を解除します。三人で撮りましょう。」
三人が鳥の横に立ちました。
アンナ「撮ります・・・迷彩解除」(小声)
カシャ。
アンナ「迷彩。」
鳥 「ガー。」
鳥は走って逃げて行きました。
食事中に驚かせてしまい、申し訳ないです。
吉田 「逃げちゃった。」
中村 「しょうがない・・・アンナ、次を案内してくれ。」
アンナ「はい。」
私たちは光学迷彩を解除して、MTVに戻りました。
アンナ「次の場所に移動します・・・転移」
* * *
ここは平原の上空です。私たちは先ほどの場所から少し離れたところに転移してきました。
茂みの近くに1体の生き物がいます。わたしはMTVを近づけました。
西川 「また鳥?」
中村 「よく見ろ。」
西川 「あれは・・・始祖鳥。」
中村 「その名前で呼ぶな。その名前は、鳥と恐竜の違いがわからない連中がつけた俗称だ。」
西川 「そうでした・・・アーケオプテリクスです。」
中村 「そうだ。」
私たちはMTVの中から撮影を開始しました。
アーケオプテリクスは全長50cmです。全身が白、黒、茶色の羽毛で覆われています。
日本では「始祖鳥」の名で知られています。
中村 「アンナ、ギリギリまで近づけてくれ。」
アンナ「はい。」
わたしはMTVをギリギリまで近づけました。わたしも近くで見たいです。
アーケオプテリクスは、地面を歩いています。
中村 「西川、どう思う? これが鳥か、または恐竜か。」
西川 「見た目は鳥みたいですが・・・
アーケオプテリクスの特徴は、歯があり、翼に鉤爪がついた指があり、
骨が通った尻尾があります。鳥ではなく、恐竜の一種だと僕は思います。」
中村 「大きな翼以外は、恐竜の特徴だ。羽毛がある恐竜は今時珍しくない。」
西川 「はい。遺伝子を受け継いでいる可能性はありますが、
鳥の直接的な始祖ではないと思います。」
中村 「そうだろ。そもそも始祖の鳥という表現がおかしい。」
西川 「はい。分類学的には、原鳥類。つまり原始的な鳥の特徴をもった恐竜の一種。
そういう考え方が主流だったと思います。」
中村 「こいつは恐竜みたいな鳥ではない。鳥みたいな恐竜、羽毛恐竜だ。」
西川 「そうですよね。」
中村 「ただこいつは、古生物学に一石を投じた重要な生き物であることは間違いない。」
西川 「はい。鳥と恐竜の進化を考える上でとても重要な存在です。」
*
中村 「ところで、こいつの飛行能力が気になるぜ。」
西川 「僕もです。」
吉田 「私も気になる。」
中村 「こいつ飛ばねえかな。」
アンナ「さっきと同様に記念撮影すれば、驚いて飛ぶかもしれません。」
中村 「わかった・・・西川が飛ぶところを動画撮影しろ。」
西川 「はい。」
私たちは、光学迷彩をかけてMTVを降りました。MTVは収納します。
三人はアーケオプテリクスに近づきました。
撮影の用意ができました。
アンナ「撮ります・・・迷彩解除」(小声)
カシャ。
バサバサバサ・・・・・・
吉田 「飛んだ。」
西川 「撮影できました。」
中村 「高さは1m、距離は10mくらいか。もっと高く遠くに飛べるかもな。」
西川 「やってみましょう。」
三人はアーケオプテリクスを後を追いかけながら、撮影を続けました。
なんだかニワトリを追い回しているみたいです。
ちょっとかわいそうになってきました。
中村 「飛行の高さは最高で2m、距離は最大で20mくらいだな。」
西川 「アーケオプテリクスの飛行能力がわかりましたね。」
中村 「ああ、貴重な記録映像が撮影できたぜ。」
吉田 「楽しかった。」
中村 「体を動かしたら、腹減ったな。」
アンナ「昼食にしましょう。」
近くに見晴らしが良さそうな台地があります。私たちはそこに転移しました。
昼食にします。
アーケオプテリクス(始祖鳥)についての見解は、登場人物による見解であり、フィクションです。
筆者の見解ではありません。