153 恐竜ツアー3日目です。2
ここは、森の上空です。近くには平原があります。
私たちは、ペンタケラトプスがいた草原から転移してきました。
森の中を4頭の恐竜が歩いていますが、上空からはよく見えません。
恐竜は、もうすぐ森から出て来そうです。わたしは草原に先回りしました。
姿を現しました。
中村 「あれは・・・アロサウルスか。すげえ、4頭もいるぞ。」
4頭のアロサウルスです。全長は7mから9mです。全身がうす茶色で、背中に縞模様があります。ティラノサウルスと比べると頭が少し小さく、鼻から目の上にかけて2列の突起があるのが特徴です。肉食の恐竜です。
アロサウルスは森から出て、周囲を見渡しています。
また歩き始めました。
私たちは撮影を開始しました。
西川 「捕食対象を探しているんでしょうか?」
中村 「たぶんそうだろう。」
西川 「確か、アロサウルスは化石がたくさん発見されていますよね。」
中村 「ああ、集団行動をすることも、わかっている。」
吉田 「西川君、あの恐竜強そう。」(スマホ見)
西川 「うん。僕もそう思う。動きが早そうだし、4頭もいるからね。」
中村 「走るのは早そうだな・・・ちょっと試してみるか。
アンナ、迷彩を解除してくれ。」
アンナ「はい。」
わたしはMTVの迷彩を解除しました。恐竜は二本足で走って、追いかけて来ます。
中村 「そのまま逃げてくれ。」
アンナ「はい。」
恐竜は速度を上げて追いかけて来ます。まるで映画のような迫力です。
中村 「鑑定したら、最高速度は時速51kmだった。」
吉田 「すごいですね。」(スマホ見)
恐竜は、少しずつ走る速度が遅くなってきました。
中村 「はやり早い速度で走り続けることは、できないみたいだな・・・
アンナ、この先に着地して、円形の結界を張ってくれ。」
アンナ「わかりました。」
わたしは、恐竜から距離をとって着陸しました。すぐに結界を張ります。
私たちはMTVから降りました。わたしはMTVを収納します。
恐竜が近づいて来ました。そして四方から私たちを取り囲みます。
恐竜は私たちに近づけず、戸惑っています。助走をつけてジャンプする恐竜もいます。
吉田 「あの恐竜、頭良さそう。」(スマホ見)
中村 「ああ、頭がいいな・・・西川、近づいて撮影しろ。」
西川 「はい。」
中村 「吉田は自分の判断で撮影しろ。」
吉田 「はい。」
中村 「アンナは、上空から撮影だ。」
アンナ「はい。」
わたしは光学迷彩で姿を消して、上空から撮影します。
三人は個別に恐竜を撮影しています。
*
恐竜は少しずつ動きが遅くなり、やがて立ち止まりました。
唸り声をあげています。
少しすると静かになり、1頭の恐竜が大きく吠えました。
恐竜は私たちから離れていきます。
残りの1頭だけが私たちを睨みつけています。『今日はこれくらいにしておいてやる。』そう言っている気がします。
最後の1頭も私たちから離れていき、恐竜の姿は見えなくなりました。
西川 「すごかったですね。」
吉田 「ちょっと、怖かった。」
中村 「結界なしで取り囲まれたら、一巻の終わりだ。」
わたしは周囲の結界を解除しました。
中村 「アンナ、次を案内してくれ。」
アンナ「はい。」
わたしはアイテムボックスからMTVを出します。
私たちはMTVに乗り込みました。
アンナ「移動します・・・転移」
* * *
ここは、扇状地に広がる草原です。
新婚旅行ツアーで訪れた場所です。恐竜ディプロドクスが6頭見えます。
わたしは恐竜の上空を旋回しました。
中村 「でけえ・・・ディプロドクスだ。」
私たちはMTVの中から撮影を開始します。
ディプロドクスは全長20メートル以上、大きな個体は30メートルあります。群れで草を食べています。
全身がうすい灰色です。首が長く、体格は少し細めで、ムチのような長い尻尾が特徴です。
吉田 「西川君、あの恐竜大きいね。」
西川 「うん。大きいね。」
中村 「ほぼ全身の化石が発見されているから、図鑑のイラストと違和感がないな。」
西川 「はい。確か、シノニムはセイスモサウルスですよね。」
中村 「ああ、そうだ。」
アンナ「シノニムって、なんですか?」
中村 「西川、説明してやれ。」
西川 「はい。シノニムというのは、異名のことです。
シノニムで有名なのは、ブロントサウルスです。」
アンナ「ブロントサウルス、聞いたことがあります。」
西川 「ブロントサウルスの名前は、アパトサウルスのシノニム(異名)なんです。
研究でブロントサウルスとアパトサウルスが同じ恐竜であることがわかり、
名前はアパトサウルスに集約され、ブロントサウルスの名前は使われなくなりました。
しかし、ブロントサウルスの名前を抹消すると、ブロントサウルスの名前で発表した論文や
書籍の検索が困難になり、活用されなくなります。
そこでシノニム(異名)を残せば、ブロントサウルスの研究結果も活用ができるわけです。
これは恐竜に限りません。シノニムは生物学では広く利用されています。」
アンナ「なるほど、勉強になります。」
吉田 「西川君、すごい。」
西川 「いやあ、それほどでも・・・」
中村 「アンナ、頭部に寄ってくれ。」
アンナ「はい。」
わたしは一番大きな個体の頭部に近づきました。」
中村 「情報どおりだ。細長い棒状の歯が並んでる。」
西川 「噛まずに、飲み込んでますね。」
アンナ「草や葉を噛まないんですか?」
西川 「はい。この恐竜には臼歯がありません。しかし胃の中に胃石があって、
それですり潰しています。」
アンナ「鳥と一緒ですね。」
吉田 「西川君、詳しいね。」
西川 「図鑑で読んだ知識だよ。」
中村 「アンナ、下から見上げてみたい。降ろしてくれ。」
アンナ「はい。」
わたしはMTVを着地させました。そして外にでます。光学迷彩はかけていません。
中村 「下から見ると、やっぱりでけえな。」
私たちは恐竜地上から撮影しています。
吉田 「アンナさん、写真撮って。」
アンナ「はい。」
わたしは、恐竜と一緒に吉田さんの写真を撮ります。
カシャ。
アンナ「今度は三人で撮りましょう。」
三人が集まったので、写真を撮ります。
カシャ。
恐竜の全身ががフレームに入りません。
アンナ「もう一枚撮ります。」
わたしは、恐竜がフレームに入るまで後退しました。
カシャ。
三人がかなり小さく写っています。仕方がありませんね。
わたしは三人のところに戻りました。
中村 「アンナ、次を案内してくれ。」
アンナ「はい。」
私たちは水分補給とトイレを済ませて、MTVに戻りました。
アンナ「それでは移動します・・・転移」
私たちは次の場所に移動しました。