表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/243

140 恐竜ツアー初日です。8(別視点)

* 別視点 大学生 side *


 ここは飛行島にあるコテージ2階の客室。

 西川と吉田は風呂が終わり、三人で話をしていた。


中村「恐竜の映像を確認するぞ。」

西川「はい」

吉田「はい」


中村「スマホの空き容量が少ない。まずいな。」

西川「僕、ノートPC持ってきました。データを移しましょう。」

中村「そうか、よかった。吉田もスマホのデータを移せ。」

吉田「はい。」

中村「データを全て移し終えたら、パソコンの画面で見るぞ。」

西川「はい。」


     *


中村「これでスマホのストレージに余裕ができた。

   よし、アンナが撮影した映像を再生してくれ。」

西川「はい。」


 再生。


西川「よく撮れてますね。」

中村「ああ、色々なアングルから撮影している。見ているだけで楽しいし、

   資料価値も高い。さすがだ。」


     *


 三人は、視聴、考察、反省会などを2時間ほど行い、終了した。

 吉田は1階の客室に向かった。


 三人は、それぞれベッドに入った。


*    *    *




* 別視点 西川 side *


 今日は楽しかった。充実した1日だった。高校生のときは、こんなにワクワクすることはなかった気がする。大学にもそれほど期待はしていなかった。

 恐竜同好会に入ってよかったよ。異世界に来ることが出来たし、本物の恐竜を間近で見ることもできた。


 僕は元々遺伝学や生命進化に興味があった。恐竜だけに関心がある訳ではなかった。

 大学に入学して少し経ったある日、恐竜同好会の中村会長に勧誘された。その時、会長の隣に吉田さんがいた。可愛いと思った。吉田さんがいるなら同好会に入ってもいいかな。そう思った。恐竜にも少しは興味あったし。

 同好会に入って、ちょっとだけガッカリした。吉田さんは無口だ。会話が続かない。間が持てない。でも中村会長の彼女ではないので安心した。会話が少なくても吉田さんと一緒にいるだけで楽しかった。

 吉田さんは、いわゆるコミュ障だ。僕は吉田さんとの会話の仕方を色々と変えてみた。そして彼女が返事をするだけで済むように会話を工夫した。少しずつ吉田さんの笑顔が増えた気がする。僕はうれしかった。


 吉田さんは、僕のことをどう思っているのかな。


 今日は恐竜に夢中であまり話せていない。明日は今日より余裕が持てると思う。積極的に吉田さんへ声をかけよう。明日が楽しみだ。


*    *    *




* 別視点 吉田 side *


 今日は楽しかった。まさか本当に異世界に来ることができるとは思っていなかった。お金を準備していて正解だった。それに恐竜同好会に入ってよかった。同好会に入っていなければ、異世界に来ることも恐竜を見ることもできなかった。

 今日、間近で見た恐竜は本当にすごかった。中村会長が恐竜を熱く語る気持ちが初めてわかった。

 私は元々恐竜に興味はなかった。大学に入学したのだって、親がうるさいから仕方なく受験しただけ。不合格になれば親は(あきら)めるだろうと思ったけど、受験は合格した。いま思えば合格してよかった。


 興味がない恐竜同好会に入ったきっかけは、中村会長の勧誘だった。入学式の直後に声をかけられた。会長は一方的に恐竜のことを熱く語った。私が無言でもお構いなし。家族以外で私に長時間話しかけた人は会長が初めてよね。高校生のときに、こんな人はいなかった。高校は本当に(つら)かった。授業は話を聞くだけだから楽だけど、休み時間はいやだった。いつもトイレの中にいた。

 高校に比べれば大学はとても楽しい。同好会では二人が普通に話しかけてくれる。授業以外に私の居場所がある。


実は私、おしゃべりなの。ただし脳内会話をしているだけ。あと脳内での独り言。声に出しての会話は勇気がいる。相手にどう思われるのか不安だし、何より怖い。同好会の二人は、私が無口でも全然気にしない。男子は素直だから会話は楽ね。女子は裏表(うらおもて)があったりするから、なんだか怖い。恐竜同好会が男子だけで本当によかった。

 最近、私も恐竜に興味が()いてきた。中村会長の影響ね。会長はティラノサウルスなどの肉食恐竜が好きだけど、私が好きなのは草食恐竜。特に好きなのは、ステゴサウルスとトリケラトプス。なんか全体の形が好き。

 中村会長の話を聞いていると勉強になる。でも、恐竜以外の会話もしたい。普通の男女がする、普通の会話。


 中村会長は、私のことどう思っているのかな。


 私の方から会長に声をかけるにはどうすればいいかな。

 私は客室を魔法ですこし明るくした。スマホを取り出して、質問や会話の内容を入力した。これを見ながら会話をすればいい。文章を読むように、スマホを見ながら中村会長と会話をしてみよう。

 普通の男女みたいな会話ができるかもしれない。明日が楽しみね。


*    *    *




* 別視点 中村 side *


 今日はマジで楽しかった。本物の恐竜だぜ。異世界半端ねえ。こんなに充実した日は初めてかもしれないな。恐竜オタクの変な先輩が卒業して、俺にも運が向いて来た。

 しかし異世界ツアーが本物だとは夢にも思わなかったぜ。

 ああ、こんなことなら集合時間を変更するんじゃなかった。異世界ツアーは詐欺(さぎ)だと思っていたからな。朝早く起きるのが面倒だった。だから集合時間を6時から10時に変更してもらった。俺はバカだった。ちくしょう、4時間も損をした。タイムマシンで朝に戻って呑気(のんき)に寝ているオレを(たた)き起こしたい。

 でも過ぎてしまったことを悔やんでも仕方がない。まだ2日ある。残りの2日間は思いっきり楽しむぞ。

 明日はどんな恐竜な会えるのか、楽しみだぜ。


*    *    *


 ツアー客の三人は、明日を期待しながら眠りについた。




 恐竜ツアー初日が終了した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ