120 代官2 (別視点)
* 別視点 代官ポール side *
ここはワウラの街、商業ギルド。
ポール「うまい。こんなにうまい菓子は初めて食べた。どこで買った?」
マギー「街にあるパン屋でございます。」
ポール「街のパン屋か・・・この菓子は高級品のはずだ。平民が買えるものではなかろう。」
ジーナ「平民でも買える値段で販売しております。」
ポール「信じられない。」
ジーナ「材料のチーズ、玉子、砂糖は、近くにあるアンナ村で作っております。」
ポール「アンナ村? どこにある村だ?」
ジーナ「この街の近くでございます。」
ポール「初めて聞く村の名前だ。」
ジーナ「私もアンナ村の存在を知ったのは割と最近のことです。
前の領主様はご存知なかったかもしれません。」
ポール「アンナ村について、詳しく聞きたい。」
私はアンナ村の説明を聞いた。
元はスラムであったこと、新しい開拓村であること、砂糖の製造をしていることなど。
*
ポール「冒険者のアンナがそのすべてに関わっているということか。」
ジーナ「はい。さようにございます。」
ポール「驚いた・・・この菓子のレシピはどうなっている?」
ジーナ「登録してございます。」
ポール「いくらだ?」
ジーナ「大銀貨5枚でございます。」
ポール「大金貨の間違いではないのか?」
ジーナ「いいえ。大銀貨5枚で間違いありません。」
ポール「いくらなんでも、安過ぎるであろう。」
ジーナ「私もそう思いますが、登録者のアンナさんがそれで良いと。」
ポール「なんということだ・・・砂糖、そうだ、砂糖の製法はどうなっている?」
ジーナ「砂糖の製法は登録してございます。」
ポール「いくらだ。」
ジーナ「アンナさんが登録した特許やレシピは、全て大銀貨5枚でざいます。」
ポール「そんなバカな。砂糖の製法だけでも国が莫大な金額で買い取ったはず、
そして莫大な利益になったはずだ。信じられない。」
ジーナ「アンナさんは、お金儲けに興味がないようです。」
ポール「はあ・・・」(溜め息)
*
ポール「商業ギルドに行列ができるのは、当然だな。」
ジーナ「はい。」
ポール「アンナが登録した特許とレシピを今すぐ用意できるか?」
ジーナ「はい。用意してございます。」
ジーナ「マギー、現物も。」
マギー「はい。」
用意がいい。助かる。
これは料理のレシピと特許書類。これが特許の現物か。見た事のないものばかりだ。
アンナスプーンは形状が面白い。
スライサーは野菜の皮をむく道具。
ホイッパーは泡立てる調理道具。
ゼンセンは面白い遊戯盤だ。
ポール「この遊戯盤は面白い。陛下がお喜びになるだろう。」
ポール「ん? これはなんだ?」
ジーナ「計算をする道具、そろばんでございます。」
ポール「これで計算ができるのか?」
ジーナ「さようにございます。」
ポール「使い方を教えてくれ。」
ジーナ「マギー。」
マギー「はい。」
私は、そろばんの計算方法を聞いた。
掛け算と割り算の方法は理解できなかったが、足し算と引き算の方法は理解できた。
ポール「素晴らしい。画期的な発明だ。」
ジーナ「はい。そろばんのおかげでギルドの会計業務が大幅に改善されました。」
*
ポール「次は透明窓について聞きたい。」
ジーナ「はい。これが透明窓の現物、キララでございます。」
ポール「これか。板ガラスによく似ている。」
私は、キララの普及や発掘事業について説明を聞いた。
今後、発掘事業は私の指示で行い、販売事業は商業ギルドが行うようになるだろう。
*
ポール「領主不在の間、良くやってくれた。感謝する。」
ポール「そうだ。最後にうまい料理屋を教えてくれないか。」
マギー「はい。ダノン食堂、それと宿屋ですが猫耳亭です。
この2件はアンナさんが直接指導した店です。
料理屋以外で美味しい店はルパンのパン屋とニックの肉屋です。
この2件もアンナさんが指導した店です。」
ポール「肉屋?」
マギー「はい。ニックさんが作るハムとソーセージは評判がいいです。」
ポール「わかった。」
*
私は商業ギルドを後にした。
料理も気になるが、その前に新しい開拓村に向かうことにする。場所は商業ギルドに聞いた。
次に向かうのはアンナ村だ。
* * *
ここがアンナ村か。
女性に声をかけてみるか。
ポール「ここはアンナ村で間違いないか。」
女性 「はい。そうです。」
ポール「私は代官のポール・カベスカだ。村長に会いたい。」
女性 「この村に村長はいません。代表者ならいますが。」
ポール「そうか。代表者と話がしたい。」
女性 「はい。案内します。」
ポール「たのむ。」
私は女性について行った。
* * *
コンコンコン。
女性 「お代官様をお連れしました。」
ポール「ご苦労。」
ジミー「お代官様?」
ポール「私は代官のポール・カベスカだ。」
ジミー「ジミーと申します。一応この村の代表です。」
アキノ「アキノと申します。ワウラの街で商会を営んでおります。」
ポール「食事中であったか。すまんな。」
ジミー「お召し上がりになりますか?」
ポール「金は払う。もらおう。」
私はシチューとパンをもらった。
ジミー「どうぞ。」
ポール「いただく。」
ぱくっ。
ポール「うまい・・・」




