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DRAGON CHILD LEN -Jewel of Youth ep2-  作者: すこみ
第九話 ホワイトメイル
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4 それでも変わらぬ仲間たち

 オムは一度戸塚中央駅前に出て、駐輪場に停めておいたスティードに跨った。

 ジェットヘルを被ってスモークシールドを降ろす。

 輝度が落ちた夜の街を眺めながら考える。


 中学時代に初めてこの街を訪れたのは地元の高校生を相手に乱闘した時だった。

 右も左もわからない乱戦。

 物陰に隠れながら彼は一人の男を見ていた。

 迫りくる敵を次々とぶっ飛ばしていく友人、新九郎の活躍を。


 あれから三年。

 今ではオムがこの街の裏の顔役になった。

 だけど、本当はあの頃と何も変わっていない。

 臆病で、優柔不断で、流されるままに進むだけ。


 あの頃からずっとオムは一人だった。

 仲間はいても、他者に対して心の壁が消えることはなかった。

 それは周りの悪意を感じてしまう能力を持って生まれた自分の宿命のようなものであった。


 シンクや第四班の仲間たちが自分に対して悪意を持っていないことはわかっている。

 だが、怖いのだ。

 心地よい場所が消えてしまうことが。

 些細なきっかけで友に悪意を向けられてしまうことが。


 今回の裏切りを知ったら、間違いなく彼らはオムを恨むだろう。

 オムは仲間の信頼よりも自分の都合を選んだのだ。

 自業自得と言えばそれまでである。


「フン……」


 オムは自嘲の笑みを浮かべ、愛機のエンジンに火をつけた。

 途端、どこからともなく爆音が響いてくる。

 オムは気にせず駅前のロータリーから出ようとした。

 その前方を爆音を響かせた集団が先廻りするように行く手を塞ぐ。


「リーダー、どこに行くんすか?」

「お前たち……」


 オムを半円状に取り囲むのはそれぞれバイクに跨ったアミティエ第四班の仲間である。

 表の世界で各チームの頭を張っている有力者が五人。

 ついでに何故かミカもいる。


「最近は集会もまともにやらないってのに、こんなところで何をやってたんですか?」


 リュウがもう一度同じ質問を繰り返した。

 明らかに不審そうな五対の目がオムを見ている。

 唯一、キーチのリアシートに座るミカだけは普段の彼女らしくなく、挙動不審な感じで視線をあちこちに泳がせていた。


「あ、あのっ。あたしオムちゃんの姿を見かけて、それでキーくんに連絡取ったんだけど、そしたらリュウが勝手にみんなを集めちゃって……」

「いや、構わない」


 どうせすぐにバレることだ。

 行動の成否の前か後かの違いに過ぎない。

 ならば仲間である彼らから審判を受けるのもいいだろう。


「俺はアミティエを裏切った」


 包み隠すことなく正直に話す。

 その結果として妨害を受けても構わない。

 この場は無理にでも通してもらうが、すべてが終わった後の落し前は彼らの手でつけてもらおう。


「そうかよ」


 リュウがバイクを降りて前に出る。

 ミカが止めようとするのをわざと視線で制した。

 一発くらいなら殴られてやってもいいとも思ったのだが……


「で、今からあんたはフレンズ社に一人で殴り込みをかけるのか?」


 ヤスが問いかける。


「ああ」


 厳密には殴り込みではないが、言い逃れるつもりはないのであえて肯定する。

 リュウは背後の仲間たちを振り向いて心なしか高揚した声で告げた。


「聞いたか! 今度の敵は半端じゃねーぞ!」

「おおぅ!」


 それに応えてミカを除く他の四人も気勢を上げた。


「つーわけだリーダー、俺たちも連れてってくれや」

「な、何を言っている……」


 まったく予想外の展開にオムはうろたえた。


「これは班としての作戦行動ではないぞ。俺はアミティエを……お前たちを裏切ったんだぞ」

「知らねーよ、んなことは。俺たちの頭はアンタだ。アンタの敵なら俺たちにとっても敵だろうが」

「そうそう。理由なんかどうだっていいんだ」

「俺たちはあの日、オムさんの全力を見たトキに決めたんだよ。一生ついて行くってな」

「お前たち……」

「ま、流石に他の連中まで巻き込むわけにはいかねーよな。アンタの反乱が成功して、軌道に乗ったら誘ってやるってことでどうだ?」


 彼らからは微塵の悪意も感じられない。

 若さゆえの暴走と言えばそれは否定できないだろう。

 オムの役目は隠密行動ゆえ戦力が増えれば良いというわけでもない。

 反乱が失敗する可能性ことを考えれば、彼らを思い留まらせるべきだということもわかっている。


「俺に……命を預けてくれるのか?」


 なのに、そんな言葉が口から零れてしまった。

 リュウは唇の端を吊り上げて力強い笑みを見せた。

 バイクに跨った連中が思いきりエンジンを空ぶかしする。


「あったりめえだろ!」


 思わず目頭が熱くなった。

 こんな自分にも仲間がいるのだ。

 詳しい事情を説明しなくても、肩を並べて共に危険に立ち向かってくれる仲間が。


 望まずとも他人の心の中を見てしまう能力を持って生まれた時から、こんな風に信頼しあえる仲間を得ることはないと思っていた。


「そうか、ならば……」


 ……ありがとう。

 喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、オムはチームリーダーとして号令をかける。


「アミティエ第四班、これよりフレンズ本社に乗り込む! お前たち、いくぞ!」

「おうよ!」

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