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DRAGON CHILD LEN -Jewel of Youth ep2-  作者: すこみ
第八話 ポシビリテ
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8 第三班定例会議

 一方的に通話を切られたツヨシは、その原因となったバイク集団を憎々しげな目で睨んだ。

 もちろん因縁をつけられては面倒なのですぐに目を逸らしたが。


「つーか、何だよこの人数……」


 三十人近い単車乗りたちが駅前を県道方向へと移動している。

 こんな時間から集団で周囲に威圧感を与えるなど、今どき珍しい集団だった。


 この辺りは昔から不良少年グループが多い。

 こんなのも以前はもっとよく見られた光景である。

 それでも普通、活発になるのはもっと遅い時間のはずだ。

 アミティエ第四班が裏でまとめあげてからは、このような集団もあまり見なくなった。


 ツヨシの通う高校は自宅から三駅隣の大船駅の近くにある。

 表立って変な奴らに絡まれたことは一度もない。


 アミティエの存在を知る少年はごく一部だし、第四班に所属する不良は近隣でも知れた者ばかりだ。

 班長の命令に逆らって集団で暴走するような奴がいるとは思えない。


 気になるのは、この単車集団はみな湘南ナンバーなのである。

 大船駅は鎌倉市と戸塚市の市境にある駅だがどちらも久良岐ナンバーである。

 地元で余所者に騒がれたらこの辺りの少年グループが黙っていないだろう。

 まさか湘南からわざわざケンカ売りにきたのか?


 いや、それなら単なる時代錯誤の笑い話だ。

 表ではなく裏、神奈川の西側をテリトリーにおく能力者組織がある。

 そいつらが攻めてきたんだとしたら……


「なんて、んなわけないか」


 それこそ第四班の人間が黙っていない。

 JOY使いやSHIP能力者が集団で動けば真っ先に反応する。

 市内に入られる前に必ず掣肘されるはずだ。


 担当地域の周りを海とアミティエの別班に囲まれている第三班には縁がないことだが、他の班にとっては接する地域の別の能力者組織との関係を良好に保つことも任務の一つである。


 つまり、この集団が神奈川西部の能力者組織なら放っておかれることはあり得ない。

 そんなことを考えているうちにバイク集団は視界から消えて爆音も遠ざかっていった。


 バス停のベンチに腰掛けながら、さて誰に遅刻の伝言を頼むべきかと、携帯端末の中の電話帳を眺めるツヨシであった。




   ※


「それでは今日の決定事項を繰り返します。備品面では電子レンジの買い替え、それと作戦行動時の高所監視員を増員するよう班長に提案する……ということでいいですか?」


 アテナはか細い声でゆっくりと今日の会議の結論をまとめる。

 和室に集まった二十数名の少年少女たちからは「異議なーし」との言葉が返ってきた。


「ありがとうございます。これで今週の会議を終了します」


 締めの言葉を発すると、あちこちで一息つく声が聞こえた。

 真面目な会議はこれで終わってお喋りタイムが始まる。

 アテナは畳の上で足を崩してため息を吐いた。


 いつものことだが、実に中身のない会議であった。

 今日決まったことはそのまま班長のアオイに報告するが、彼女が反対すれば終わりである。

 そもそも備品の買い替えなど、気づいた人間が勝手にVIPカードを使って買ってくればいいのだ。


 作戦行動時の配置もその時によって変化するのが当たり前。

 前回の活動でアタッカーのシンクが一時的に保護対象のSHIP能力者を見失ったことから(結局すぐに再発見したが)とりあえず改善提案を出してみましたよという程度である。


 この会議も最近は班長不在のことが多い。

 フレンズ社やラバース本社にも出向しているアオイは相当に忙しい様子である。

 彼女に文句を言うつもりはないが、自分には仲間を纏めるだけの器はないとアテナは常々思っていた。


 アタッカーを務めるシンクの方がむしろ適任だと思うのだが、彼は絶対にまとめ役なんてやりたがらない。

 そのシンクも今日は第四班の班長に会いに行くという理由で欠席している。


 会議の出席率はアオイとシンクを除けば比較的良好だった。

 みな真面目に働いているというより、友だちに会いに来るクラブ活動気分なのだ。

 アテナ自身も含めて本心から正義のため命がけで戦っているという者はほとんどいないだろう。


 そう言えば珍しいことにマナも欠席している。

 ツヨシからはさっき遅刻すると連絡を受けたが……


「アテナさん、お疲れ様」


 メンバーの女の子がお盆に載せた羊羹とお茶を運んできた。


「ありがとう」


 アテナはお礼を言ってそれを受け取ると、そのまま彼女と会話を始めた。

 班の活動に関してではなく昨日のテレビの話題などのたわいもない雑談である。


 しばし歓談に浸っていると、場の空気をかき乱すような爆音が響いてきた。


「なによもう。うるさいなあ」


 バイクの集団である。

 時計を見るとまだ六時を少し過ぎた頃。

 こんな時間から時代遅れの暴走族が通っているのだろうか?


 鎌倉街道を走っているならすぐに通り過ぎてしまうだろうと思ったが、音は消えるどころかますます大きくなる。


 バイクの集団は明らかに第三班の集会所に続く坂を上って来ていた。

 この先はいくつか住宅があるだけで別の道には通じていない。

 集団は建屋の前で止まって盛大な空吹かしを行った。


「うるせーよ!」


 耳障りな轟音に業を煮やしたメンバーのひとりが叫んだ。

 暴走族を不快には思っても怖がる者はほとんどいない。

 班長やアタッカーが不在とはいえ能力者の集まりなのだ。

 十数人程度の不良なら瞬時に無力化することもできる。


「はーい、誰かいませんかーっ!」


 野太い声と同時にドアを蹴る音が聞こえた。

 何物かは知らないが、本当にうちらに用事があるらしい。

 血気盛んな何人かの男子が立ちあがるがアテナはそれを制止した。


「待ってください。話を聞いてみましょう」


 そう言って宥めると同時に、ドアが破壊される大きな音が響いた。

 別に鍵はかかっていないのだから用事があるなら普通に入ってくればいい。

 修理の手配やアオイからの叱責を考えるとアテナも流石に怒りが込み上げてきた。


 和室の障子が蹴破られた。

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