↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンチャイルドLEN -Jewel of Youth ep2-  作者: すこみ
第二話 アミティエ
16/279

7 密入国者

 シンク以外のメンバーはあらかじめ作戦を聞いていたらしい。

 いくつかの小さなグループに分かれてそれぞれの活動を開始した。

 シンクはマナと、それから護衛を務めるという人物と一緒に三人で行動することになった。


「あのっ、よ、よろしくお願いしますですっ」

「はあ……」

「精一杯がんばりますので、どうか守られてあげてくださいっ」


 護衛というにはあまりに頼りなさげな人物。

 見るからに中学生になったばかりの年齢の女の子だった。

 どちらかというとこっちが守ってあげたくなるようなタイプである。


「シャルロットちゃんは≪単身結界《マイノリティガード》≫の能力者なんだよ。近くにいる対象一人にバリアを張るんだ。銃弾も弾いちゃうんだよ」

「その代わり私自身は無防備になっちゃいますし、使い終わった後はとっても疲れるんですけど、命に代えてもあなたを守りますから安心してくださいっ」

「いや、おかまいなく」


 使命感に燃えているようなので言いづらいが、どうぞご自愛くださいと言ってやりたい。


「シャルロットちゃん偉い。今日は忘れずにちゃんとジョイストーン持ってきたんだね」

「わ、忘れたのは前々回だけだもん。あの時はアオイさんにすっごい怒られたし、二度とやらないように≪再び手にする奇跡(リゲインロスト)≫を貸してもらったりしちゃったけど」

「前回はそっちを持ってくるのを忘れちゃったんだよねー」

「もうっ」


 傍で見ている分には実に微笑ましいやり取りである。

 ただ、一歩間違えれば命を落とす状況を考えたら、のんき過ぎないか?

 というか銃弾も防ぐ能力ということは、実際に撃たれた経験があるのだろうか……


 それからあまり関係ないが、どこから見ても日本人なのに何故シャルロットなのだろう。

 彼女もシンクと同様に名前を決める時にはゲームと勘違いしていたのだろうか。


「で、俺たちは何をすればいいんですか?」

「えっとね。あの辺のコンテナの上に待機して、不審なことを見つけたら報告するの」

「ものすごくいてもいなくても関係なさそうな役割ですね」

「そんなことないよ! 仲間の危機を事前に察知する重要な任務だよ!」


 残念だが、これでは活躍の場面もなさそうだ。

 能力者による捕り物とはいえ安全第一ということだろう。

 不法入国者を相手に白兵戦を挑んで一網打尽なんて展開はなさそうだ。

 ひまわり先輩がどんな作戦を考えているのかは知らないが、今回はゆっくり見学させてもらおう。


 マナに手を掴まれて一緒に瞬間移動でコンテナの上に移動する。

 手を離すとすぐにマナはひとりで消えてしまった。


 この能力、一度に同時ワープができるのは本人ともう一人までが限界のようである。

 マナがシャルロットを迎えに行ってる間、シンクは数秒間コンテナ上に一人ぼっちになった。


「俺、こんなところで何やってんだろ……」


 港のオレンジの光を眺めながら思わず自問してしまった。

 マナはすぐにシャルロットを連れて戻って来る。

 そのまましばらく待機状態が続いた。




   ※


「『ごりら』」

「ら……『らっこ』」


 最初こそ真面目に身を伏せて待機していたが、すぐに飽きたらしく、マナとシャルロットは小声でしりとりを始めている。


 さすがにこんな場所でじっと待たされては飽きもするだろう。

 周りの様子を見渡していたシンクも今は両手をまくらにして寝転がっていた。


「『コレラ』」

「ら……また『ら』?」

「はやく」

「ら……ら……『らんばだ』」

「何それ」

「えっと、どこかの国の踊りだったような気がする」

「自分が知らない言葉はだめー」

「えーっ。ずるいよマナちゃん。自分だって『バサラ』とか『アイシンカクラ』とかよくわからない言葉ばっかり使ってるじゃない。それにさっきから『ら』ばっかりしか言ってない気がするよ!」

「なあ、マナ先輩」


 シンクは年下相手に(見た目だけならむしろマナの方がシャルロットよりも下に見えるが)非情な戦法で攻めているマナに声をかけた。


「なに?」

「これ……殺人許可証って、なにかの冗談ですよね?」


 視線は合わせず、手の中の銀色のカードを見ながら尋ねる。


「冗談じゃないよ。間違いなく国が発行してる本物だよ」


 否定されることを期待していたがマナはあっさりと肯定してしまう。


「マナ先輩も……これを持ってることを理由に人を殺したことがあるんですか?」

「ん、ないよ。今のところは」


 顔を上げてマナの顔を見る。

 彼女は真面目な表情でシンクを見ていた。


「相手は犯罪者だし、どんな武器を持ってるかもわからない。いざという時に躊躇しないためにも、持っていることに意味があるんだよ。もちろん、こんなもの使わないで済むよう最善の努力はしてるけどね」

「なるほど。一種の覚悟の証明みたいなものなんですね」

「……って偉そうに言ったけど、私は敵と直接戦えるような能力は使わせてもらえないんだけどね」


 最悪の答えが返ってこなかったことにシンクは少しだけ安堵した。


 同時に嫌な疑問もわいてくる。

 まともに敵と戦えるような能力を持つ者は?

 こんなものを使わなければいけない状況になってしまったら?

 たとえば、ひまわり先輩とかは……


 シンクが疑問を口にする前に異変は起こった。


「船が近づいて来たぞ!」


 コンテナの下で待機していたメンバーが叫んだ。

 どうやら密航者の乗っている船が接岸しようとしているらしい。

 しかし、到着場所までわかっているのなら何故海上で捕まえないのだろう?


 海上でチラホラと光が瞬くのが見えた。

 続いてミシンのような断続的な破裂音が聞こえてくる。

 それが銃声であると理解した時、背筋が急に冷えた気がした。


 海上保安庁の巡視艇だ。

 二隻掛かりで一隻の小型貨物船を追い詰めている。


「あっちの小さな船に密入国者が乗ってるんですか」

「たぶん、そうだと思うよ」


 どこの国からやってきたのかは知らないが、あんな小船で海を渡れるわけがない。

 おそらくはもっと大きな本船が近くにいるのだろう。


「あっ、ぶつかる!」


 追い詰められて蛇行した揚句、貨物船は横腹を着ける形で埠頭に接岸した。

 積み荷の木箱が割れて中から無数の人間が降りてきた。


 正面から迎え撃つのはたった一人の能力者。

 ひまわり先輩だ。


 密入国者の数は軽く見ても五十人は超えている。

 いくらなんでも、あの数を止められるわけがない。

 が……しかし。


 急に周囲が寒くなった。

 直後、ひまわり先輩の前方に局地的な吹雪が発生する。

 渦巻く風雪の中で密入国者たちはよく聞き取れない外国の言葉を叫んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。