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DRAGON CHILD LEN -Jewel of Youth ep2-  作者: すこみ
第二話 アミティエ
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5 本牧集合

「本牧?」

「そう、三班は全員集合だから絶対にきてね!」


 アミティエ第三班の集会から数日後。

 あれから何の音沙汰もない日々が続いていたが、今日帰宅しようとした所でふいにマナに声を掛けられた。


「今夜ですか……」


 土曜日の放課後である。

 いまから都内までバイク屋巡りをしに行こうと思っていたのだが。


「場所がわからなかったら待ち合わせして一緒に行こう!」


 組織に所属してVIPカードを借りている身としては素直に従うしかない。

 それに、実を言うと少し楽しみでもあった。

 何と言っても集会以外では初めての活動なのだ。


「新九郎、最近中座先輩と仲いいよね」


 隣で靴を履き替えていた青山紗雪がなぜかジト目で睨んでくる。


「なんだよ。青山には関係ないだろ」

「はいはい、そうですねー。私はお邪魔ですもんねー」


 突っかかるような物言いだ。

 というかHRが終わってすぐ飛び出したのに何でもう隣にいるんだよ。

 別に一緒に帰る約束をしているわけでもないし、お前は俺の保護者かよと言ったい。


「文句があるならお前もひまわり先輩と仲良くすればいいだろ」

「うっ」


 それは禁句だったのか、青山の顔が青ざめる。

 そう言えば迫られて殴って逃げたって聞いたけど……

 本当に何事もなかったのだろうか?

 もしかしたらこの幼馴染はすでに、シンクが知っている以前の彼女とはまったく違う世界の人間になってしまったのではないだろうか。


「それじゃ、八時に平沼駅のLR線改札前で!」


 それだけ告げるとマナは走って校舎の中に戻って行った。

 何やら具合が悪そうに顔を手で覆っている青山紗雪を横目に、シンクはとりあえずバイク雑誌でも買いに行こうかなと考えながら帰路についた。




   ※


 平沼駅からLR桜大線で大船方面へ。

 PF横浜特別区や関内地区の街並みを横目で眺めつつ帰宅ラッシュに押しつぶされること五駅。

 普段乗ってる神中線の朝ラッシュよりはマシだが、マナが潰されないようドア側で必死に腕を突っ張って隙間を作り続けるのはさすがにしんどかった。


 いや、自分が勝手にやっていることなのだけど。

 見た目小学生の女の子を守るのは当然だろ?


「守ってくれてありがとう」


 腕の隙間から上目づかいでそんな風に言われるとちょっとドキッとしてしまう。

 いや、別に好きというわけではないのだけど。

 しかし可愛いなマナ先輩。

 いや、俺はロリコンじゃないけど。


 シンクが心の中で言い訳をしていると、電車は山手の住宅街を抜けて臨海工業地帯に入った。

 はじき出されるようにあまり人のいないホームへ降り立つ。

 ここから本牧線に乗り換えてさらに二駅だ。


 本牧線は二十分に一本しか来ない単線四両編成の車両である。

 車内はさっきまでのラッシュが嘘のようにガラガラだった。

 列車はひたすら高速道路傍の工業地帯わきを走り、二駅でもう終点になる。

 小ぢんまりとした駅舎から降りると周りは市街地から大きく外れた埠頭のすぐ傍だった。


「今日は前回いなかった人もいるからね。ちゃんと挨拶しなきゃだめだよ」


 駅前には明らかに工業地帯にふさわしくないようなチャライ格好の若者がちらほら見かけられる。

 不良っぽい男や全身黒づくめのゴシックファッションの女なんかもいる。

 ああいうのは全部アミティエの人間だろう。


 大型トラックが行き交う中、彼らは携帯端末をいじったり音楽を聞いたりと思い思いに過ごしている。

 互いが互いを無視し合っている雰囲気は先日の集会とはまるで違っていた。

 こちらから気軽に話しかけづらい雰囲気である。


 いったいこれからここで何が始まるんだ?


「あの、マナ先輩……」


 シンクが近くにいるマナに話しかけようとした時だった。

 耳障りなノイズが近くのスピーカーから響いてきた。


『――たちは――です――ラバースは、あなた方のへ――』


 聞き覚えのある声だ。

 もちろん知り合いというわけではない。

 ここ最近、よくテレビで耳にしている女の声である。

 反ラバースを掲げる地下組織による電波ジャックだった。


 行き過ぎた経済の一極集中。

 国家の枠を超えて膨らみ続ける利益重視の風潮。

 歴史と伝統を破壊しながらラバースは世界を我が物にしようとしている。


 そんなことを徒然と並べ立てる放送テロ。

 ニュースでも取り上げられず、テレビもラジオも無視しているが、実際に耳にする機会は少なくない。


「この人たちも私たちの敵だよ」

「え?」


 マナが頭上のスピーカーを見上げながら言う。

 気がつけば、それぞれ別々のことをしていたアミティエの連中も同じように放送に聞き入っていた。


「ジョイストーンやSHIP能力者を手に入れて悪さをしようとしているの。何度か仕事中に邪魔されたこともあるんだけど、その正体はまだよくわかってないんだ」

「マジかよ……」


 テロ組織なんて自分とは全く関係のない存在だと思っていたが、とんだ繋がりがあったものだ。

 ひまわり先輩の言っていた『ラバースとは関係のない敵組織』のひとつだろうか。


 VIPカードという甘いエサで釣られたことをシンクは今更ながら少し後悔した。

 マナはともかく、ルシフェルは意図的に隠していたとしか思えない。


 やがて放送はブツッと音を立てて強制的に遮断された。

 ほとんど何を言っているかわからなかったのはテレビと一緒である。

 静けさの戻った港湾部で、マナはいつも通りのにこやかな表情をシンクに向けた。


「まあ、私たちがテロの人たちと直接戦うようなことにはならないよ。個人に危険が及ばないためのアミティエだし、アオイちゃんたち班長クラスの人たちがいれば安心だしね」

「そう言えばひまわり先輩はジョイストーンを持ってないって言ってたんですけど、あれってどういうことですか? SHIP能力者とかとは違うんですか?」

「それはね、アオイちゃんはインプラント済みだからだよ」


 インプラント?

 虫歯治療?


「JOYを使うためにはジョイストーンが必要なんだけど、前にも言った通りに年齢制限があるんだ」

「別名が青春期の宝石(ジュエルオブユース)でしたっけ。若いうちしか能力は使えないって」

「うん。個人差はあるけど、十九歳くらいになるとJOYが使えなくなっちゃうの」

「期間限定の超能力ってわけですね」

「けど適齢期を過ぎた後でもJOYを使えるようにする方法があって、それが『JOYインプラント』なんだ。ジョイストーンを体に取り込んでJOYを自分自身の力にしちゃうの」

「なんだか怖そうな話ですね。改造人間ですか」

「別に手術とかじゃないんだよ。専門の薬品にジョイストーンを溶かして飲むだけ。副作用もないし」


 そうなればもう道具を使った能力使用ではない。

 文字通りの超能力者になるというわけだ。

 

「ただし一度身についた能力はどうやっても消せないから、やると決めたら慎重にならなきゃいけないんだけどね。もちろん会社から……フレンズ社じゃなくてラバース本社から許可された信頼ある人しかインプラントは認められないよ。具体的には将来は社員になって一生会社に忠誠を誓えってことなんだけど」

「世界的大企業への就職が条件なんて、交換条件どころか至れり尽くせりだと思いますけど」


 そうか、ひまわり先輩はすでに就職先まで決まっているんだな。

 しかも将来の安泰間違いなしの超一流企業グループだ。


 シンクはまだ働きたいと思うような年齢ではないが、少し羨ましいと思った。

 そうしているうちにさらに他のアミティエメンバーも増えてくる。

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