ただの外出ですか?いいえ、買い出しです。
ここは、魔法使いと魔女がはびこる、混沌と偽物の平和の国、チューベローズ。
そしてその国に、一人のおかしな、不思議な魔女が居ました。
それが私、カルミアです。
そんな私は大きくあくびをしたのち、まだまだこれから眩しくなるであろう朝日を見つめました。
そんな私、カルミアはまだ二十歳になったばかりの魔女です。
さて、今日はどうしたものでしょうか。
こう見えても一人暮らしで小さな店を経営していて、その店の店主として、自分の暮らしぐらいはどうにかできてはいるのです。
しかし、今日はそんなお店もお休み。
洗濯も洗い物も昨日のうちに終わらせてしまいました。
こんな日は隣町にでもでかけるのが良いです。
私のお店は、魔法道具と呼ばれる、魔法の使えない人間が、魔法を使って日常的に楽をするための、魔法が一瞬だけ使えるグッズを売っているのですが、それにだって素材は必要です。
近所で集められなくもないですが、隣町の森にでもでかけましょう。
この国では、森は私有地でなければ何を取ってもいいシステムです。
木でも数本刈り取って、それを均一に小さく切り刻んで、爪楊枝ほどの大きさにして、それに魔法の源となっている、魔力…いわば、私の気持ちを込めれば、あっという間に商品の完成です。
魔力でできたマッチやライターのような木の棒ができます。
火の付いてほしい所へ思い切り投げるだけで発火します。
隣町の森も私有地ではない上、近所の森より広大な敷地です。
もしかしたら、他にも商品の元となる植物…そう、花などが生えているかもしれません。
私はそう思い、瞬間移動の魔法を使いました。
そして、瞬きを一つした瞬間、目の前の景色は私の部屋から、隣町の入り口の門になりました。
町ごとに結界…つまりは見えない魔法の壁ができていて、瞬間移動などの魔法は効かないようにできています。
防犯設備といったところです。
ですが、門からは出入りができます。
門番の人に申請をすれば一瞬です。
おっと、いつもの門番さんではないようです。
いつもの人はいかつい、頑固そうなおじさんですが、今日は若くて新人っぽい男の人でした。
『魔女様ですね、お名前と念の為、町に入る理由を答えてください』
私を見るなり、彼はそう話しかけてきました。
訳有って、少々いらだちましたが、まぁいいでしょう。
私は素直に答えました。
『私の名前はカルミアです
魔法道具店を経営しているので、魔法道具の素材集めに森まで行こうと思ってこの町に来ました』
彼は私の言葉を聞くと、その内容を紙にメモしました。
そして、
『分かりました、どうぞ』
と、門を開けました。
すると私は飛行の魔法を使おうとし、ほうきにまたがりました。
すると、彼が私に話しかけてきました。
『さっきまで魔女様かと思っていたのですが…
もしかして、魔法使いですか?』
『いいえ、私は魔女です』
『そうですか、失礼いたしました
飛行の魔法をほうきを使って行う魔女様は珍しいので…
思わず魔法使いと勘違いしてしまいました』
『いえ、お気になさらず』
私はやはりかと、この国の酷さに顔をしかめたいのをこらえながら、森へ向かって飛び立つのでした…