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十三品目 目立ち魚(中編)

 目立ち魚漁が行われる。二日目も豊漁だった。

 ランドルは最後尾の牛車を離れてこっそり後ろから尾行する役に任命された。


(昨日は最後尾の三番牛車が襲われとる。また、襲われるとしたら最後尾が怪しい)

 浜を出た牛車は目立ち魚を積んで、ゆっくりとブレイブ村までの道を進んで行く。


 浜を出て一時間が経過する。すると、空から何か青い物体が飛んで来た。

 大翼竜の一種だと思った。大翼竜は鶴のように首が長く、大きな嘴と二本の角を持っていた。


(大翼竜や、大翼竜が出たで。あかん、肉食の大翼竜やと御者が危ない) 

 ランドルの武器は借りてきた銛のみ。敵は翼の端から端までが十二mの大翼竜。


 手にしている銛は、大翼竜とは戦うに貧弱な武器だった。

 また、御者を尾行するために距離を大きく空けていた。


 助けに行くには距離があり過ぎた。

 それでも、御者を助けるためにランドルは走った。


 青い大翼竜が御者の前に降り立つ。

「あかん、間に合わんかった」と悔やんだ、その時だった。


 大翼竜の角が光って閃光が放たれた。ランドルは咄嗟に伏せた。

 閃光を放った大翼竜は御者を襲わず。道を外れて歩き出す。


 すると、どうしたことか、御者が大王牛を牽いて、ふらふらと大翼竜の後を従いて行く。


(何や? どうしたんや? 大翼竜は御者を喰わんのか。それに、なして御者は大翼竜の後をついていくんや?)


 不思議で仕方なかった。だが、御者が安全そうなので、しばらく見守ろうと決めた。

 道を外れて二十分ほど歩く。御者は牛車から大王牛を外して大王牛に乗った。


 大王牛はのんびりと、歩き出す。後には魚が山と積まれた牛車が残った。

 大翼竜は美味そうに、目立ち魚を食べた。


 目立ち魚を全て食べつくしたのか、大翼竜は空に飛び立った。

 牛車に駆け寄ると牛車の生簀(いけす)は空。御者を探すと牛に揺られてぼーっとしていた。


「おい、しっかりせい」と声を懸けても反応はない。

 しかたなく、無理やり大王牛から引き吊り降ろして、頬を叩く。


 二分ほどして、御者は目を覚ました。

 御者は辺りを見回して、ぼんやりとした顔で訊く。


「あれ、ランドルさん。どうしてここに?」

「大翼竜の閃光を浴びて、お前はおかしいうなったんやで」


「大翼竜? 何のことですか? 私は魚を村まで運んでいただけです」

 御者はここで牛が牛車から離れており、牛車がない事実に気が付き慌てた。


 ランドルは見た光景を説明した。

 御者は不安そうな顔をした。


「これ、魚の代金は弁償になるんでしょうか?」

「そこは船長たちの判断やから何とも言えん。せやけど、何が起きたかは説明したる」


 浜に戻ってホークに事情を説明する。

「状況はわかった」とホークは難しい顔して他の船長たちと会議に臨む。


 小一時間でホークは戻って来た。ホークは困った顔をしていた。

「ランドルさん。怪しい閃光を放つ大翼竜なんて過去に見て記憶があるか?」


「わいの長いハンター生活の中でも、ないのう。もしかしたら、新種の大翼竜なのかもしれん」

 ホークはお願いしてきた。


「新種ならランドルさんが届けて、ハンター・ギルドの協力を仰げないだろうか?」


(新種をハンター・ギルドに届けると、実績になる。報奨金も出る。でも、どちらも遠慮したいのう)


「新種なら、ハンター・ギルドとしても捕獲したいから、援助は受けられる。でも、わいが報告するんか?」


 ホークは、ほとほと困った顔でお願いする。

「頼むよ。このまま、目立ち魚をごっそり持って行かれたら、収入が減っちまう」


「わかった。ハンター・ギルドに相談に行ってくる」

 ハンター・ギルドに行ってブリトニーがいたので相談する。


「ブリトニーはん、新種の登録をお願いしたい」

 ブリトニーは、目をぱちくりさせて驚いた。


「新種ですか? でも、ランドルさんって今は目立ち魚漁ですよね?」


「そうやで。ブレイブ村からジャスティン湾の間に、青い大翼竜が出る。鶴のように首が長く、大きな嘴がある。角は二本ある。そんでもって、角から閃光を放つんや」


 ブリトニーは明るい顔で承諾した。

「私も聞いた覚えのない形状と能力ですね。待ってください。調べますね」


 ランドルは時間が掛かると思ったので一風呂浴びて、サワーを飲んで待つ。

 二杯目を頼もうかと思ったところで、ブリトニーに呼ばれた。


 ブリトニーは、わずかに興奮していた。

「ランドルさん。大発見かもしれません。相手は幻の大翼竜と呼ばれる。ピプノティルスかもしれません」


「何や? 新種やないの?」


「絶滅種となっています。なので、もし、これが生きていたら、発見です。是非とも捕獲してください。これが捕獲に成功した場合の懸賞金です」


 ブリトニーは捕獲が成功した時の金額を提示した。


(かなりの額やなあ。この額があれば、持って行かれた目立ち魚の代金くらいになる。若いハンターも大勢おるから、金は必要やろう。なら、やってみるか)


「それと、捕獲に行くなら、気を付けてください。ピプノティルスは催眠効果のある閃光を放つといいます」


「ははあん。それで、ハンスはいもしないドドン・レックスを見た気にさせられたんやな」

「おそらく、そうです」


 ランドルは(いしゆみ)を武器庫から取り出す。

 武具屋で睡眠弾を買った。餌に混ぜるタイプの睡眠薬と麻酔薬も買った。


 さらに、催眠状態の解除に有効かどうかわからないが、眠気を覚ますハッスル・ナッツも買っておく。


 少々高いが、飛竜便で浜に戻った。

 ホークが心配顔で寄って来た。


「どうだった? 支援は受けられそうか?」


「支援はない。ただ、大翼竜はピプノティルスと呼ばれていて、絶滅種の扱いになっとる。せやから、捕獲したら多額の懸賞金が出ると教えられた」


 ホークは頭に手をやり、考え込んだ。

「懸賞金か。俺は漁師であって、ハンターじゃないんだよな」


「大丈夫やろう。ピプノティルスは目立ち魚を食べる。目立ち魚の中に睡眠薬を混ぜて、眠ったところを、麻酔薬を使って捕獲する」


 ホークが難しい顔して尋ねる。

「準備は、どうする? ハンターを何人か捕獲に向かわせるか?」


「明日は、また魚を犠牲にするが、平常通りの漁や。ただし、弩を使い慣れたハンターを八人ばかり村に戻して、装備を取ってこさせる。決戦は明後日や」


 ホークは難しい顔をして(うつむ)いたが、決断した。

「わかった。俺たちも魚を盗られてばかりでは、恰好がつかないからな。ピプノティルスに目にもの見せてやろう」

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