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映画シナリオ「葵の心」  作者: 多谷昇太
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志那乃登場

〇私鉄電車内

腰掛けている向一。車内はそれほど混んではいない。東京と違って見知らぬ客同士で会話を始める光景に驚く向一。駅に停車してにぎやかな男女の一団が乗り込んで来る。


男A(25位)「ほら見てみい、空いとるで。これで正解や。元旦なんぞにお参りしとったら大変やったぞ。(連れ合いの女に)そっち座れ」

男B(25位)「お前もそっちや。晴れ着着た女同士で並んで見せえや。べべ皺にせんようにな」

女B(23位)「わかっとるがな。自分こそ一張羅の羽織と袴、しわにすんなや」

女A(23位)「(女Bに)もっと右寄って。こない空いとるのになんで詰めなあかんのや。(男Bに)なにが並べや。うちら雛人形とちゃうで……(はす向かいに座る向一に目をやって)あら?」

女B「なんね、どないしたん?」

女A「(向一を指差して、小声で)ちょっと、見てみぃ、あれ」

女B「あらー、ほんまや。いい男やなあ…」

男B「なにを人指差してんのや。誰がいい男や」

女B「うちちょっと、これと(男Bと)替えてくるわ」

男B「アホぬかせ。醜男で悪かったなあ」

男A「(軽笑)しかしほんまや。綺麗な兄ちゃんやなあ…お一人でお参りやろか。なんで連れおらへんのやろ」

男B、女A、女B「(声を揃えて)さあ……」


向一、赤面して目をつぶる。

 

〇奈良葬儀所内

読経する僧侶の声。参列者たちの姿。律子の肩を抱く和泉。

律子(45)「(嗚咽)順ちゃん……」

和泉(20)「母ちゃん、しっかり」

二人にお悔やみを云いながら焼香に向かう参列者たち。祭壇に掲げられた故・向井順一(17)の遺影。


〇奈良法隆寺境内

参道を行き交う晴れ着姿の人々。境内の端の方で目立たないようにカメラを手にする向一。参拝に向かう振り袖姿の娘3人連れにカメラを向ける。その内の1人に気づかれてあわててカメラをさげ、知らん顔をする向一。娘3人談笑しながら向一を指差すなどして前を通り過ぎる。うち1人の娘が振り返りざま袖を振って膝を曲げ、向一にポーズを取ってみせる。赤面する向一を笑いながら娘3人行ってしまう。うなだれる向一の前に志那乃が立つ。


志那乃(28)「あの、すんまへん。写真…撮ってくれまへんか?」


向一不審がるが、白い羽織姿の志那乃の美しさに息を呑む。


志那乃「(軽笑)うち、ひとりでお参りに来ましてん。せっかくの晴れ着姿がもったいのうて……ご迷惑でなかったら、写真撮ってくれまへんか?」

向一「は、はい!」


向一の前で次々とポーズを決める志那乃。そのストップモーションと都度のシャッター音。

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