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小話詰め合わせ

Rainy Day

作者: 彼方

 今日も雨。

 いつまでも続く日々は、一つとして同じではないのに、私には変わらずに見える。

「今日も雨だね」

 お気に入りだった赤い傘を両手で差し、柄を肩に当ててくるりと回す。

 滴を散らして、赤い傘は回る。

 色が少ないこの場所ではよく目立つ。

 まるで赤い花みたい。

 私が散らした滴か、はたまた降りしきる雨か、彼の濡れた頬をそっと撫でた。

「嬉しくないの?」

 小首を傾げて問えば、彼は小難しい顔をした後、曖昧に笑う。

 それが答えにしては、随分と要領を得ない。

 まあ、私だって分からないのに、彼に分かるわけもないか。

「明日は晴れるかしら」

 もう幾日も、幾年も晴れた空を見ていない。

 雲一つない、突き抜けるような青空をもう一度見たい。

 でもそれは、叶わぬ願い。

 だって、

「私は雨の日にしか、存在出来ないんだもの」

 彼の表情が歪む。

 嫌だ、泣いているの?

「いつまで経っても泣き虫ね。だから、放っておけないのよ」

 頬を伝う涙をそっと拭う。

 雨足が弱くなる。

 ああ、そろそろ時間だわ。

「次に会う時は、笑顔でね」

 くるり、傘を回す。

 弾けるように飛んだ滴が落ちる前に、私は空に消えていった。

 建ち並ぶ墓標の前、雨に濡れた彼が風邪を引かないか、そんな気がかりを残して。

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