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無断召喚 巫女と姫様の奮闘記  作者: 紅吉
柄乃崎奈都芭の帰郷と旅立ち
7/24

異界→現世→異世界

「行方不明者の捜索って・・・そんなの警察にでも任せればいいでしょう?」


「法も権力も届かない場所に連れ去られたのでは彼等に頼る訳にはいかないでしょ?」


「それは…つまり」


 事ここに至って、自分にこんな事を言って来る理由。

 つまりは、自分と同じように領域を渡ったという事だろうか?


「異界に渡ったという事?」


「違ますよ。それは貴方に…いえ、貴方たちと言ったほうがいいですね――」


 暁は暢気に母に勧められたプリンを食べているエンディーのほうに目線をやる。


「――貴方たち以外には不可能です。彼等が連れ去られたのは此処とは別の世界。つまりは異世界に渡ったようです」


「異世界?そんのまであるの。もはやなんでもありね。でも、異界じゃなければ私には関係ないと思うけど?」


「木崎涼さん。天野美海さん。このお二方は貴方のご友人だそうですね」


 瞬間、奈津芭の瞳が蒼色に輝き、暁を睨み付ける。


「二人に手を出したら許さない」


「逸らないでください。私達に彼女たちを害する意思はありません。しかし、そのお二方が失踪事件の被害者たとしたら貴方はどうします?」


「母さん!?」


 説明を求め母を見ると、美奈芭は小さくため息を吐く。


「事実よ。貴方が消えたその日に涼ちゃんと美海ちゃんは行方不明になっている。てっきり貴方と一緒にいると思っていたのだけど…」


「それじゃあ、あの子達は私に巻き込まれて異界に飛ばされた可能性もあるって事?」


「いいえ、それはありません」


「どうして断言できるの!!」


 語気が荒くなる奈都芭。もしそうであるのなら彼女たちの生存は絶望的である。

 動揺する奈都芭をなだめるように、エンディーは奈都芭の肩に手を置く。


「少し、落ち着きなよ。その可能性は絶対にない。君が領域を渡ったのは君自身の力によるものだ。他の人間を巻き込むというのはあり得ない。君は知っている筈だ」


 そう。それはあり得ないのだ。奈都芭自身、その事はよく分かっていた筈だが、親友二人が行方不明だと聞かされて自身が思っている以上に動揺している。

 一度大きく深呼吸し意識して、自らを落ち着けるように努めた。


「詳しく聞かせてください」


 奈都芭は暁に向き直り、説明を求めた。


「七月二十三日。この日から三日間に失踪事件は起こりました。調べうる限り被害者の数は124人。いえ、最初の被害者と目されていた貴方が帰ってきたのだから123人ですね。この123人は同じ異相世界への転移が確認されています」


「ちょっと待ってください。行き先が分かっているのなら私に頼らず自分たちで捜索を行うという手もあったのでは?」


「それは無理です。世界の境界を渡るというのは我々にとっては最大の禁忌ですから」


「禁忌って…それはそちらの都合でしょう?」


「摂理ですよ。我々では生きて境界を抜ける所か、この世界を覆う結界を突破する事も叶わない。だからこそ。貴方が異界に渡ったタイミングを狙ったのでしょう?貴方が異界に渡った時、世界を覆う結界に大穴が開いた。それを利用して無理矢理転移させた」


「私が異界に渡ったせいで、二人が攫われたって事?」


「そうとまでは言わないですが、一因である事は否定しません」


「分かった。貴方の提案に乗る事にする」


「それは重畳」


「――でも私の目的はあくまで二人を助ける事。他の121人の事はどうなるか分からないよ」


「結構です。我々の目的は貴方に異世界に渡ってもらう事ですからね」


「…行方不明者の捜索じゃなかったの」


「おっと、口を滑らせましたね。でも、貴方ならこんな事をした連中を放っておかないでしょ?…と、姫様が申しておりました」


「よくお分かりのようで。って事で母さん。帰ってきたばかりだけど、すぐに出て行かないといけないみたい」


「アンタが決めたのなら、私は何も言わないわ。此奴らが不埒な事を考えているようならぶちのめしとくから安心していきなさい」


 結局、言い出したら聞かない子だと、美奈芭には分かっている。止めても無駄なら憂い無く送り出すのがせめて自分に出来る事。

 こんな猪突猛進な所まで自分に似なくてもよかったのにとは思うのだが…


「…ならば、急いだほうがいいと思いますよ。奈都芭」


「グランシアちゃん?」


「この地域一帯、外界から走査されてます。どうやら、性懲りも無く誰かを連れ去るつもりなのでしょう」


「だったら好都合。攫われてやりましょう」


「ならば、術式に割り込みます」


「お願い」


 グランシアの周囲にいくつものコンソールが浮かび上がる。彼女は淀みないそれを操作していく。


「どうする?僕も手伝おうか?」


「アホ。アンタはさっさと帰りなさい。アンタが出張ったらあの子達も黙ってないでしょ。そうなると収集できなくなるのが目に見えてる」


 此奴を巻き込んだとなると、エリスちゃんやシオンあたりが黙っていないだろう。


「分かった。まぁ、やり過ぎないようにね。君は手加減を知らないから。だけど気をつけた方がいい。此方のタイミングを把握されてたって事は・・・」


「まぁ、そういう事だろうね…天部が絡んでるって事でしょ?」


「だろうね。だとしたら何が目的か検討はつく。君も同じだろ」


「まぁ、行ってみて考えるよ。私の友達をこんなゴタゴタに巻き込んだことを後悔させてからね。グランシアちゃんお願い」


「解析完了。術式介入に成功しました。座標特定。いつでもいけます」


「まっ、それじゃあ一丁やりますか」



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