和解
眠りから覚めると見慣れた天井が広がっていた。
「ここは…寝室?私は…」
私は何故ここにいるのだろうか?そして徐々に思い出していく。
イレギュラーの勇者召喚。現れた少女。魔炎に包まれて…
「お目覚めのようね」
不意に投げかけられた声にエミリアはビクリと小さく震えた。そこには自分伏せっている元凶である奈都芭が立っていた。
「奈都芭…様?」
バツの悪そうな表情を浮かべる彼女に印象的だった刺々しさはなかった。
「悪かったわね。試すような真似をして。私も色々と気が立っててね。八つ当たりみたいなことをしちゃった。あの子達にも怒られたわ」
奈都芭は部屋の隅に目をやる。そこには心配そうに此方を見るミランダと、いつも通りすまし顔のミーシャが立っていた。
「けど、そちらにも非があるというのは覚えておいてね」
「分かっています。そこを取り繕うつもりはありません」
勇者召喚とは名ばかりの誘拐行為を世界を上げて行っている我らが一方的に悪いのだ。
憤る彼女を窘める言葉を我らは持っていない。
「オーケー。それじゃあ目が覚めたのなら準備があるんでしょ?」
「準備?」
言われて何のことか一瞬わからなかったが、ハッと思い出す。
「何寝惚けてるのよ。教会ってのと会談があるんでしょ?私に準備させておいて自分はサボタージュなんてのは許さないわよ」
「今何時?」
秘書官のミーシャに時間を確認する。
「朝の九時ですよ。会談は正午からです。そろそろ準備をして下さい」
「嘘!会談の段取りは?」
「全てやっておきました。後はあなたの用意だけです」
流石は私の頼れる右腕である。ぐうの音も出ないとはこの事である。
「って奈都芭様。会談に出ていただけるんですか?」
「協力するわ。私の目的を果たす為にもね」
「ああ、あと私の事は呼び捨でいいよ。その代わり私もエミリアと呼ばせてもらうね」
「はい」
彼女の目的。此方に連れてこられた友人を見つける事。位に思っていた自分の認識がどこまでも甘かったと後々に思い知る事になる。