寝られないときは羊を数えろって言うけど逆に目が冴えるくね?(続)
名前の関係上、俺の出番は始まってから3分でやってきた。
「天海 誠です。好きなことは剣術とお笑い番組が好きです。よろしくお願いします」
無難な自己紹介を終え(これ以上の失態を避けるため)席に着こうとしたとき、
「やっと俺の番か!俺は火野 進!好きなことは誰かとおしゃべりすること!
強いていうなら相手は女子がいいです!よろしく!!」
始まってからたいして時間も経ってないだろ、といつもなら心の中でツッコミ俺だが、自分の後に自己紹介した人物の名前を聞いて俺は首がねじきれんばかりの勢いで振り向いた。
「よっ!気づくのおせーよっ」
俺に向かって軽く右手を挙げながらかなり整った顔立ちに満面の笑みを浮かべる男。
「す、進!?なんでお前がここに!?」
「なんでって、俺もこの学園に合格したからに決まってんじゃん。
クラスが一緒なのは俺と誠が友情の赤い糸で結ばれてるからじゃね?」
こんな気持ち悪いことを平気で言えるこの男は昔からの幼なじみで、俺のことを知りながらも毛嫌いせずに親友として接してくれる人物だ。
(昔から運動神経も良かったけど、まさか実力でこの学園に入れる程の才能の持ち主だったとは…ちょっと見直したかも)
「てか誠~、いいのかー?いきなりみんなの前で失態をさらしてしまったから自己紹介は無難に終わらしてこれ以上の失態をさらさない作戦は」
「おい!勝手に俺の心の中読むな!しかも今ので全部バレちまったじゃねーか!…はっ!」
俺が怒っているのにもかかわらずニヤニヤしている進を見て何かを感じ取った俺はゆっくりと廊下側の席に首を回す。
そこからは俺と進以外の目線がしっかりと俺に注がれていた。
ゆっくりと前を向き、腰を下ろしながら
(やっちまったー!!うぉーっ、神よ!俺に指を鳴らすだけで時間を巻き戻せるス◯ックを授けてくれ!!)
心の叫びは神には届かず、しばらくの沈黙のあと進の発言により自己紹介の続きがスタートした。
~~
自己紹介が終わり、寝ていたのを近くの生徒(確か田辺だか田中だったはず)に起こされた先生が不機嫌そうな顔で次の指示を出した。
「あー、自己紹介も終わったみたいだしさっさと能力測定も終わらすぞー。俺も早く帰りたいんでな」
(いちいち私情が入りすぎなんだよなー。この先生。主にマイナスの)
「よし、じゃあさっき自己紹介した順番で魔力とオリジンを測定していくから前に出てこい。ほら、早く」
そうせかされた最初の生徒から順に、教壇に置かれた二つの血圧を図る機械のようなものに腕を入れる。
「魔力90 オリジン95と。よし、次」
俺の前の人が終わったので俺も腕を入れようとすると、
「お、そうだ。天海、お前のオリジンは後で個別に図るから今は魔力の方だけでいいからな。ホームルームが終わったら職員室に来てくれ」
「分かりました」
言われたとおりに魔力を図る機械に腕を通したあと、オリジンを図る機械を素通りし席に戻った。
席に戻ると同時に、周りから大きな歓声が聞こえたので視線を教壇に移すと進がオリジンの測定を行っているところだった。
「魔力140 オリジン320か。魔力はともかく、オリジンの量は上級貴族レベルだな」
「ありがとうございます!」
歓声に包まれながら戻ってきた進は俺と目が合うと笑顔でピースサインを送ってきた。
「進ってすごかったんだなー。ちょっと見直したたよ」
「ふっふっふ。まぁ俺もだてに2年間シャ◯ンディ諸島で修行してたわけじゃねーってことよ」
「お前と会うのは2ヶ月ぶりくらいだし、お前は乗り物よいが激しいから海賊船で大秘宝を探す旅なんてできねーだろ」
「くぅ~っ。ナイスなツッコミ!他のやつではこうはいかねーからな~」
「そりゃどーも」
いつも通りのコントを繰り広げていると進の時より大きな歓声があがったので目線を教壇に戻す。
「魔力300 オリジン480って。おいおい、そこらの自衛隊のやつよりたけーじゃねーか。さすが黒宮家の跡取りか」
「…どうも」
黒宮と呼ばれた男はその名前の通り、少し長めの黒い髪から覗かせる薄い緑色の瞳は冷たい目をしていた。