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スノードロップ  作者: クナト
4/15

何気ない幸せの後の不幸は5割り増し(終)

「あのー…」


話の内容に頭が追いついてない俺を見て学園長は慌てて言葉をつなぐ。


「あ!いや、ごめん!説明が逆になってしまったね。とりあえず君にはこれを受け取ってほしい。」


そう言いながら学園長は机からある物を取り出し、俺に渡してきた。

渡されたものは腕につける銀色のブレスレットのような物で、ブレスレットには6つの赤い玉が埋め込まれている。


「これは、なんなんです?」


率直な疑問を学園長にぶつける俺。


「ブレスレットの周りに赤い玉がついてるでしょ?これはね、120年前に落ちてきた隕石なんだ。」


「へぇー。隕石ですか。…って、えぇぇぇぇえ!」


俺の悲鳴にも似た驚きの叫びが部屋に響いた。


「なんでそんなものがここに!てか、俺にそんな貴重な物…!なんでですか!」


止まらない質問マシンガンを浴びせる俺。学園長は、「そりゃそうなるよね。うんうん。」という顔でうなずいている。


「まぁ、話を最後まで聞いてほしいな。120年前に落ちてきた隕石はほとんどの衝撃なく海に落ちていったのは知っているよね?でもね、衝撃がなかったにもかかわらず回収された隕石はコナゴナに砕けていたんだよ。不思議でしょ?」


本当に不思議そうな顔で首をかしげる学園長。かわいい。


「で、その破片がいくつかこの学園の研究室に保管されていてね。そこの研究員達に無理を言ってこれを作ってもらったんだ。隕石の中にはオリジンが宿っていてね、それを加工してこの中にあるオリジンを使えるようにしたんだ。」


ここまでの学園長の説明で俺の中である期待が生まれる。それは昔から憧れていたもの。俺がなにと引き換えにしても欲しかったもの。


「もしかして、それを使えば俺も…」


「うん!オリジンが使えるようになる!と、言ってもこの6つの玉にある分だけどね?それでも一般の成人男性3人分は入っているよ。それから、一度消費したオリジンは1つの玉につき4時間経たないと回復しない。」


「つまり全部使いきるとそこから丸1日オリジンが使えなくなるってことですか」


「そういうこと!生まれつきオリジンを持っている人は、量の多さもも回復する時間も早いんだけどね。そこばかりはどうにもならなかった。ごめんね?」


「いやいや!全く使えない俺が使えるようになるなんて夢みたいです!でもこんな貴重な物、本当に俺がもらってもいいんですか?」


「そうだねぇ。開発や研究費もろもろを込みすると一般で売れば5億くらいで売れるだろうねぇ」


さらっと口にした言葉に俺は無言でブレスレットを腕から外す。


「いや!違う違う!君に売りつけようなんて思っていないよ?!言ったでしょ?私は君の力になるためにこれを作ったんだ。今さら君からお金なんて取らないよ~」


そう言いながら慌てて俺の腕にブレスレットをつけ直してくれる学園長。かわいい。


「でも、俺の親父と友人ってだけでなんでここまでしてくれるんですか?その理由だとちょっと納得できないって言うか…。好意はとても嬉しいんですけど」


「んー。そうだよねぇ。…実はね!私は昔君のお父さんに助けてもらったことがあってね。そのおかげで今の私があると言っても過言じゃないんだ。いつかその恩返しをしたいと思っていたんだ。これがせめてもの恩返しになれば嬉しいな」


学園長は、納得してくれたかな?といった顔で俺を見つめている。


「…充分ですよ。恩返しなんて…。むしろ俺がしなくちゃいけないくらいです。本当にありがとうございます」


本当に、心の底からそう思った。


「そう言ってくれると嬉しいよ。さ!明日からは忙しくなるよ!なんたって君は周りの子達と比べてオリジンの使い方を全く知らないからね。そのブレスレットの詳しい使い方も含めて明日からは担任の先生にお願いしてあるから安心してね?何か困ったことがあったらいつでも私に相談してくれてかまわないから」


「はい!ありがとうございます」


その後、入学の手続きを終えた俺は家に帰って今日の出来事を家族に話した。

親父は俺の話が終わったあと、すぐに俺にこう言った。


「そうか…。花音がお前のために…。誠、良かったな。それとすまなかった」


親父の突然の謝罪に困惑した俺を横目に親父は話を続ける。


「俺は今までお前になにもしてやれなかった。せめて剣術だけはと思いできる限りの教えをしたつもりだが、オリジンがないというだけで世間から全うな評価を受けさせることもできず、つらい思いばかりさせてしまった。本当にすまなかった」


そう言うと親父は俺に頭を下げたまま泣いていた。

親父が泣くところを見たのは母親が死んだ時以来だった。親父も俺が傷つくたびに同じだけ傷ついていたんだと初めて気づいた。

そんな親父を横で見ていた弟も涙をこぼしながら、


「兄ちゃん、良かったね…。本当に良かった」


と涙声で言ってくれた。


(俺は今までこの二人に支えてもらっていたんだな)


「親父、拓也、ありがとう。俺、頑張るから」


その後、自分の部屋に戻った俺は今日の事を思い出しながらゆっくり眠りについた。

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