何気ない幸せの後の不幸は5割り増し
~1ヶ月前~
無事に都内の私立高校に合格した俺は受験勉強というしがらみから解放され、有意義な休日を満喫してると弟が部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「兄ちゃん!電話が来てるよ!」
「電話がかかってきたくらいで何そんなに慌ててんだよ。進からなら俺は今自由を探す旅に出てるから不在って言っといて。めんどくせぇから。」
「違うよ!月辰学園の先生から…。」
「え?」
(月辰学園ってオリジナー育成の超有名校じゃん。なんでそんなところから電話なんて)
自分に電話がきた意味を模索しながら階段を降り、結局その答えを見つけられないまま受話器を取った。
「お電話代わりました。天海 誠です。」
「あ、初めまして!私、月辰学園の学園長の轟と申します。いきなりで申し訳ないのですが、天海 誠さん、あなたの月辰高校特別推薦入学が決定しましたのでそのご報告をさせていただきます。」
「……」
「…天海さん?」
「………」
「もしもーし?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「うわっ!いきなりなんですか!」
「いやいやいや!それはこっちのセリフですよ!なんで受験もしていない、しかもよりによって月辰学園の合格が決定するんですか!それに俺はもう他の高校に合格していますし…!」
「あ、それに関してはこちらで手続きは済ませているのであなたの合格は取り消されていますよ?こちらの入学の手続きは誠さんに直接していただきたいので、そうですねぇ…。学校が始まる前に来ていただくのは申し訳ないので入学式が終わった後に職員室に来てください。それでは、また入学式の日に!」
ガチャッ、ツーツー。
「……」
「兄ちゃん、どうだった?」
「……。いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
~そして現在~
入学式を終えた俺は職員室に向かった。ドアをノックし、
「失礼します。一年の天海 誠です。」
「あ、やっと来たね!顔を合わすのは初めてだね。私が月辰学園の学園長の轟です。よろしくね。」
そう言いながら近づいてくる女性は、八頭身はあるスタイルの持ち主で艶のある黒髪は腰まで伸びていて、短く整えている前髪の下には世界三大美女でも泣きながら逃げ出す程のレベル。
(俺、この学校で頑張れる気がする。てか頑張る)
俺が謎の意思を固めている間に学園長は俺の目の前までやって来た。
「そんなに見つめられると照れるな~。」
学園長はそう言いながら照れくさそうにはにかんでいた。
「あ、すいません。人間って本当に綺麗なものを見たときって声が出なくなるんですね。初めまして、天海誠です。電話で言っていた手続きをするために来ました。」
「ふふふ。君は口がうまいね。わざわざ申し訳ない!さっそくだけど手続きをしてもらいたんだけど…。天海くん、色々突然だったからたくさん質問があると思うから学園長室に来てもらってもいいかな?って言っても隣の部屋なんだけどね。」
そう言いながら学園長が指差す部屋の立札には学園長室と達筆な字で書かれている。
「分かりました!」