彼と私の出会い
ガラガラガラ・・・。
馬車のガラガラという音はずっと喧しくて仕方がない。
だが、そんな文句を言う権利は、ない。
五年前まではあった。そう、五年前までは・・・。
ガクッと肩が落ちる。ため息も出た。
今、私は「運ばれ」ている。
馬車はゆっくり、ゆっくりと私「達」を「運んで」いる。
バシッ!とムチの音が聞こえた。
ゆっくり過ぎたのか、馬使いがムチを入れたようだ。
馬の悲鳴が馬車の中を轟く。
馬車は先頭に荷物と乗る人をわける扉があり、さらに若干広いのだが、馬の悲鳴は馬車の中の端まで届いている。
何人か煩くて耳を塞いでいる。私もその一人に入る。だが、手錠のせいで片方の耳しか防げない。
私「達」の「主人」はせっかちなせいか、馬使いに急がせるよういったのだろう。それにしては煩すぎる。どれだけ強くムチをうったのだろう。
ぐいっと引っ張るように馬車が急加速する。
なんとなくだがさっきの二倍の速さは出ていると思う。
私達は「奴隷」。身分が最低の人間未満の「モノ」だ。
しばらくして、馬車急に止まり、馬車の中の「モノ」は強く動いた。
――もうついてしまったのか。
私「達」はそう確信し、絶望した。ため息をつくものもいれば、静かに涙を流すものもいた。
・・・しかし、違ったようだ。
どうやら、目の前に人がいるようだ。
主人が危ないと判断し、止まったのだろう。
シッシ、という声が聞こえた。どうやらそのものは動かないつもりだろう。
馬鹿なものもいたもんだ――そう思った瞬間、肉を切り裂いたような音が二回聞こえた後に、馬が走って行く音が聞こえた。そしてこんな声が聞こえた。
「こいつは俺が頂いたぁ!!!」
バンッと先頭にある扉を破壊した。
ふいにそちらを見ると私と同じくらいの少年が立っているではないか。
少年は私達を指差し、こう叫んだ。
「お前ら全員、俺の奴隷だあ!!」と。