・ 命
「あら・・・天使様?にしてはサンタさんの格好なのね。」
ぼんやりとベッドの上で年若い女がやんわりと呟く。
「見えるの?」
少し驚いたように、セシリィは呟く。
彼女は20代後半である。
最早見えない方が当たり前の年齢であった。
「先週・・・死神も見えたから・・・私きっと死期が近いのよ。
それにしても天使も死神も美形さんがおおいのね。
特別サービスなのかしら?」
本気なのか、ふざけているのか。
ぽやや~んとしていて、つかみ所がない。
「そう・・・私は天使にしてサンタ一族のセシリィよ。
貴女の願いを・・・苦しまない死・・・は私には無理だから。
幸せな夢を・・・。」
「夢はもう見飽きたわ・・・・。
モルヒネも効かないくらい、私酷いから・・・。
ああ、困らせてしまったわね。
良いのよ、願いは・・・・。」
すぅっと女性は意識を無くす。
「サンタ族までここに来たのか。」
寒気のする声に振り返る。
そこには、身震いするほどの黒髪の美形が佇んでいた。
「エィクス・・・貴男の担当だったの・・・。」
ロィとは別の、もう一人の幼なじみ、死神族の青年である。
「ああ・・・厄介な仕事だ。
お前も来た・・・と言うことは。
共同作業になるな。」
ボソリ、ボソリと確信だけを呟く。
「そうね・・・私はやすらかな、は出来るけれど、死をもたらす事は無理だもの。」
「俺も死を司れても、やすらかかどうかは本人次第だからな・・・。」
煙の様に白くけぶる吐息。
それに捕らわれそうになる気持ちを、セシリィは抑えた。
「エィクス・・・手を・・・。」
「ああ・・・。」
両の手の平を繋げる。
ただそれだけの作業が、真逆の属性故。
体中、ビリビリと跳ね飛んでしまいそうだった。
2人が術を重なり合わせる姿を、何処か悲しげに眺め、ロィは目を逸らせた。
「有り難う・・・死神さん・・・天使さん・・・。」
そう最後に呟いて、嬉しそうに彼女・・・ミシィアーヌは息を引き取った。合わせた手を離し、詠唱を止める。
「良かった・・・安らかな死に顔だわ・・・。」
優しくミシィアーヌの、亡骸の髪を撫でる。
「ああ・・・。」
感慨も無さげに小さく相槌を打つ。
感情を動かしたら続けられない。
そんな顔をしていた。
「じゃあ又ね。」
顔を上げ、笑顔をエィクスに向ける。
軽く目を見張って、柔らかにエィクスは微笑仕返した。
少なからず、ショックを受けるかと思っていたらしい。
だが、セシリィはそれ程弱くは無かったようである。
微笑みは感嘆でも有った。
軽く大きな鎌を持つ手では無い左手で、手を振る。
「残りも頑張れよ。」
とも、
「早く終わらせろ?」
とも言わず。
ただ、見送る。
まるで、セシリィがきちんと仕事を完了させる事が、彼にとっては揺るがない事の様に余計な言葉は錘がなかった。
「ちっ、一々気障野郎だぜ・・・。」
というロィの小さなぼやきは、空に消えて聞こえてこない




