・ 落ちた袋
青年は疲れ切って、公園のベンチにへたり込んでいた。
何処に持ち込んでも入賞所か佳作も出来ない。
そんな有様に、凹んでいたのだ。
簡単に一山当てるつもりだった自分の甘さに、嫌気がさしていた。
彼は小説家志望の、浪人生だった。
大学も合格せず、夢ばかり追って・・・・。
と、田舎の両親に何度言われ続けてきただろうか?
親のレールが嫌で、始めた事だった。
何がいけないのであろう?
「はぁ・・・。」
小さくため息をつく。
チリィン♪
少女は微かな鈴の音に、首を傾げ振り向いた。
ドサッ!
まるで鈴が呼んだように、それは青年の小脇から落ちた。
しかし、青年は疲れていて、気が付かずにそのまま歩いて行ってしまった。
人混みに紛れて、行き先がサッパリ分からない。
困惑しながら、とりあえず落ちた物を確認した。
「重い・・・おっきな袋だなぁ・・・。パパとかの持ってる袋に、似てるかも。」
何も考えず封を開ける。
その中には、童話が書かれていた。
少女はそこが町中で有るにも関わらず。
座り込んで、黙々と眺めて読み尽くしてしまった。
「うわっ・・・こんなに暗くなっちゃった・・・。
俺って本当馬鹿だよなぁ・・・。
大切な原稿無くすなんて。
最悪の馬鹿だよ。」
少し休憩して、原稿を紛失したことに気付いて、慌てて道を戻ってきたのだ。
「・・・え?」
ざわざわと人垣が出来ている。何かを囲む様に人が流れているのだ。
「なんだろう?」
ゆっくりと近づいていくと、少女が何かを黙々と読んでいた。
「おれの・・・原稿?」
その声に、少女は又チリン♪という鈴の音が重なるように聞こえて顔を上げた。
「あっ、さっきのお兄ちゃん!!これお兄ちゃんのでしょ?
面白いね。」
ニコニコと屈託のない笑顔で原稿を手渡す。
「面・・・白い?マジか?」
少なからず、動揺した声で呟く。
「うん、この森の中で、モンスターがお友達になっちゃうあたりが可愛いよ。
後ね・・・。」
と、少女は延々と感想を述べる。
くたびれたような青年は、何処か消えて。
キラキラと輝く瞳で、優しく少女に他の話しも聞かせた。
「アタシ、マーユお兄ちゃんの名前は?」
「俺は・・・ジィーアだよ。」
「ジィーアお兄ちゃんのファン一号になっても良い?」
「ああ、もちろんさ。」
2人は仲の良い兄弟のように寄り添って、時間になるまでこんこんと語り合ったのだった。
「夢を続けるきっかけ・・・又曖昧なプレゼントだなぁ。」
「この手のプレゼントは、結構デリケートなのよ。
失敗したら無意味な話だもの。」
「それも・・・そうか。」
珍しく2人の意見が揃う。
それが気恥ずかしいのか嫌なのか、2人は視線をそらせた。
「さて・・・次行くぜ。」
「あっ・・・うん。」
鈴の音を鳴らし純粋な者の心に響かせたのである。