・ 花束
小さな子供が、花束を持ってくるくると回る。
はしゃいで跳ね回っているのだ。
季節はずれの花束は、花の好きな母親が持たせてくれた物だった。
だが、その日は仕事で珍しく母が居ない日だった。
少年はチョット寂しげに、はしゃぐのを止めて。
雪の降り始めたベランダの外を眺めた。
「かぁさんまだかなぁ・・・・。」
うとうと・・・。
暖炉の炎が心地よくて、少年はうとうと夢見心地でぼんやりとしていた。
カタン!
小さな物音に気付いてふと目を開ける。
「誰?」
見上げれば、綺麗な女の人が、サンタのような格好で暖炉から落ちてきた。
「いたた・・・相変わらず、この距離は頂けないわ。お尻打っちゃった。」
痛そうにお尻をさする。
不思議なことに、暖炉の炎は彼女の身体に害をもよをさず。
避けるように離れ、暖炉から彼女が出た途端、煌々と燃え上がった。
「え?眠りの魔法とけちゃった?っていうか見えてる?」
彼女の言葉に頷く。
「お姉さん・・・だぁれ?」
「ボク?ボクはサンタクロース一族のセシリィよ。
君はジェーク君ね♪」
「えっ?お姉さんサンタさんなの?サンタさんっておじいさんじゃないの??」
驚く無邪気な声に、にこっと微笑を浮かべ。
バチンとウィンクした。
真っ赤になったジェークを眺めながら、ニコニコと話しを続ける。
「サンタ一族の一番偉い方以外はみんなぴっちぴちよ。笑」
「へぇ~ピッチピチなんだ??」
分かったような分からないような話に首を傾げる。
「あはは、さて、じゃあお姉さんお仕事しちゃうね。」
パチンと指を鳴らす。
甘い濃厚な花の香り・・・・。
すると部屋中に、白い薔薇が敷き詰められていた。
「ぼ・・・僕のお願いだ!!すごーい♪あっ!棘も取れてる有り難うお姉さ・・・お姉さん??」
花に見とれているうちに、セシリィは居なくなっていた。
「お姉さん有り難うねー!!」
ありったけの声で叫ぶと、少し遅れてきた母親の困惑顔と重なる。
「お花好きのお母さんに、部屋たっぷりの花束なんて・・・気障な餓鬼だねぇ。」
「うっさいわよ、いいじゃない可愛くて。
それにロマンチックぅ♪」
「恋人ならまだしもお母さんにだろ?どうかなぁ。」
「いちいち煩いわね。次行くわよ次!!」
そう言って、セシリィはロィを急かした。