ぷろろーぐ
サンタ見習いのセシリィの冒険?
太陽の青年が、大きな影法師を編み上げるように。
冬の空を、朱から闇色へと染め上げた絨毯を敷き詰める。
愛らしい月の乙女は、それをウットリと眺めながら。
恥ずかしげにその絨毯を、緩やかに、上品に昇っていく。
刻は夜。
空には星の子らが、思い思いに瞬き始める時間。
何処かで星が産まれ。
何処かで星が死ぬる場所_____。
今宵、星々が格別に美しいのは。
命育む星々の祭りの日だから。
聖なる夜は、世界を美しく彩る。
華やかに。
密やかに。
そんな中、一人の少女が、忙しなく天空を駆けめぐる。
彼女の名はセシリィー。
赤と白の服・・・・サンタルックに身を包む。
大きな袋を持ち、空飛ぶトナカイ雪車に乗っている。
神々より授けられし力によって。
正しき心の物の元にのみ訪れるクリスマスの天使。
別名、サンタクロース一族とも言う・・・・。
「ロィ、そんなにむくれないでよ。」
セシリィーが困ったように肩を竦める。
「だってセシリィー様、オイラがこんなにへとへとになったって、まだ三分の一も仕事終わらないじゃ無いですか。」
ロィと呼ばれたトナカイが、初仕事の主人に先程からブツブツとモンクを呟いていた。
無論ロィにとっても初仕事である。
サンタ族とトナカイ族の者は15歳になると成人として認められ。
室内作業の手伝いのみから、トナカイ雪車に乗って、プレゼントを配る仕事を任されるのだ。
始めは意気揚々と元気だったセシリィとロィも、数の多さに辟易としてきた所であった。
「ボクだってへとへとだよ。・・・でも頑張らないと、クリスマス終わってしまうよ?そしたらボクもロィも半人前って馬鹿にされちゃうけど・・・いいの?」
口調は柔らかいが毒がある。
その言葉に軽く舌打ちして。
ロィは何も言わず、走る速度を無言で上げた。
クリスマスショートです。