0話 ツッコミの天才
作者は趣味で小説を書いてる者だ。
よろしくお願いします。
俺、音無蓮斗は我慢している。痛みでもなく、眠気でもないツッコミをいれたいいう衝動に駆られている。
漫才をする時でも、ボケとツッコミをする者がいて、初めて漫才のコンビが成立する。
男子四人で机を囲んで弁当を食べている。皆、他愛もない話をして弁当を食らう。
俺の正面に座っている友人の七瀬友也もいい笑顔を浮かべて話している。しかし、俺は気付いた。
友也の鼻の穴から毛が俺を覗き込んでいることを。しかも、両穴からだ。
おい! わざとだろ!? 俺にツッコンで欲しいのか!?
「しかし、食事中にこんなことを……」
「どうした? 蓮斗」
いい笑顔だ。友也はイケメンだ。こいつの恥をこれ以上、露にしてはいけない。やるしかない。
鼓動が高鳴る。親友のツッコミが一番気を使う。1歩間違えれば、これまでの関係が音もなく崩壊する。友情とは繊細なのだ。
俺は席から勢い良く立ち上がり、渾身のツッコミをいれる。
「友也! お前の鼻からお花が2本咲いているぞ!」
鼻毛をお花に例え、鼻毛に対する印象をオブラートに包んだ。さらに食事中とあって、お花という表現は妥当だろう、と思う。
しかし、周りが静寂に包まれ変に目立ってしまっている。
友也は急いで、教室を後にした。恐らくトイレに行ったのだろう。
周りの友人からは、「ちょっ! お前何を言ってんだよ」みたいな目で見られている。
いいんだ……。一人の少年を救ったのだから……。
ピロリロリン。
昔のゲーム音みたいな音がした。正確には俺にしか聴こえないらしい。皆気にも止めず、また弁当を食らっている。
『音無蓮斗様、貴方は0歳から数えた17年間で100億回のツッコミをいれ、殿堂入りしました。その勇姿を私のツッコミのいない荒んでしまった世界で、披露して欲しいのです。
ーーそして、私の世界を救って下さい。ツッコミの勇者として!』
ツッコミ100億回? ツッコミの勇者? なんだなんだ?
『では、お願いします。ツッコミの勇者。あ、私は神セフィーロです。以後お見知り置きよ』
「へい?」
俺は眩い光に襲われた。変な感覚だ。昔の風景が掘り起こされ、懐かしい想いが湧いてくる。
ーー少女がいる。誰なんだろう……。
ふと、目を醒ますと教室でも保健室の屋根ではなく、澄みきった青空にゆっくりと雲が流れている。
仰向けに寝ている俺。
ーーそして
何食わぬ顔で俺の腹部を踏みつける少女。
「おいおい、止めろ!」
腰まで伸びた銀色の髪を風に靡かせ、青色の瞳で俺を一瞥する。お人形さんのような顔立ちからは小学生を連想させる。総じて、外国の小学生だ。こいつ。
英語だ。日本語ではこの攻撃は止まらない。
「No thank ! Please no thank! Ok?」
少女は訝しいそうな表情を浮かべて、再度俺の顔を覗き見る。
俺の語学力が乏しかったのだろうか。自慢じゃないが、英語で赤点以外取ったことがない。
「お前、見慣れない鼻だな」
俺は思考を忘れ、反射的に反応してしまった。
「いや、そこは鼻じゃなくて服装や顔だろ!!」
少女は尻餅を付き、短パンと黒ニーソの間の"絶対領域"が俺の目に飛び込んでくる。雪のような白い肌が"絶対領域"をより一層際立たせる。
「おじちゃん、おじちゃん」
と言って慌てて逃げるように去ってしまった。
また滑ってしまった……。
俺は溜め息を溢す。