私が転生する前の話
はいはい。こんにちわ
私は一社員です
いや、実はね。会社終わりに妻に会うために急いでいたんですけど、居眠り運転していたトラックが私の歩道の方に突っ込んできまして・・・はい。死にました
え?なんでそんな悠長に落ち着いていられるのかって?
いや、死ぬ時の記憶もありますから慌てていないんですよ
恐らくここは、天国でしょう
周りは真っ白で何もないところですよ
いやー、妻に会えないのは寂しいし悲しいのですが、何故でしょう・・・ここにいると、穏やかな気持ちになれるんですよ
それにしても、本当に誰一人いないですね
誰かいないんでしょうか
「いるよー!もうそろそろ気づいてくれないかなー?」
ん?あれ?・・・いつの間にこんな綺麗な人が私の前にいたんでしょうか
「あ、うん。褒めてくれてありがとう。でね、実はですね〜・・・」
ん?何を言いにくそうに・・・
あー、もしかして
「ああ、私はもう死んでいるんでしょう?」
ギクリと体を強張らせて私を見るその人
「・・・わかってたの?」
恐る恐る私に聞く目の前の人に、私はさっき思っていたことを告げる
私には死んだ時の記憶がある、と
「そうですか・・・それで、あの、お話があって」
???話?
一体何を・・・しかもそんな畏まって・・・
「すいません!!実は貴方はまだ死なない予定だったんです!!」
え?私がまだ死なない予定だったって?
どういう・・・?
「本当は貴方の後ろの方にいた女の方がなくなる予定だったんです!ただ、手違いがあって・・・」
「女の子?」
「え・・・?あ、はい。貴方ではなく、女の方が・・・「そうですか!その方が助かったのなら良かったです!!」・・・え!!??」
そうですか。そうですか
私が死ぬことで女の子が助かったのですね
いやーよかった。よかった
そんな理由なら、死んだ甲斐がありましたね
「え?え?死んだ甲斐があるってどういう・・・???」
「あーよかった・・・え?何故かって?」
「は、はい」
「そりゃあ私が女の子至上主義、もとい女好きだからですよ」
「え・・・」
いやーいいですよね。女の子
女の子のためならなんでもしますよ
ええ、ええ。私も男ですからね
女の子は大切にしますよ
まあ、そのことで妻に妬かれることもありましたが・・・
・・・ん?男だったんですか?って?
ええ、私はれっきとした男ですよ
一人称は私ですがね
「・・・そうですか。あの、話し続けても?」
「あ、すいません。どうぞ続きを」
「コホンッ・・・えっと、不手際で死なせたお詫びとして、貴方には二つ、選択肢があります」
へー、そんなものが
「一つ目は、このまま天国に行き、最高の待遇を受ける。まあ、これは普通に貴方が死んでも、適用されましたね。待遇が少し下がるだけで」
「ふむふむなるほど・・・あと一つは?」
「・・・もう一つは、あなたが望む形で転生できる、というものです。但し、ここと貴方がいた世界は時間の軸が違うし、貴方はその世界の転生の軸から外れてしまっているので、貴方のいた世界には転生できません」
「・・・そうですか。つまり、もう妻に会うことはできないのですね」
「・・・はい」
「・・・そんな顔しないでください。仕方のないことですし、いつかこうなるとは思っていましたから・・・そうですね。私は、転生することを願います。まだ、遊び足りないし、今度こそ添い遂げたいのです」
「・・・わかりました。それでは、どこにどういう待遇で転生しますか?」
「・・・そうですねぇ・・・」
まあ、ほんとはその転生の話を聞いた時から行きたいところは決まってたんですけどね
「それは・・・どこですか?」
「私が生きていた時に一番ハマっていた『君と紡ぐ花言葉』というギャルゲーです」
このギャルゲーは、主人公は一国の第一王子で、攻略キャラ、ライバルキャラともに、王子の嫁候補・・・そして、舞台は城の後宮
このギャルゲーが人気となった理由は、様々なエンドがあり、バッドエンドで酷いものは、死刑や奴隷落ちなどがあるところです
そしてもう一つ、豊富なルートが人気の理由。通常の攻略キャラたちそれぞれのルート、それと、ライバルキャラたちのルート、他にも、薔薇と呼ばれるBLルートは、腐女子たちには、大人気でしたね・・・。あと、なぜか百合と呼ばれるGLルート、がありましたね。攻略キャラ同士やライバルキャラ同士、それか、攻略キャラとライバルキャラでのカップルとかもできるようにしてありましたね。まあ、これは百合男子に大人気でした
まあ、これらの理由で、このギャルゲーは人気のゲームだったのです
そして、私がここに転生したい一番の理由は、後宮内での女の子の支えになりたいと思ったからです。女の子は笑っている時こそ、可愛らしいのですから、私が笑わせてあげたいのです
「では、そこでよろしいですね?」
「はい」
「それでは、そこに、どのような待遇で転生しますか?」
「うーん・・・では、主人公の妹として、転生させてもらえないでしょうか。そして、魔法を無限に、すべての属性に適性を持って」
「あの、あとの魔法に関しては分かるのですが・・・妹、ですか?弟ではなく?」
「はい。弟であれば、後宮内に行くことは不可能です。それでどうやって彼女たちを支えられるのですか。私は彼女たちを支えたい・・・だからこそ、女として後宮内に入り込むしかないのです」
そう、これこそが私の目的なのだから
「・・・わかりました。その待遇でよろしいですね?」
「はい」
私の決意を秘めた表情に、その人は諦めたように言う。まあ、もちろん私の答えはYesなのだけれど
「はぁ・・・わかりました。では、前世の記憶を取り戻しても大丈夫な歳・・・3歳の誕生日に、全てを思い出せるようにしておきましょう」
「ありがとうございます」
「それでは、幸せな第二の人生を」
「・・・行ってきます!」
そして私は、決意を新たにしながら、転生した