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地下街での出来事(挿絵あり)

 地方都市でも、地下街はある。

 と言っても、規模は小さなものだ。

 俺はそんな地下街の壁を背に立って、前を通り過ぎる人たちをぼんやりと眺めていた。

 今は美佳とカラオケを終えて、地下街を通って、駅を目指している途中だ。

 何人かで、ぱぁっと盛り上がるつもりだったが、美佳が二人だけでいいと言うので、今日は二人だけだ。

 そのもう一人である美佳は今、トイレに行っている。


 俺たちの学校は休校になっていて休みだが、今日は平日である。

 俺たちと同じ高校生たちもちらほらと目の前を通り過ぎてはいるが、みんな下校途中であって、制服姿だ。

 どこの高校の制服が一番好きと言うのはないが、やはりスカートは短い方が好きだ。

 なんて考えながら、時々目の前を通る他校の女生徒の足を目で追ってしまっている。

 それも、これも、美佳がなかなか出てこないからだ。


 また今一人、俺の目の前を他校のチェック柄のスカートをはいた女生徒が通り過ぎていく。

 心地よい一定のリズムを刻むハイソックスをはいた足。

 それを目で追っている俺の頭の中のリズムを、沸き起こってきた喧騒が狂わせた。


 走る人々の足音。

 人と人がぶつかる音。

 「待てぇ」

 人が叫ぶ声。


 挿絵(By みてみん)

*sanpoさんから、イラストいただきました。

 かっこいい翔琉くん、見てやってくださいませ。

 ありがとうございました。再び、感謝、感謝です。




 なんだ?

 俺は騒がしさの元である地下街の右側に目を向けた。

 一人の男が俺たちの方向に走って来ている。


 俺と同じく異変に気付いて人々が、立ち止まって男の方に目を向けている。

 男が前を行く人々の間を縫いながら、あるいは突き飛ばしながら進んできている。

 異常事態である。

 その事に気付いた人たちの何人かは、慌てて通路の端に寄った。


 危なすぎる。犯罪者である事は疑いなさそうだ。

 どんな奴なのか、俺は視線をその男の顔に向けた。

 人ごみの向こうに見えるその犯罪者らしき人物は20代と思しき男で、その顔つきからは悪人っぽさを醸し出していない。


 もうすぐ、俺の前にやって来る。

 見たところ、武器や凶器は持っていなさそうだ。


 背後から追ってきている制服を着た警官との距離は結構空いている。

 少し躊躇したが、俺は通路の真ん中に出て、男の針路に立ちふさがった。

 男は右腕で前のものをかき分けるかのような動作をしながら、必死の形相で俺に向かって、怒鳴った。


 「どけ!」


 そう言われて、どくくらいなら、最初から立ちふさがったりはしない。

 俺は目に力を込めた。

 敵対。そう言う意思表示だ。


 そんな俺に対して、男は右こぶしを握り締め、右腕を後方に引いた。

 走っている勢いも落ちてはいない。

 俺を殴り飛ばして、このまま走り去る。

 そう言う意思表示だ。


 戦う決意の二人が立ち向かえば、どちらかが敗北しなければ事態は収束しない。

 俺の頭はフルスロットルで、ベストな攻撃をはじき出した。

 男の右こぶしが俺の顔面目指して、飛んできた。

 俺は体を横に向けながら少し後退した。

 俺の目の前で、男の右腕が空を切った。

 俺は右足を差出し、男の足を引っかけた。

 勢いをつけて走っていた男は、俺の足に引っかかりバランスを崩し、完全な前のめりになったかと思うと、すぐに通路に突っ伏した。

 大の男が、思いっきりこけたのだ。

 通路にぶつかる音と、通路に体をこすりつける音が響いた。

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