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クローン少女が亡くなった?!

 あと少女に残っているのは、2階から飛び降りると言う手段くらいだ。

 少女はもう手詰まり。そう言う事だ。


 地下に降りて行った兵士たちが、クローン達を次々に連行してきている。

 両手を頭の後ろで組まされ、銃で威嚇されている姿は何か昔見た戦争の記録映像の捕虜の姿のようだ。

 クローンたちも手詰まりだ。


 おそらく、全てが田中たちの思い通りに進んでいる。後はクローン少女を何とかすれば、それでこのゲームは完全に終わってしまう。


 所詮、神南がクローンたちの解放を要求しているとしても、あの少女に比べ、御しやすいと考えているはずだ。

 田中たちは勝利を目前にしている。きっと、心の奥底で喜々としているに違いない。


 そう思った時、爆発音がして建物が揺れた。

 天井から何か埃のようなものが降り注いだ気がした。


「なんだ?」


 田中も、軍の指揮官も天井を見つめ、辺りの様子をうかがっている。

 兵士たちも立ち止まり、様子をうかがっている。

 掴みかけた勝利を揺るがす事態? そんな懸念が田中を襲っている。


「二階の部屋で、爆発が起きたようです」


 ドアを駆け抜けて、兵士らしき男が駆けこんで来た。

 指揮官が近くにいた兵士に二階の様子を見てくるよう指示すると共に、自分は外に駆け出した。二階の様子を外から見ようと言うのだろう。


 二階にはあのクローン少女がいる。そこでの爆破と言う事で、事態が思わぬ方向に向かっているのではと、慌てているのがその表情からも見て取れる。


「翔琉ぅ。何が起きているの?」


 美佳は少し青ざめた表情で、心配げだ。

 疲れもたまっているはずで、美佳には申し訳ない限りだ。


「様子を見に行ってくれないか?」


 天井を見渡していた神南に、俺は頼んだ。

 神南も不安げな表情で頷くと、外に向かって駆け出した。

 神南とほぼ入れ替わるように、様子を見に行っていた指揮官が建物のドアを通り抜けて、戻ってきた。

 何かを俺たちに言う事もなく、何人かの兵士たちに指示を出した。


「お前たち、ついて来い」


 指揮官が二階につながる階段に姿を消した。田中はその様子をじっと見つめていた。

 しばらくすると、慌てて神南が戻ってきた。


「二階の部屋で爆発があったみたい。

 二階の部屋のガラスが割れて、地面に散乱しているわ。それに、部屋の中では何かが燃えているみたい」


 神南は走ってきたのと、一気に話した事で、少し息が切れ気味だ。


「火事?」


 美佳が震えはじめた。

 両手が空いていれば、「大丈夫だ」と言って、頭を撫でてやりたいところだが、縛られていてはできやしない。

 今の俺にできるのは、自信ありげな眼差しで、美佳を見つめ、こう言ってやるくらいだ。


「美佳。大丈夫。安心して」


 美佳が強く頷いて見せた。


「あいつらが攻撃したのかな?」


 不安げな表情で、そう言ったのは神南だ。


「さあ?」


 俺の言葉が終わった頃、階段から指揮官が姿を現し、田中に何か耳打ちをしたかと思うと、兵士たちに指示を出した。


「担架と遺体を隠すものを持ってこい。

 後、5人ほどは2階に上がり消火活動を手伝え」


 その言葉で、俺たちがいるホールに動揺が走った。


「仲間がやられたのですか?」


 兵士たちは自分たちの仲間が襲われたのではと心配した。

 クローンたちは銃を突きつけられていて、声を出しはしなかったが、誰が亡くなったのか、その原因は、と不安げな表情で、田中たちを見つめていた。


「安心しろ。亡くなったのはあの少女だ。

 塞がれているドアを爆破物でぶち破ろうとして、ドアや建物の壁だけでなく、自分の体もばらばらに吹き飛ばしたようだ」


 田中の言葉に恐ろしいほどの静けさがホールに訪れた。

 田中はにたりとした笑みを浮かべると、言葉を続けた。


「いや。もはや、逃げ道が無いと悟り、持っていたと思われる爆発物で自爆したと言う可能性もあるかもな」


 何の感情もないかのような静けさは消え去り、ホールにはそこにいる者達の感情があふれ始めた。


 兵士たちには安堵感が。

 クローン達には悲しみと怒りの入り混じった感情が漂った。


 神南も両手で口のあたりを押え、大きく目を見開き、震えはじめている。


「私が閉じ込めたから?」


 俺に向けた神南の目には自責の念が浮かび上がっている。


「大丈夫。俺を信じて」


 この場で、今がどのような状況なのか分かっているのは俺だけだ。

 神南に余計な精神的負担を持たせてしまった。

 神南に話をする時間が無かった事を後悔した。

 神南が俺をじっと見つめた。力強く頷いて見せた。


「信じる」


 それだけ言って、神南は頷き返した。神南の両手の拳がぎゅっと握りしめられたのを俺は見た。

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