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クローン達だって同じ人間です と神南は言った

 クローン少女の指揮下で神南が現れても、ヒューマノイドは神南とクローン少女を識別できるようだが、一度クローン少女が消えた後になると、神南との区別はできないらしい。


 神南が俺たちの横を通り過ぎる。

 俺と美佳、そして二人の女の子は縛られたままだ。


「ねぇ。私たちの縄は切ってもらえないのかなぁ?」


 美佳は心配げだ。


「ああ。まだ、その時ではない」


 小声ではあったが、俺の落ち着いた声に美佳は安心したかのような表情で頷いて見せた。

 床に落ちている縄の残骸を松岡が手に取って、ごみ箱に捨てると、早足で神南とヒューマノイドの後についた。


「2階で眠るとしたら、どこだと思います?」

「ここの事は、俺よりも佑梨ちゃんの方が詳しいだろ?」

「分かりました。

 ヒューマノイドなら、人の寝息を探る事もできるでしょうから、とりあえず全部の部屋を探していきましょう」


 二人がひそひそと会話しながら、階段に姿を消した。



 二人が姿を消し、静まり返った空間。が、それはすぐに打ち破られた。

 二階で何か物音がする。音としては大きくはないが、何か大きな物を動かしている感じだ。


 音がしなくなって、すぐに階段から神南たちが姿を現した。

 すたすたと外を目指す神南と松岡。それに続く一体のヒューマノイド。


 俺たちの横を通り過ぎる時、松岡は縛られたままの俺に、お得意のふふん顔を見せた。

 そのまま二人は俺たちにかまわず、外を目指していく。

 再び開かれたドアから、夜の冷気がなだれ込む。

 

 しばらくすると、近づいてくる大勢の気配を感じた。

 入り口に目を向けると、銃を構えた大勢の兵士たちが駆けこんできた。

 照明が灯され、一気に明るくなったホール。


 急激に明るくなった事で、監視のためのクローンが目を覚ました。

 辺りの状況を飲みこもうと、一瞬きょろきょろとした。

 顔色を変えて立ち上がったが、遅かった。

 兵士に殴り飛ばされ、すぐに捕縛された。


 いきなり殴り飛ばすのかよ。

 いよいよこの作戦が最悪の結末に向かって進んでいる気がする。

 少し遅れて現れたのは松岡だ。


「こっちです」


 得意げな顔つきで、兵士たちを引きつれて、階段を駆け上がって行く姿が見えた。

 ぞくぞくと建物の中に入ってきた兵士たちは、松岡に引き連れられた何人かを除き、俺たちに目もくれず、地下を目指している。

 大半の戦力をクローン達がいる地下に振り向ける。完全に制圧を目的にしている感じだ。


 遅れて神南と田中、そして一人の軍人が姿を現した。あの日にも見た軍人さんだ。ここの指揮官だろう。


「さてと、解決はもう目の前だ」

「はい」


 田中の言葉に神南が頷く。


「全ては君のおかげだ。感謝するよ」

「いえ。ですが、先ほども申し上げましたとおり、クローンたちの命は保証してください」


 田中の顔が一瞬歪んだ。


「それでは全く今までと同じじゃないか」

「でも、クローン達だって同じ人間です」


 田中の表情は神南を蔑むような表情を見せたかと思うと、突然にこやかな表情になった。

 何か悪意を感じるじゃないか。


「分かった。まずはあの少女を何とかしよう」


 作戦の実行状況を確認しようとしているのか、ホールの真ん中で立ち止まり、辺りを見渡した。動く気配はないようだ。


 2階に行った男たちの一部が松岡と共に戻ってきた。


「2階ですが、ターゲットを閉じ込めた部屋の前には異常なほどのバリケードが築かれています。

 ターゲットも出る事は出来ないでしょうが、こちらも入るには時間がかかります」

「連れて行ったヒューマノイドで、他の部屋にある重たい物でドアを塞ぎましたので」


 男の報告が終わるや否や、神南が田中に言った。


「さて、どうしたものか」


 田中は少し顔を上に向け、思案顔だ。


「2階か。気付かれて窓から命令を出されても厄介だな」


 軍の指揮官らしき男はそう言うと、神南に目を向けた。


「ヒューマノイド全てをこの建物の中に収容してくれないか」


 神南は頷くと、外を目指して駆け出した。


「全てのヒューマノイドは建物の中に入ってください」


 言い終わると神南がホールに戻ってきた。その背後には外に出ていたヒューマノイドたちが続いている。

 これで、おそらく2階の一室に閉じ込められたクローン少女はヒューマノイドを指揮できないと言ってもいいはずだ。

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