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作戦開始

 俺とクローン少女の二人は地下室を出て、5階に向かった。

 美佳と二人の少女を神南や松岡たちと同じ1階のホールに移して欲しいと、俺が頼んだからだ。


 俺に美佳、神南。そして、松岡に二人の少女はクローン達やヒューマノイドたちの監視にさらされながら、手足を縛られた状態でホールの片隅に集められた。


 少し離れた来客用と思われるソファに座っているクローン少女。

 さっきからヒューマノイドやクローン達に、せわしなく指示を出している。


 ヒューマノイドたちはともかく、クローン達でさえ、顎でこき使われている風に見えるじゃないか。

 この少女、なかなかのものである。思わず、そんな事を考えてしまう。


 少女は政府側に自分たちの要求をのむよう要求しているようだが、政府側からは時間稼ぎの返事ばかりと言う感じだ。

 少女が苛立っているのが見て取れる。


 「大丈夫。今は安心して」


 少女の動きを見ている俺に、松岡の声が聞こえてきた。

 当然だが、俺に向けられた言葉ではない。

 振り返ると、神南が頷いていた。

 そして、すぐに俺をじっと見つめてきた。


 俺は神南と違って、政府側の作戦は聞かされていない。

 俺を見つめる神南の表情から、何か動きがあると言う事を感じ取った。


 それから数分した頃だった。

 地響き的な振動がお尻を震わせると共に、エンジン音らしきものが鼓膜を震わせた。

 研究所の中が慌ただしくなった。


 「外の様子を見てきて」


 少女が立ち上がって、一人の男に指示を出した。

 ヒューマノイドではなく、クローンだ。

 事態が分からない状態で、様子をうかがう。こう言う判断にはヒューマノイドは適さないのか?

 そんな事を思い浮かべながら、男の後姿を追う。

 開いて行く自動ドアの向こうには夜の闇が広がっていた。

 夜陰に紛れて、行動に出た。そう言う事だろう。

 男はすぐに戻って来て、少女に叫ぶように言った。


 「戦車部隊が動いています。

 ヒューマノイドで迎撃してください」


 頷く少女の姿を見た。


 「全てのヒューマノイドは外に出て、ここを戦車部隊から守りなさい。

 敷地に入ってくれば、即破壊」


 少女の言葉と共に、ホールにいたヒューマノイドたちが、雪崩を打って外に出て行く。

 少女の横に寄り添っていた少女のヒューマノイドも、その髪をなびかせて、外に向かう。


 やがて、一発の砲撃音が轟いた。

 思わず身をすくめてしまう。

 続いて砲撃音が連続して轟いた。


 話では砲弾ごとき、ヒューマノイドにとっては何てものでもないとは聞いていても、さすがに恐怖感が沸き起こる。


 「翔琉ぅ。これって戦車なの? 大丈夫なの?」


 真っ青な顔で、美佳が芋虫のように這って俺のところにやって来た。

 ああと頷きながらも、俺だって自信はない。ヒューマノイドの事はそれほど詳しい訳ではない。


 「まじで、大丈夫なのか?」


 神南にたずねた。


 「開発段階のスペックでは砲弾や戦車との戦闘への対応も考慮されているの。

 だから、大丈夫」


 そう言ったかと思うと、神南は顔をぷいっとそむけた。


 「神南さん、怒ってるんじゃない?」


 美佳はこんな状況だと言うのに、こんなところだけは感じ取る余裕があるらしい。


 「あー。そんな事はないと思うんだが」

 「そっかぁ。ならいいや」


 会話している二人に、顔をそむけている神南の横顔。目つきが少しきつくなったのを感じた。


 砲撃音はすぐに止んだ。

 戦車部隊の砲弾は全てヒューマノイドたちに撃墜させられたらしい。

 そのまま突入する気配を見せていた戦車部隊は、砲撃の効果が無かったため、突入を諦めて、元の配置に戻ったと言う事だった。


 攻撃が再開されることを警戒したクローン少女は、ヒューマノイドたちに警戒を解かないよう命じた。


 「全く、あなたたち人間は何を考えているの?

 ヒューマノイドたちに勝てる手段なんてある訳ないのに。

 そこまでして、私たちを迎え入れたくないって訳」


 俺たちをクローン少女は見下ろしている。その目つきは怒りに燃えている感じだ。


 「そんな事は無いと思う。

 もう少し交渉して行けば政府も折れるんじゃないかな」


 松岡の言葉に、少女がにこりとした。


 「そうだよね。

 もう少しかな?」

 「きっと、もうすぐだよ」

 「ありがとう」


 少女の表情から怒りが消えた感じだ。少女は俺たちに背を向けると、一人のクローンを指さした。


 「あなた、この子たちを監視していて。

 他の者たちは自分の元の場所に戻って眠りなさい。

 私も2階で眠るわ」


 少女の言葉に、多くのクローン達がぞろぞろと移動を始めた。


 「元の場所って?」


 監視のクローンにたずねてみた。


 「この研究所の地下だよ」

 「あの子だけが、2階なのか?」

 「あの子は特別さ。

 きれいなちゃんとした所で、休んでもらわないと」


 松岡の顔が嬉しそうに歪んだ。

 いくら。都合のいい話を聞けたとしても、表情に出すなよと言いたいところだ。

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