表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/80

ふくれっ面の美佳

 そんな神南が久しぶりに登校してきたのは次の週の月曜だった。


 いつもどおり俺は朝早く登校して、自分の机の上で問題集に目を向けていた。

 俺が登校してきてから、かなりの時間が経過した教室の中は、すでに多くのクラスメートたちが登校してきており、教室の中は私語が飛び交うにぎやかな状況だ。

 神南は今までなら俺が登校してきて、少し遅れたタイミングで登校してきていただけに、今日も来ない。そう思っていた時、神南は教室に姿を現した。


 一瞬の静けさが、教室を襲った。

 休み続けていた神南の登校に、みんなの視線が集中した。


 「神南さんだ」

 「神南が来た」


 問題集とノートに行ったり来たりさせていた俺の視線が、その言葉で教室のドアに向かった。

 腰近くまであるストレートの明るいブラウンを揺らしながら、教室の中を歩いているのは紛れも無く神南だ。


 俺の視線が神南にロックオンした。

 俺の視線に気づいた神南が、俺ににこりと微笑みながら言った。


 「おはよう」


 その言葉は間違いなく、俺に向けられた言葉だ。

 これは今までにないパターンだ。最近、親密度がぐぐっと上がっていたためだろうか、などと考えてみながら、俺もにこりとしながら返した。


 「おはよう」


 神南の元気な姿を見れただけでも一安心で、うれしいところに笑顔付きの挨拶なんて、これまたうれしいじゃないか。


 その普段の硬い神南とは少し違う行動に、教室のクラスメートたちの興味は注がれたようで、神南の視線の先、そしてそれに応えた俺にクラスメートたちの視線が集中した。

 俺と神南を見るみんなの目が、好奇の目じゃないか。


 いつも厳しく、硬い表情ばかりの神南。その神南が笑顔を見せたんだ。みんなが、何かを勘繰っても仕方ない。

 もっとも、俺としては神南に惚れてしまったかも知れないが、神南は俺の事を何とも思っていないはずだ。

 いや、それ以上に俺と美佳が付き合っていると思っているのだから、俺に好意を抱くはずもない。

 とは言え、二人ができていると誤解される状況100%なのかも知れない。


 慌てて、少し前の美佳の机に目を向けた。

 いつもの事だが、まだ来ていない。

 正直、ちょっと安心した。

 俺は再び神南に視線を戻そうとした時、俺のところに近づいてきている神南に気が付いた。


 「この前はごめんね」


 神南が暮らす家に行ったときの事を言っているに違いない。

 その表情は本当に申し訳なさそうだ。こんな神南の表情も初めて見たかも知れない。

 学校では厳しく硬い表情しか見せなかったが、やっぱり人間なんだ。

 色んな表情を見せるんだ。そう思うと、何だかうれしくなってしまう俺は一体なんなんだ?


 「あ、いや。

 急いでいるところに、押しかけたみたいで、ごめんね」

 「そう言えば、一人暮らし始めたんだろ」

 「うん。どうして知ってるの?」

 「ああ。あの松岡って、人から聞いたんだ」

 「あ。誠也さんが話したんだぁ」


 そう言って、話をしている神南の表情は明るく、時折笑顔を見せている。全く、かわいい普通の女の子だ。


 「お・は・よ・う」


 突然、俺の耳に大きな声が届いた。

 美佳だ。神南の横で、鞄を両手でぶら下げて立っていた。


 俺のところに来るまでの所に、美佳の机はある訳で、鞄を置いて来ればいいはずなのに、両手でぶら下げていると言う事は、自分の机をさっさと通り過ぎて、俺の所に来たと言うことだ。


 それは決して、喜ばしい事ではないと言う事を美佳のちょっとふくれたような表情と、さっきの大きな声が現している。

危ない雰囲気になってきました。

翔琉くん、どうしちゃうんでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ