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ちょっと、ストーカー的な俺?

 俺はあの日、神南と一緒に歩いた神南が暮らす家につながる道を一人で歩いている。

 あの時は、神南と一緒で何かうれしくて、ずっとこのままの時間が続けばいいと言うような気分で歩いていたが、今日は少しの不安とそれを押しのけようとする妄想で胸を埋めながら歩いている。


 神南が姿を消して、三日目。

 今日も学校を休んでいた。

 忽然と姿を消した神南。

 神南の姿を一目見れば安心する。神南の笑顔でなくてもいい、元気な姿を見たい。その思いが、この道を歩ませていた。


 もうすぐ、あの松岡とか言う男子とあった場所だ。

 あのふふふんと言う嫌な表情がよみがえってくる。松岡の事を思い出すと不愉快になるが、今はそんな事はどうでもいい。


 「ほら、あそこ」


 神南が指さした方向に視線を向けて、足を速めた。

 神南が暮らしている家が具体的にどれなんだか知っている訳じゃない。

 だが、この近くであるのは確かだ。探し当ててでも、神南の無事な姿を確かめたい。


 右側に並ぶ家々、左側に並ぶ家々、玄関の表札に目を向けながら、歩いて行く。

 鈴木、秋本、中川、井上……。

 どれも違う。


 街は碁盤の目のように縦横に道路が走っている。

 神南の言葉から、この通り沿いと勝手に思い込んでいるが、この通り沿いではなく、通りにつながる細い道路沿いだって事もあり得る。

 もし、そうなると、そう簡単には見つけられない。

 どこまで、この通りの家を調べるか。止めたすぐその先にあったと言う可能性だって捨てきれない。

 そう考えると、しばらくこのまま調べ続けるしかない。

 寺川、福山、田辺、田中……。

 無い。


 途切れた歩道を下りて、左に目を向けた。片側一車線ほどの道路に沿って、並ぶ家々。

 このあたりの家は邸宅と言えるほどの大きさだ。

 右側に目を向けて、道路を挟んだ反対側に目を向けた。

 同じような邸宅が並ぶ中、一軒の門扉を閉めようとしている二人の少女の姿が目にとまった。


 白いブラウスに赤いリボン、チェックのスカート。

 一人は肩まで伸びた黒いストレートヘア、もう一人は腰近くまである明るいブラウンの髪。

 神南とその横にいるのは、この前、駅のホームで見た少女だ。

 やはり、あの子もうちの生徒だったらしい。

 とくかくだ、神南は元気のようだ。今出てきたところが、あの松岡とか言う男子の家なんだろう。

 一刻も早く、神南を確認したくて、駆け足で道路を横切り、神南のいる場所を目指した。

 どこへ行こうとしているのか、神南は俺とは反対の方向に歩き始めた。


 「神南」


 待って欲しい。立ち止まってくれれば、少しでも早く会って、顔を見て、話ができる。

 そんな思いで、俺は神南を呼んだ。


 「平沢君」


 振りかえった神南が、そう言って、にっこりとほほ笑んだ。

 元気そうじゃないか。

 神南の下まで一気に駆け寄った。


 「どうしたの?」


 俺が話しかける前に、神南の方が俺にたずねてきた。


 「あ、学校休んでいるから、心配してたんだ」

 「私の事、心配してくれてたんだ。

 ありがとう」


 神南はとてもうれしそうな表情を俺に向けてくれた。


 「当り前じゃないか。

 で、体調は?」

 「うん。大丈夫。ありがとう」


 あの日の神南が戻ってきた。俺としては、うれしい気分だ。


 「明日くらいから、学校には来られそう?」

 「もうちょっと休むかな」

 「そっか。色々あって、大変だもんな」


 そうは言ったが、もう学校に来れそうなだけに、まだ学校で顔を見れないのは残念なところだ。


 「で、どこかへ行くの?」


 そう言って、神南を見た。神南の手には鞄が下げられていて、それなりの量のものが入っているのか、鞄は大きく膨らんでいた。

こんなキャラだった?

いえ、それだけ想いが強いんです。好きになった相手の事が、心配で、心配で。

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