神南はどこ?
俺の脳裏に、信じたくはない予想が浮かび上がった。
乱戦状態の男たちと警官の輪の中に巻き込まれて、逃げ出せない。
だとしたらだ、神南は無事では済んでいないはずだ。
俺は慌てて、神南の名を呼びながら、その輪の中に飛び込んだ。
「すみません。神南、神南」
「邪魔だ」
そんな俺はすぐに警官に腕をつかまれ、乱戦の輪の外に放り出された。
あまりの勢いで放り出されたため、しりもちをついてしまった。
「神南! どこにいる」
しりもちをついたままもう一度叫んだ。
だがやはり、神南の声は聞こえてこない。
ただ警官と男たちの怒声と銃声だけが俺の耳に入って来る。
再び立ち上がり、警官と男たちの争いを目の前にしながら、その中に神南の姿を探す。
しかし、どこにも神南らしき姿を見つけられない。
「神南!」
消えた? なんて事がある訳がない。
俺はあたりにも再び目を向けたが、やはり神南の姿はない。
あの中のどこかにいる。やはりそう考えるのが正しいのだろうが、見つける事ができない。
焦りが募りだした頃、男たちは警官たちに制圧された。
争いが終わり、現場の様子が明らかになってきた。
道路に広がる真っ赤な血。横たわる男たち。
警官に連行される男たち。そんな男たちも無傷ではなさそうだ。
俺はあたりをきょろきょろと見渡した。
神南の姿がない。
「神南は? 神南はどこ?」
俺は近くにいた警官に詰め寄った。
「神南佑梨の事か?」
神南の名前を知っている。やはり、神南が言ったとおり、警察は神南を監視しながら、保護していたんだろう。
「はい。さっきまでいましたよね?」
「ああ。確かに俺たちが駆け出した時には、俺たちの目の前にいたはずだったが」
そう言って、警官は辺りを見渡して首を傾げてみせた。
「危ないから、どこかへ逃げたんだな。きっと。
仲間に連絡しておくよ。いずれにしても保護対象だしな」
その警官はそう言って、俺の前から立ち去り始めた。
警官でさえ、神南の行方を知らないらしい。
どう言う事なんだ?
俺としては煙のように忽然と消えた。そんなイメージだ。
俺は神南はその場をさっさと離れて学校に向かった。そう信じる事にした。
と言うか、それ以外考えられない。一人、人知れずあの場を去った理由と方法は分からないが。
学校に行った俺は神南の姿を探した。
神南の姿は学校には無かった。
どうやら、俺が信じようとした事はただの願望でしかなかったようだ。
だが、大きな成果はあった。
学校に神南から体調が悪いため、今日は休むと言う連絡があったらしい。
つまり、あの争いで精神的にダメージを受けた神南は体調の不良をきたし、あの場からさっさと引き上げ、学校にではなく、あの松岡の家に帰った。そう言う事のようだ。
それなら、それで少しは安心だ。どうやって、いつ、あの場から離れたのか? と言う疑問は残るが。




