現れた警官たち
「おまえたち、全員動くんじゃない。その場で両手を上げろ」
突然、俺の背後から、そんな言葉が聞こえた。
動くんじゃないと言われたが、俺は反射的に振りかえった。
そこには銃を構えた男たちが立っていた。
制服姿ではないが、おそらくこれが神南の言っていた警官なんだろう。その数、10人は超えていそうだ。
厳しい目つきで、男たちを捉えている。
男たちはどうする? そう思って、男たちを見た。
男たちは大人しく、両手をあげたりしなかった。
「ちっ」と舌打ちをしたかと思うと、逃げ出し始めた。
神南を諦めて、逃げ出す事を優先したらしい。
それはそれで、俺としてはとりあえずはOKだ。
「待て」
空砲なんだろうが、一発、空に向けて警官の一人が放った。
校庭で行われた銃撃戦。ガラスを通して聞いた銃声をはるかにしのぐ迫力に、ついついびくっと肩をすくめた。
それが合図となって、警官たちが駆け出し始めた。
男たちの追撃。
俺が視線を神南に向けると、道の端に寄ろうとする神南の姿が見えた。
走り寄って来ようとしている警官たちの邪魔にならないよう、道を譲ろうとしているんだろう。
そんな神南をかばおうと、俺も駆けだした。
俺の方が神南に近かったとは言え、警官たちの足の方が速かったようだ。
俺の横を警官たちが駆け抜けて行く。
俺の目の前には瞬く間に警官たちの壁が出来上がり、神南の姿を見失ってしまった。
その時、はるか先からも銃声が轟いた。
警官たちは、この道の先にも潜んでいたようだ。
挟み撃ちで、全員を一網打尽。
その準備に時間をかけていたのかも知れない。
まあ、そんな事はどうでもいい。
警官と男たちの争いの結末よりも、まずは神南を守る事だ。
神南はどこだ?
俺の前の警官たちが駆けている場所は、すでにさっき神南が立っていた場所を過ぎているはずだ。
なのに、神南の姿が見えない。
どう言うことだ?
神南は警官たちの流れに飲み込まれ、警官たちの集団の中にいるとでも言うのか?
「神南、どこだぁ」
俺は大声で叫んだ。だが、男たちと警官たちの怒声以外返ってこない。
行く手も阻まれ、警官たちと激突する以外の選択肢を失った男たちと警官たちのもみ合いが始まった。
そんな中、銃声も轟き始めた。
まじかよ?
銃ぶっぱなして、いいのかよ?
危なすぎるじゃねぇか。
神南は、神南は大丈夫なのか?
慌てて駆けだす俺。
男たちと警官たちが激闘しているすぐ後ろまで近寄り神南を探す。
辺りにも激闘の輪の中にも、神南の姿を見つけられない。
神南はどこに行ったんだ?




