表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/80

テロリストたちの写真

 俺は目の前の警官に自分が知っている全てを正確に話した。

 もちろん、奴らが乗って逃げた車のナンバーもだ。


 「分かった。その番号、照会してみよう」


 そう言って、警官は何かの端末を手に、俺が言った番号の照会を始めた。

 少し興味のある俺は覗き込み加減に、その手元を見ていた。


 「君」


 俺は背後から呼ばれた。勝手に覗き込むな。そう言う事かと、俺はドキッとしながら、振り向いた。

 俺を呼んだのは神南と話をしていた警官だった。


 「どうも、すみませんでした」


 俺は少しぺこりとしながら、低姿勢で言った。


 「何の事だ?

 これを見てもらいたいのだが」


 そう言って、警官は俺に顔写真の束を差し出した。何だ? そう思っている俺の気配を感じ取って、警官は説明を始めた。


 「こちらの彼女にはすでに確認してもらったのだが、この中に今日の男たちはいるか?」


 そう言うことか。そう思って、俺は顔写真の束を受け取った。

 数十名分はありそうな顔写真の束だ。

 それもスナップ写真と言うものではなく、刑務所かなんかで撮られる写真のようなもので、白い壁を背景にみんな青いスモックのような服を着て、正面を向いて真面目な顔で撮られたものだ。

 写真の下部には1号、2号とか番号が振られている。


 「これって、前科者の写真ですか?」


 俺はそう言いながら、写真を繰り始めた。警官は俺の言葉に返事をせず、ただ黙って俺を見ている。

 何枚か繰った時に、俺に殴り掛かってきた男の写真があった。


 日本の警察は優秀だ。こんなに早く容疑者を絞り込めるなんて。

 俺はそう思いながら、その写真を差し出した。


 「一人はこの男です。俺に殴り掛かってきた人物に間違いありません」

 「ふむ。彼女と意見が一致しているところを見ると、間違いなさそうだな」


 警官はそう言って、俺が差し出した写真を受け取った。

 二人目、三人目と俺は見覚えのある写真を差し出した。

 やはり神南もそう言っていたようで、警官は「間違いなさそうだ」と言って、受け取って行った。


 また一枚、写真を繰った。

 そこに写っていた顔に、俺は衝撃を受けた。

 頭の中に甦る銃撃戦。

 一昨日、校庭で治安部隊の銃撃を受けて、死亡したテロリストの一人だ。


 「どうした?」


 固まってしまっていた俺に、警官が言った。

 視線は俺の顔と写真の間を行ったり来たりさせている。


 「こいつがどうかしたのか?

 こいつもいたのか?」


 俺は首を横に振った。


 「すみません。こいつは一昨日、学校の校庭で起きた銃撃戦で亡くなったテロリストですよね?」


 俺の言葉に警官は驚いた顔をした。


 「そうなのか? 覚えていたのか?」

 「ええ。確か、僕たちの教室を指さしていたのと、銃撃戦の中、電話をどこかにかけようとしていたので、記憶にあるんですよ」

 「指さしていた?」

 「ええ。理由は分かりませんけど。

 あ、なので、もうこの写真はいらないのでは?」

 「ああ。そうだな。

 で、他の写真を見てくれないか?」

 「あ、そうでした」


 結局、今日の五人は全て写真の束の中にいた。

 俺が写真を確認している内に、車の番号の照合は終わっていた。

 その車はやはり盗難車と言う事で、犯人の手掛かりにはならなかった。


 学校を出た近くで、警官たちに取り囲まれ話を始めて、すでに数十分が過ぎた。

 大半の生徒たちは下校していたが、まだ残っていた生徒や通りすがりの人たちが、俺たちの事を、立ち止まって興味深げに見ている。

 パトカーが到着した時には俺たち三人だけだったが、今はかなりの人の数だ。

 一時間近くかかって、ようやく俺たちへの事情聴取は終了した。


 「どうやら、相手は君の事を知って襲ってきた可能性が高い。

 不安だったら、送って行くが?」


 パトカーの助手席に乗り込みながら、そう言った警官の言葉に、神南は首を横に振った。

 その神南の表情は、いつもと変わらない硬い表情だ。襲われた事の恐怖と言うものは感じていないのか? 美佳なら、きっと泣き出しているだろうに。


 「そうか。分かった。

 だが、気をつけるように」


 警官は神南にそう言うと、俺に視線を向けた。


 「頼んだぞ」


 はい?

 どう言う意味?

 きょとんとしている俺にはかまわず、警官はパトカーの助手席のドアを閉じた。パトカーがゆっくりと立ち去り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ