住み着いた災厄3
「で、どっちだ?」
「こっち」
あれから俺はクロノスの指示の元、グールがいるという場所に向かい歩いていた。
「急がなくていいのか?」
「別に急がなくていいよ。人払いはしてあるし」
そうだった。クロノスがこの空間から俺以外の生物を消しているんだったな。生物と接触しなければグールも強くならないらしいし何も問題は無いだろう。
「で、まだなのか?」
「質問が多いなあ。もうすぐだよ」
そして二分ぐらい歩いたところにそれはあった。
「あ、いた」
「ね、すぐそこだったでしょ」
そこには見覚えのある黒い球体が浮いていた。
「お、おい。大丈夫なのか。あれ」
「大丈夫、大丈夫。まだ第一形態だから心配ないよ」
「そうか。じゃあ早くあいつを倒してくれ」
「なに言ってんの。倒すのはクロード君だよ」
「俺かよ」
「そのためにヴァーリー貸してやったんだからね。さ、襲って来ないうちにこっちから襲おう」
「あ~、はいはい」
俺は促されるまま日本刀(え~とヴァーリーだったっけ?)を抜いた。
「あれ?」
「どうしたの?」
「いや、なんかこの刀さっきまで刀身が真っ赤だったけどなんか先の方が普通の、銀色に戻っているなと思って」
「さっきも言ったでしょ。この赤い刀身はエナジーの残量を示しているの。常にヴァーリーを開放状態だからエナジーが消耗されるのは当然だよ」
「そんなことでも消耗すんのかよ」
話を聞くとこの日本刀による身体強化とやらが常にされていたからエナジーが減ったんだな。
「んじゃ、この前の仕返しといきますか」
俺は日本刀を構え、グールの前に踏み込み勢いよく振りかざした。
音も無く真っ二つになったグールは日本刀に吸い込まれるように消えた。てか吸い込まれた。
「おい、吸い込まれたけどいいのか?」
「言ったでしょ。グールは元々エナジーの塊、だから別にいいの。ほらその証拠にヴァーリーの刀身が完全に赤くなったでしょ」
「あ、ほんとだ」
言われて見てみると先ほど刀身の先の方が普通の刀みたいに銀色になっていたが今は完全に赤くなっている。
「じゃあここからは二手に分かれよ」
「はあ? ふざけんなよ。俺はお前みたいにグールの居場所なんか分かんねえよ」
「あ、そうだった、そうだった。じゃ、これあげるね」
そう言って差し出されたのは人差し指をまっすぐ伸ばし何かを指してるような人の手のキーホルダーだった。
「……何これ?」
「グール探知機ってとこかな。私がまだグールの気配を辿れなかった時に使ってたものだよ」
「グール探知機って。もうちょっとデザインなんとかならないのか?」
「うるさいなあ。これは私が作ったんじゃなくて師匠が作ってくれた物だから師匠に文句言ってよね」
「あー、はいはい。すみませんでした」
クロノスの師匠ねえ。一回見てみたいもんだ。多分いかつい顔してるんだろうな。ま、なんにせよこのデザインセンスはないな。
「これどうやって使うんだ?」
「もう起動してるよ」
「へ?」
そういえばさっきから手がこそばゆい。グール探知機を握ってた手を広げて見るとグール探知機がある一定の方向を指し、動いていた。
「おわっ、気持ち悪ッ!」
「気持ち悪いとか言わない。ほら、あっちの方にグールがいるから行った行った」
「へいへい」
「んじゃ、一通り狩り終わったら君の所に来るから」
「お、おい。まだあんまし説明して―――――」
行ってしまった。しかも移動の仕方が普通じゃない。さっきここにいたと思ったらタッタっと地面を蹴ってどこの家ともしれない家の屋根に移動しそのまま屋根から屋根へ走り去っていった。
忍者か、お前は。
さて俺も行くか。いまいち、いやとてもやる気がおきないがやらなきゃこっちが殺られそうだ(クロノスに)。
とりあえずクロノスの真似をして人ん家の屋根に飛び乗ろうジャンプする。さすが身体能力が強化されているだけある。まだ本気じゃないのに普通に飛び乗れた。なんかおもしろくなってきた。
さてと、俺もさっさとグール倒すとすっかな。