76/79
プロローグ:誤認羨望
――子供の頃、ヒーローに憧れていた。
何者にも負けず、強きを挫き、弱きを救う。
そんな世の不条理全てを覆す何かに。
少なくとも、世の中のというものをはっきりと知る前の自分には、この世にはびこる不幸を解決する便利屋に見えていたのだ。
しかし、いつしかその憧れは、憧れていたものに変わってしまった。
気付いてしまったのだ。
そんなもの、この世界にはないと。
――だからだろう。フィクションというものに自分がのめり込んでしまったのは。
現実に存在しないからこそ、空想の中に求めた。
空想の中の主人公ならば、あらゆる困難も打ち砕く超能力や特殊能力を持っている。きっと自分が求めたものは主人公ではなく、そんなあらゆる不条理を覆す、そんな力なんだろう。
ああ。いやもしかしたら。
――そういったものではない違う何かを求めたのかもしれない。
感想や評価などいただけたら励みになるので良かったらお願いします。