エピローグ:対艦殺し 2
「はいお仕事終了、ってか」
沈みゆく戦艦の甲板上に場違いな影がひとつ。
その影はどこか存在感の希薄とした曖昧な人物。
黒い服装に赤い帽子、顔は髑髏。そして手には金属製の巨大な鎌。
おおよそ、避難し遅れた戦艦の乗組員という出で立ちではなかった。となれば簡単。正体は部外者である。
大きな鎌を肩に担ぎ、異様な部外者は周りを見渡す。
周囲には船体を半分ほど沈ませた船や船首まで沈んだ船、そして乗組員と思しき人々が乗った小型のボートが多数見えた。
「沈むまで時間を作ってやったんだ。さすがに死んだやつはいねぇだろう。あ、いやもしかしたらいるかもだけど、ま、その時はうん。まあ残念賞ということで」
場違いな調子の声を漏らして頭を掻きつつ、部外者は船の周囲から船の甲板に視線をキョロキョロと辺りを見る。
「ええと、脱出用のボートはどこにあるかな、と……もしかしてないってことはないよな?」
と、その時大分斜めに傾いた甲板に突如間抜けな音が鳴り響いた。
「あーはいはい。どこでも殺し屋デリバリー、グレン・ハットでございます」
懐から通信端末を取り出しつつ、これまた場違いな声を部外者は漏らした。
「いやぁすみませんねお客さん、こっちも予定が詰まっているもので――へぇ。そんなに。OK、わかりました。その依頼お受けしますよ」
一通り話したあと、端末での通信を終了させ、再び部外者は端末を操作する。
「さてと、依頼主に連絡でも入れるかな」
沈みゆく船の上、朧気な部外者はゆっくりと霧が晴れるようにその姿を消した。
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