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災厄少女の独り言

「それにしてもあの蔵人という少年は一体、何者?」

 

 フェンスに背を預け、クロノスは上を見上げる。世界は闇に沈み、黒い空には星が永遠とちりばめられている。

 蔵人と名乗る少年の家を後にしたあと、夜景もそこそこ見える高さの商業ビルの屋上でクロノスは一人考え込んでいた。

 内容はもちろんあの朝野蔵人という少年のことだ。


「私の作り出した特殊空間に任意指定したわけでもないのに存在していた。確かに私はグール以外指定してないはず。なのに何で………」

 

 原因をいくら考えても思い当たる節がない。これまで色んな世界を旅してきたクロノスだが、彼のような者には出会ったことがないのだ。

 もし特異点か何かだとしたらとても興味深い。だが、自分の能力に干渉できる人間なんて見たことがない。まあ、それはあくまで人間の範疇での話だが。

 だが、その説を否定するように彼からは特殊な力は何も感じなかった。なら彼は一体なんだというのだ。

 そこまで考えてクロノスの思考が止まる。

 先ほどからここで考えが止まり、また考えるという繰り返し作業をクロノスはずっとやっている。実に不毛だ。まったく意味がない。

 と、ここでクロノスの脳内に電球のようなものがピカッと唐突に光を上げた。

 そうだ。近くで観察していたらそのうち何か分かるだろうか?

 彼には一応、契約の腕輪をはめた。あれがあれば無理矢理にでもグール狩りを手伝うしかない。グール狩り、つまりは戦わせてみればそのうち自分の作った空間に侵入できた謎が解けるかもしれない。とクロノスは思ったのだ。

 一週間だけの契約だけど彼の本質を見極めるには十分だろう。

 しかし、そこでそれには問題があることに気づく。

 あの蔵人という少年はエルフやウィザードなどと違って、一応普通の人間(多分)のようだ。そんな彼に戦闘には不向きだ。


「うーん……どうするかなあ………」

 

 クロノスは額に手を当てまた考え出す。

 何かいい案はないか。


「………あ」

 

 星空を眺めながら再び考えを巡らせていたクロノスの脳裏に浮かぶ物があった。

 そういえば………確か師匠からもしもの時に使え、と渡された預かった魔法具があったような………

 思い出し、自分の身に着けているコートを探る。

 あった! 

 取り出した物を手にしつつ、クロノスは笑みを浮かべる。

 よしっ! 彼にはこれを使わせよう。


「!」

 

 ふと、クロノスの顔が街に向けられる。

 気配を感じる。どうやらまた現れたらしい。

 昼間に比べてわざわざ空間を作らなくても一般人に姿を目撃される可能が低いからやりやすくはあるんだけど面倒は面倒だ。


「めんどくさいなあ。もう」

 

 それからクロノスはコートを(ひるがえ)し、フェンスを越え、颯爽(さっそう)とビルの屋上から飛び降りた。


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