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日常の中の非日常 5

 あるテロリストが組織に独断で爆破テロを起こしたとする。

 そのテロを起こしたテロリストは捕まらず、仲間のとはいえ無関係だった組織のメンバーは捕まった。

 きっと遺族や負傷者はテロを起こしたテロリストの仲間を恨むだろう。直接的な関係はないのに。

 つまりはそういうこと。

 ただ同じ肩書きというだけで恨まれ憎まれる。

 志水がクロノスに向けているのはそれに似た感情なんだろう。

 暗くなった夜道を家に向かって歩きつつ、どんな理由があろうが俺には少しも全然微塵もこれっぽっちも関係ないと分かっていつつも、どうにも何かを思わずにはいられなかった。

 ま、あんな話を聞いた後では何か思うなって方が無理な話か。

 それにしても志水が一年前までただの一般人だったってのには正直驚いた。俺はてっきり小さい頃から何かしらの訓練のようなものを受けていたと思っていた。もっとも家が家だけにそれは今考えるとありえなくはあるんだけど。

 しかし、志水のやつがまさか災厄の使徒に復讐しようとしてるとは。あくまで成宮の見立てではあるのだろうけど言われて見れば間違いないとも思う。それはあいつのクロノスに向けた目を見ればなんとなく確信が持てる。

 でもたとえ災厄の使徒が憎いとしてもフィロソフィアの事件を起こしたのがクロノスじゃないと分かっているのだからあんな態度を取らなくてもいいだろうに。少なくとも俺への態度は改めてほしいものだ。


「――――――って何真剣に考えてんだ、俺」


 ガラにもない。

 別にこれから志水と深く関わっていくわけじゃないんだし、深く考える必要もない。

 それにどうせ顔を会わせるっていっても入界管理局絡みのことだけだし、そう多くないだろう。それ以外はまったくの赤の他人。気にするだけカロリーの無駄遣いですよってトコだ。

 ついで言うと俺の基本的な信条(スタイル)は『関節的直接的に自分に影響がないならどうでもいい』だ。まあ志水の俺に対する態度は若干イラッとくるが、それを除けば俺には影響はない。

 だから志水がクロノスや俺をどう思おうが影響がないのならまったくもって関係ない。それにたとえ俺が志水とそれなりに関係があったとしても口出しできる領域をとうに越えているのだ。

 だからこれ以上志水について考えるのはよそう。


「……そうだ。俺には関係ないんだから気に病む必要はないんだ」

 

 ―――――関係はない。

 

 俺は甘かったのだ。

 世の中には関係はなくても時には無理にでも関わらなきゃいけない時が来る。

それはどこかで分かっていた。

 でもまさかこの後、志水と二人であんな目に遭うとはこの時の俺は少しも思ってはいなかった。 


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